山の手Q&A

「山の手」と「町内会」に関する質問と回答

【Q1】山の手地区の歴史を知りたい 

【回答】

参考となる資料

 札幌市図書館蔵書検索・予約システムを利用して、「山の手」というキーワードで検索してみると、次の三冊の資料がヒットします。

[1]   相澤季男 著『山の手のおいたち』2010年9月

[2]   山の手第23町内会創立50周年記念誌編集委員会 編『あやめ咲く町』(山の手第二十三町内会創立五十周年記念誌)2015年3月

[3]   山の手連合町内会設立50年誌編纂委員 編『山の手連合町内会50年のあゆみ』(山の手連合町内会設立50周年記念誌)2015年10月

いずれも山の手図書館から一般貸出が可能です。三冊ともISBNがないことから、書店ルートでは出回らなかった私費出版の資料と考えられます。山の手の歴史を知る上では、文献[1]が最も詳しく書かれており、札幌市電子図書館からも電子書籍で読むことができます。ご一読をお勧めします。

 文献[2, 3]は、1965年(昭和40年)に設立された山の手第23町内会と山の手連合町内会(旧称:山の手町内連合会)のその後の足跡が、山の手地区の発展の歴史とともにまとめられています。相澤季男氏が山の手第23町内会の地域にお住いのことから、文献[2]の第一部前半には[1]と重複する部分が散見されます。文献[3]には、山の手会館建設に関する経緯が詳細に記されています。 

山の手地区の歴史

 詳細は文献[1]をご参照いただければと思いますが、札幌市西区役所ホームページの「地区別の歴史」から、山の手地区の歴史を引用します https://www.city.sapporo.jp/nishi/syoukai/rekishi/rekishi_area.html#yamonote


山の手の地名は、旧国道5号以南に開けた丘陵地帯としての土地柄から名付けられました。

明治初期、この辺り一帯は原始林と荒地でしたが、明治8年(1875年)の琴似屯田兵入地後、屯田兵の射撃訓練場となり、明治37年(1904年)の屯田兵制度廃止後は、ここにとどまり独自に開墾に従事した人々に払い下げられました。

山の手地区は、八軒、発寒など北部地帯に比べ、琴似発寒川や琴似川の上流に挟まれた位置で、比較的給排水など水利に恵まれていたので、稲作の歴史は古く、安政5年(1858年)には、後の石狩水田の祖といわれた早山清太郎が琴似川の水利を使って水田作りに成功しています。明治30年代に入って札幌近郊のリンゴ栽培が盛んになり、山の手地区では、大正6年(1917年)当時、すでに約2,000本のリンゴの木があったといわれています。大消費地である札幌が発展するにつれ、それまでの山鼻や豊平、白石などのリンゴ園は、宅地化により、次第に減少していきました。このため山の手の山麓地帯は、重要な果物供給地ともなったのです。

その後、住宅が立ち並ぶようになり、現在は閑静な住宅街として知られています。

【Q2】山の手第29町内会設立の経緯は?

【回答】【Q1】の回答にある文献『山の手のおいたち』[1; 80-81頁]に基づいてお答えします。

衛生組合から町内会へ

山の手地区に限らず、近代における我が国の住民組織の生成には、下水処理やごみ収集が整備されていなかったことが大きく関係しています。このため、早くから行政指導の形で「衛生組合」が組織され、山の手地区にも1955年(昭和30年)に「山の手衛生協力会」が誕生しました。山の手衛生協力会には分区が置かれ、1962年(昭和37年)には24の分区(2,469世帯、人口9,646人)が存在していました。その後、1965年(昭和40年)に山の手衛生協力会は発展解消して「山の手町内連合会」が結成され、単位分区は単位町内会に移行しました。1972年(昭和47年)には、山の手町内連合会は、現在の「山の手連合町内会」に改称されました。【Q1】の回答にある文献[2, 3]の50周年の意味は、1965年~2015年の期間を指します。

1962年(昭和37年)以降、24の分区は

     1964年(昭和39年) 第25・26町内会

     1965年(昭和40年) 第27・28・29町内会

     1966年(昭和41年) 第30町内会

     1968年(昭和43年) 第31町内会

     1972年(昭和47年) 第32町内会

     1976年(昭和51年) 第33・34町内会

     1977年(昭和52年) 第35町内会

     1981年(昭和56年) 第36・37町内会

     1986年(昭和61年) 第38・39町内会

     1987年(昭和62年) 第40・41町内会

     2002年以降          第42・43・44・45町内会

と細分化されていきました。したがって、山の手町内連合会が結成された1965年(昭和40年)には29の単位町内会があったことになります。

 一方、文献『山の手連合町内会50年のあゆみ』[3;32頁]には次の記述があります。

「(昭和40年)4月18日には「山の手連合町内会」が発足し、琴似集会所において総会が行われました。山の手地区衛生協力会の各分区が衣替えし、第1町内会から第30町内会で組織することになりました。」

これらの資料より、第30町内会設立年については文献によって相違する箇所がありますが、少なくとも私たち第29町内会の設立は、1965年(昭和40年)4月18日で間違いなさそうです。したがって、2025年(令和7年)4月に山の手第29町内会は設立60周年を迎えます。

当町内会の境界線

 文献[1;82頁]にある「山の手衛生協力会・防犯協会区域図」(昭和38年3月)によると、第29町内会は、山の手3条9・10丁目が当時の山の手衛生協力会第15分区に、山の手3条11丁目が同第21分区に含まれていることが分かります。また、文献[1;83頁]にある「山の手町内会区域図」(平成19年1月)では、現在の形に近い区域が描かれていますが、山の手4条9丁目(第21町内会)の一部が含まれています。現在、札幌市役所ホームページで公開されている「西区山の手連合町内会 土砂災害危険個所図」にも同じ境界線が使用されているため、担当部局に確認したところ、当該図面は現在の境界線とは異なるとの回答を得ました。令和5年に公開された「札幌市土砂災害避難地図(西区:山の手連合町内会)」では、正しい境界線が使用されています。 

【Q3】住居表示はどう変化してきたのか? 

【回答】札幌市ホームページの「住居表示とは」より引用すると

「住所をわかりやすく表示するため、昭和37年に作られた新しい制度を「住居表示制度」といいます。
  〇町〇条〇丁目〇番地〇(地番を用いた表示)

   町名 地番

〇町〇条〇丁目×番△号(住居表示制度を用いた表示)

   町名 住居番号

明治以降、住所は土地の所在を表す「地番」で表示されてきましたが、戦後の人口膨張、高度経済成長により、流通の発達、人口の拡散等が盛んになってくると、地番を用いた住所の表示方法では様々な問題が発生し、市民の日常生活や行政、産業活動に大きな支障をきたすようになりました。」

札幌市では、1972年(昭和47年)から住居表示制度を取り入れていますが、「住居表示に関する法律」(昭和37年9月)が施行されてから60年以上が経過した現在もまだ整備中です。山の手地区の住居表示は、1982年(昭和57年)7月19日に実施されています。【Q1】の回答にある文献『山の手のおいたち』[1;4頁]にある表「土地登記登録上の地名の変遷」によると、山の手地区の住居表示は次の変遷がありました。

1869年(明治2年) 石狩国札幌郡琴似村大字琴似村○番地

1880年(明治13年)   札幌区札幌郡琴似村大字琴似村○番地

1882年(明治15年)   札幌県札幌郡琴似村大字琴似村○番地

1884年(明治17年)   札幌郡琴似村大字琴似村字琴似○番地

1942年(昭和17年)   札幌郡琴似町大字琴似村字琴似○番地

1943年(昭和18年)   札幌郡琴似町字山ノ手○番地

1955年(昭和30年)   札幌市琴似町山の手○番地

1962年(昭和37年)   札幌市琴似町山の手○条○丁目○番地

1972年(昭和47年)   札幌市西区山の手○条○丁目○番地

1982年(昭和57年)   札幌市西区山の手○条○丁目○番○号(住居表示)

1982年(昭和57年)   札幌市西区山の手○条○丁目○番地 (地番) 

【Q4】「山の手3条通り」はどこにある? 

【回答】【Q1】の回答にある文献『山の手のおいたち』[1;38頁]に基づいてお答えします。

山の手通り⇒香蘭通り⇒山の手3条通り

札幌山の手高等学校と同校グラウンドの間にある南北に走る道路が山の手3条通りです。山の手第29町内会の東側の境界にあたります。一見、何の変哲もないこの道は、山の手地区でも3本の指に入る開拓時代からの歴史のある道路です。当時は、現在の札幌市立山の手南小学校のあたりに屯田兵の墓所があったため※、早くから道路が開かれて「山の手通り」とよばれていました。1929年(昭和4年)に円山から国立療養所(現・国立病院機構 北海道医療センター)への幹線道路(新道→山の手中央通り、現・山の手通り)が完成したこと、および1952年(昭和27年)に沿道に札幌香蘭女子学園高等学校(現・札幌山の手高等学校)が小樽から移転してきたことで、名称を「香蘭通り」に変更し、山の手通りの名称を山の手中央通りに譲ることになりました。1988年(昭和63年)に、札幌香蘭女子学園高等学校が共学化し、名称を札幌山の手高等学校に変更したことで、道路の名称も香蘭通りから山の手3条通りに変わりました。

山の手地区が琴似町の一部であった時代(1942年~1971年)には、山の手3条通りを境として、山の手地区は「東山手」と「西山手」に行政上区分されていました【1;3頁】。したがって、山の手第29町内会は西山手に属していたことになります。

※この墓地は、1975年(昭和50年)11月に手稲平和霊園へ移転改葬されていて、その跡地に1982年(昭和57年)11月、札幌市立宮の森小学校から移籍した札幌市立山の手南小学校が開校しました。学校の敷地内に「山の手墓地跡」碑があります。 

【Q5】山の手会館の予約方法は?

【回答】電話(011-642-3866)または会館1階受付で直接予約をする必要があります。利用料金等の「利用の手引き」は、Web上では公開されていないようです。

所在地: 〒063-0003 札幌市西区山の手3条2丁目5ー20

営業時間: 日曜日~土曜日 9時00分~21時30分

臨時休館日: 憲法記念日、みどりの日、子供の日(年度により振替休日を含む等の変更可能性あり)

予約状況開示の必要性

 山の手連合町内会が運営する山の手会館では、紙ベースの受付簿による予約方法を採用しています。しかし、この方法では、問い合わせをしてみないと空き状況が分からず、会議等の開催スケジュール調整の際に非常に不便です。Google Sites ®でWebサイトを開設している全国の町内会・自治会の中で、例えば

等では、Googleカレンダーを利用して会館等の予約状況を開示しています。これらの町内会・自治会では、Webサイトで予約状況を確認後、電話/メールで予約を行う形態を取っているようです。本Webサイトの今後の行事予定と同様の方法で可能ですので、技術的にも容易です。また、紙ベースの受付簿をWebベースに変更することも可能になるでしょう。予約状況の確認に加えて予約完了までを自動化するには、多少のコストとITスキルが必要になりますが、山の手会館を運営する山の手連合町内会にまず最初に求められるのは、Webサイトの開設ではないでしょうか。

単位町内会定期総会予約方法の改善

 山の手第29町内会2024年度定期総会は、2024年4月20日 (土) に開催されました。当初は、山の手会館で開催する予定でしたが、2023年11月下旬の時点で、上記回答に示した通常の予約方法では、2024年4月以降の予約ができませんでした。このため、山の手連合町内会総務と交渉して2023年12月4日 (月) に翌年4月の総会会場を確保したのですが、この時点ですでに外部団体には次年度の貸出しを認めていて、小さな会議室しか押さえられませんでした。2024年度定期総会はコロナ禍の中で4年振りの開催となり、延期になっていた計14組の町内会発展功労者表彰式も行う予定でしたので、容量的に山の手会館での開催を断念せざるを得ませんでした。幸い、社会福祉法人 桜秀会のご厚意により、同法人が運営する特別養護老人ホーム「満快のふる郷 山の手」の会議室を総会会場として貸与してもらえましたので、無事に開催することができました。

 総会は町内会の最高議決機関であって、地方自治法第260条の13の規定により、少なくとも年に1回は総会を開催しなければならず、総会そのものを省略することはできません。また、新年度開始後3カ月以内に、総会において前年度収支決算報告を行うことも義務付けられています。総会のこの重要性を考慮すると、上記の予約方法の制約は早急に改善されるべき課題です。また、2015年の山の手会館建替えの際には、1億円を超えるその建設費用の約7割を単位町内会が負担(寄付)しています。通常、公共の会場を予約する場合には、主催団体によって予約可能時期に関して優先権を付しています。当然、単位町内会は外部団体よりも優先されるべき存在です。営利事業を含む外部団体の優先予約によって、単位町内会の総会を行う会場が確保できない事態はありえないことです。

【Q6】山の手会館ではなぜWiFiが使えないのか?

【回答】【Q1】の回答にある文献『山の手連合町内会50年のあゆみ』[3;44頁]では、第5章の「今後の課題と取り組み」として「新山の手会館の機能充実」が謳われていますが、そこで取り上げられているのは、子育て世代の交流会、囲碁大会での頭の体操、ビールパーティで発散等といった、新しいニーズの掘り起こしに限られています。この記念誌を読んでみると、念願の新・山の手会館建設に至る関係者の並大抵でない努力に本当に頭が下がります。しかし、折角作った施設の利用方法に関しては、前時代的な古臭さを感じます。文献[3;42頁]に掲げられた4つのスローガン

  会館建設を通して山の手全体が元気になること

  会館建設を通して町内活動が活性化すること

  会館建設を通して世代間格差を解消すること

  新しい山の手会館を地域防災の拠点とすること

を拝見すると、④を除いて、具体的な目的のために会館を建設するのではなく、会館の建設自体が目的化してしまっていることが伺えます。④についても地域防災の拠点として何を備えるべきかが読み取れません。近年、地球温暖化の影響か、北海道でも夏の猛暑が問題となってきています。エアコン普及率の低い北海道では、本州以上にクーリングシェルターが必要になると考えられます。こうした環境の変化に即して、地域防災の拠点としての設備をあらためて見直す時期に来ていると思われます。

 山の手会館は2015年(平成27年)9月竣工ですが、札幌市におけるインターネットの普及状況は、2015年(平成27年)度で68.4%(全年齢平均)、20代~40代は9割以上、50代も8割以上が利用し、すでにインターネットは広く普及していました。また、2014年(平成26年)度の情報通信白書によると、当時の街中のフリーWiFiの普及率は、米国の50%よりは低いですが、日本でも30%になっていました。現在は、カフェや公共機関でのフリーWiFi導入もあり、フリーWiFiを使う人も増えています。ホテル等の利用料金を徴収する施設では、WiFi環境はもはや必須と言わざるを得ません。山の手会館は、単位町内会の会合等で利用する際にも利用料金が課せられますが、WiFiが利用できないため、PC等によるインターネットを使ったプレゼンテーションの際には、ポケットWiFiを自分で準備するか、携帯電話のデザリング機能を使うかしか方法がありません。いずれにしろ、通信料金は利用者負担になります。山の手会館のWiFi環境を整備することで、zoom等を利用したオンラインでの会議(連合町内会定期総会等)、町内会デジタル化出前講座町内会スマホ教室の実施を含む新しい利用方法の提案と、それによる会議参加者および会館利用者の増加を見込むことが可能になります。残念ながら、2023年(令和5年)5月21日に開催された山の手会館定期運営委員会(総会)ではこうした提案は一切なされず、設備は現状のままで、年間予約制やポイント制を導入することで利用団体をいかに拡大するかに終始しました。山の手会館運営委員会は果たして機能しているのでしょうか?1年に1回の総会以外には会議は開かれていないようです。山の手会館ではなぜWiFiが使えないのか?それは、少し厳しい言い方ですが、器だけ作って満足してしまったことにあります。

町内会デジタル活用促進補助金

 札幌市は、町内会への活動活性化支援の一環として、連合町内会および単位町内会を対象として、デジタル活用にかかる環境整備に資する事業へ補助金を出しています。その目的は

などが挙げられています。山の手会館のWiFi環境の整備は補助対象になりますが、2つの問題点があります。

  報償費、使用料、役務費、委託費は補助率が10分の10ですが、WiFi環境の構築に必要な物品・備品購入費、工事費への補助率は3分の2で、しかも補助金の上限が1団体あたり10万円と低い。

  申請手続きにおいて、事前エントリーシートを6月中旬までに提出する必要がある。応募多数の場合は抽選なり、令和5年度は上限100団体を予定。

このやり方では、やる気のある町内会の熱も冷めてしまいます。補助率はすべての費目について10分の10とし、予算総額が1,000万円を超えることができないのであれば、1団体あたり50万円・20団体に絞り込むというような選択・集中配分を考えてもらえないものかと思います。その場合、抽選ではなく、行政側に公正な審査能力が当然求められます。尚、山の手会館定期運営委員会(総会)は例年5月末に開催されていますが、②に対応するためには、総会での承認を待ってからの補助金申請では準備不足です。前年度の間に申請の準備を始める必要があります。 

【Q7】「パートナーシップ排雪制度」は持続可能か?

【回答】 制度設計に欠陥があり無理です。その理由を述べるために、まず、札幌市の「生活道路の排雪支援制度」の状況を、次の参考文献に基づいて要約しておきます。

山本千雅子(北海道大学)、原 文宏 (北海道開発技術センター)、佐藤馨一(北海道大学)著「行政と市民のパートナーシップ による生活道路の除排雪

生活道路の排雪支援制度

 札幌市では「生活道路の排雪支援制度」として2つの制度:

を設けています。1969年から実施している市民助成トラック制度では、市がドライバー付きで市民団体(主に町内会)にトラックを貸し出し、町内会のメンバーが自らトラックに雪を積み込むか業者を雇って雪の積みみを依頼します。また、市が業者と契約して輸送料金を負担しています。しかし、

1)町内会メンバーの高齢化がすすみ、年々道路からトラックに雪を積み込む作業が困難になり、多くの町内会が業者に雪の積みみを委託しているが、委託料が年々増加し負担が厳しい

2)町内会メンバーによる雪の積みみ作業中に、事故が発生したりケガ人が出た場合の管理責任があいまい

などの理由で、市民助成トラック制度を利用する市民団体(町内会等)の数は減少してきました。

 これらの課題を解決すべく、1990年にパートナーシップ排雪制度が試験導入され、1992年から本格運用が開始されました。パートナーシップ排雪制度では、地域住民、市、受託業者が、それぞれの役割を分担しながら連携し、生活道路の排雪を実施することにより、快適な冬期生活環境を創出することを目的としています。具体的には、地域住民が責任を持つ範囲は

① 地域に居住する住民と同制度を利用するという合意を形成(通常は町内会単位)

② 掛かる排雪費用の半分を負担

市の役割は

① 町内会の同制度利用申し込みの受け付けと委託業者などとの連絡調整、費用の積算とスケジュール調整

② 警察などの関係機関等への連絡調整

③ 費用負担(総経費から住民負担分を引いた残金全額;全体の約7割)

であり、委託業者は実際の排雪作業を全面的に行います。

しかし、

1)地域住民が負担する費用(地域負担額)が、2012年度に1km当たり40万円を超え、2021年度以降は1km当たり51万6,400円となって、町内会等の負担が増大

2)町内会等は加入が義務ではない任意団体のため、町内会非加入者の分まで、町内会加入者が排雪費用を負担

などの問題が、物価高騰、地域住民の高齢化および町内会加入率低下に伴い顕在化してきています。尚、北郷東町内会では、町内会未加入者から応分の負担金を徴収していますが、現行制度の下ではこの徴収には法律的に問題があると思われます。

課題の解決に向けて

 清田中央、清田、里塚・美しが丘の地区町内会連合会の会長3名は、2018年2月13日に札幌市議会および秋元札幌市長に対して、地域支払額負担軽減と町内会加入者・非加入者間の不公平解消を要望しています。また、札幌市議会自由民主党議員会は、2022年7月4日に秋元札幌市長に対して「今後の除排雪事業に関する要望について」という要望文書を提出しています。しかし、札幌市の対応は、「生活道路排雪の在り方検討(令和5年度~)」において、「生活道路の排雪には多くの人員や除雪機械が必要であり、将来的に除雪従事者が減少した場合には、このまま制度を継続することが難しくなる可能性があります。」と述べているように、制度設計を変更する考えはなく、町内会の要望とは大きく論点がずれています。これには、国土交通省の地域性を考慮していない方針が大きく影響していると思われます。また、制度設計上の問題に加え、各区土木部、清掃事務所、受託業者の間の連携が不十分で、運用開始から30年以上が経過しているのにICT化されておらず、日程変更等に関するパートナー間の情報共有がなされていない等の運用上の課題も残されています。

当町内会の現状

 第29町内会の現状も同様です。当町内会と他町内会との境界道路4本のうち、東端(山の手3条通り)、南端(北一条・宮の沢通り)、北端の3本は幅員10mを超えているため、地域負担額の支払いはありません(とはいえ、市の負担額の原資は税金です)。また、西端は第21町内会との境界にあたり、同町内会と地域負担額を折半しています。第29町内会の中央を貫通する琴似・栄町通りも、幅員10mを超えているため、地域負担額の支払いはありません。それら以外の幅員10m未満の7本の道路については地域負担額が発生します。西区土木センターから送付された資料によると、当町内会の対象道路総延長距離は、0.75112kmであり、2023年度の地域負担額(消費税等相当額含)は38万7,816円になります(2024年1月12日決定)。一方、当町内会排雪事業特別会計収入額(予定)は36万2,400円(=200円/月・世帯×12カ月×151世帯)のため、2023年度は25,416円の赤字です。特別会計はこれで3年連続の赤字となるため、2024年度以降は会費の見直しを考えざるを得ません。札幌市内各単位町内会の地域負担額は公開されていません。当町内会は幹線道路の比率が高いため、これでも金額としてはまだ軽い方だと思われますが、世帯数が少ないため町内会年間予算の50を超えています。清田区と近郊地域の情報交流サイトの記事(2018年3月2日)より引用すると、「除雪パートナーシップの地域支払額(町内会負担)は1町内会当たり平均で120万円、町内会年間予算の37%も占めていることが分かりました。中には、町内会予算の59%を占める町内会もありました。」2023年度であれば、地域支払額は6年前より約20増加しているはずです。

制度見直しの必要性

 札幌市は、2021年度以降凍結中の排雪単価の値上げについて改定を毎年ほのめかしていますので、いずれ町内会活動を圧迫することは目に見えています。住みよいまちづくりに向けて抜本的な制度と負担の見直しが急務で、現状のままではパートナーシップ排雪制度は持続不可能で、近い将来必ず破綻します。


関連情報

【Q8】電子回覧板の導入は可能か?

【回答】試験運用中の当町内会の電子回覧板をモデルとして回答します。

回覧板ICT化の背景

 回覧板の歴史は意外に新しく、第二次世界大戦下、大政翼賛会の末端組織となっていた町内会の下部組織「隣組」(現在の「班」あるいは「組」に相当)の連絡手段として普及し、今日に至っています。『自治会・町内会の高齢者支援に関する報告書』(あしたの日本を創る協会 編、2000年)によると、報告書刊行当時の町内会・自治会の80%以上が、回覧板による連絡形態をとっているとの調査結果があります(Wikipediaより編集して引用)。

 男性雇用者と無業の妻から構成される世帯が標準的であった時代には比較的うまく機能していた回覧板ですが、バブル崩壊後の平均年収の減少の影響や女性の社会進出により、家族のあり方が多様化してきました。1980年の国勢調査によると、我が国における専業主婦世帯(1,114万世帯)は共働き世帯(614万世帯)の2倍弱でしたが、2022年の国民生活基礎調査によると、専業主婦世帯(569万世帯)は共働き世帯(1,262万世帯)の半分にも満たない状態に逆転しています。現在では、夫婦のいる世帯全体の約7割にまで達しています。このことは、日中不在である家庭の割合が増加していることを意味し、回覧板の連絡遅延に大きな影響を及ぼしています。

 また、新型コロナウイルス感染症は飛沫や接触による感染拡大が主たる原因であるとされていることから、不特定多数が接触する回覧板を介しての感染症リスクも無視できません。実際、2020年~2022年にかけて、多くの自治体では、町内会・自治会における回覧板の回覧について極力控えるようにとの注意喚起を行い、回覧板を廻す場合でも、対面による直接的な手渡しは極力避け、ポストへの投函や玄関に置く、ドアノブに掛けるなどの間接的な受け渡しの方法を推奨していました。このことも連絡遅延の原因になっています。

 こうした背景から、町内会・自治会における従来の回覧板による広報は、将来的には、接触を伴わず即時性をもつ情報通信技術(ICT)を活用した新たな方式に変更する必要があると考えられます。ICT化された回覧板を以下では「電子回覧板」とよぶことにします。しかし、電子回覧板の導入は必ずしも容易ではなく、現行の回覧板を当面は維持せざるを得ない状況です。

デジタルデバイド

 町内会・自治会の人的・財政的資源は限られています。このため、複数の広報方式を併用することは難しいでしょう。限られた資源を有効に利用するためには、広報方式を一元化することが望ましいと考えられます。しかし、会員間の情報格差(デジタルデバイド;digital divide)の存在は、ICTを活用した広報方式の一元化には大きな障害となります。デジタルデバイドとは、インターネットなどのICTを使える人と使えない人との間に生じる「分断」を表す言葉です。情報格差が生じる原因は貧困や地域性など様々ですが、日本の町内会・自治会の問題に限れば、共通する最大の原因は会員の高齢化であると考えられます。

 スマートフォンやタブレットなどの情報端末の普及に伴い、総務省の令和2年度通信利用動向調査によると、60~69歳に限定すればインターネット利用率は82.7%まで向上しています。一方、70~79歳は59.6%、80歳以上は25.6%と利用率は下がる傾向にあります。当町内会は約150世帯の会員で構成されていますが、2023年度の敬老事業実施のために、個人情報保護に必要な講習を受けた上で調査したところ、満83歳以上の方が約50名在住されていました。個人や地域性の違いはあるにしても、この状況では、残念ながら当町内会におけるデジタルデバイドの存在を否定することは困難であると言わざるを得ません。したがって、限られた資源の中で、複数の広報方式を併用する必要があります。

当町内会の試案 ー分断を超えてー

 デジタルデバイドの存在を認めた上で、情報化社会の今後の更なる進展を考えると、電子回覧板の導入を忌避することは現実的ではありません。電子回覧板導入に向けての当町内会の1つの試案を示します。

 何をどこまで誰に見せるか/見せないかについては、閲覧の容易さ、セキュリティの確保、個人情報保護等の観点からも、まだまだ多くの未解決な点があります。Googleプラットフォームを利用し電子回覧板に対する先進的な取り組みをされている

常盤台町会(千葉県柏市)

を参考にして、2025年度からの本格的導入を目指したいと考えています。

関連情報

【Q9】このWebサイトの開設費用はいくら? 

【回答】0円です。

ただし、ボランティアですので人件費、通信費および電気代等はカウントしていません。外注する場合、初期費用として25~30万円、維持費として月額1万円以上が標準的な金額です。私たちのような150世帯ほどの零細単位町内会ではとても賄いきれる金額ではありません。Google Sites®という無料のプラットフォームのおかげで、多少のスキルがあればこの程度のWebサイトを構築するのは難しくありません。実際、当Webサイトの骨格部分は1日で完成しました。開設以降、かなりの追加・更新をしたつもりでしたが、当Webサイト専用のGoogleアカウントを取得しているためか、Googleドライブの無料の容量制限15GBのうち、実際に使用している容量はわずか86.6MB(2024318日現在)に過ぎません。行事のスナップ写真等を掲載することで、今後時間をかけて肉付けしていく予定です。

町内会・自治会Webサイト

 Google Sites®を用いて作成された町内会・自治会Webサイトは、東京都・神奈川県を中心に全国的に相当数存在します。しかし、同様の小・中学校PTAサイトと比べると、作成担当者の平均年齢に(当然ですが)かなりの差があるため、サイト数ではとてもかないません。また、検索エンジンにはヒットされにくいように設定されていることが多く、さらに、地域によって「町内会」、「町会」、「自治会」、「○○協議会」等と呼称が異なるため、見つけるのは意外に大変です。同じプラットフォームですので技術的にも有用です、町内会・自治会Webサイトが備えるべきコンテンツとは何かを知り、それ以上に町内会活動への熱意を感じることができて大変参考になります。お互いに頑張りましょう。