食品中の放射性物質の測定は、従来Ge検出器を用いたγ線スペクトロメトリーによる方法が一般に用いられている。環境中に存在する放射性核種を効率よく、そして正確に分離・定量するための方法として、環境試料等の放射能分析・測定方法の基準となる「放射能測定法シリ-ズ」が国(文部科学省及び原子力規制庁監視情報課)により制定され、公定法として我が国において広く用いられている。また、食品の試験法としては、「食品中の放射性物質の試験法について」が発出され、ここには食品衛生法に基づく食品検査のための測定に関する要件が規定されている。いずれの公定法においても、従来のγ線スペクトロメトリーによる方法においては、測定試料中の放射性物質が適切な前処理により均一化されていることが、その正確性及び信頼性の確保のために重要となる。
一方、福島第一原子力発電所事故の影響による食品中の放射性測定が継続的に行われているが、近年、生産サイドによる出荷前自主検査や住民が自家消費を目的として自家栽培した作物や採取した野生の動植物の測定に試料を破壊せずそのまま測定するための装置を用いた非破壊式放射能測定装置[1][2]が開発され利用されている。このような装置による測定は、設計上想定した試料の配置や放射性物質の分布のばらつきの範囲において測定を行うことが重要となる。当研究室では、非破壊式検査における検査精度を決定する重要因子についてその評価手法に関する研究を行っている。
[1]石井慶造 食品の汚染検査のための放射能非破壊検査装置 https://www.jrias.or.jp/books/pdf/201501_RIYOUGIJYUTU_ISHII.pdf
[2]㈱アドフューテック そのままはかるNDA https://www.adfutec.com/pdf/Catalog_160108-1_AFTNDA2.pdf