β-γ同時計数法は放射能測定の分野で広く用いられる絶対測定法である。放射能絶対測定とは原子核の壊変のたびに放出される放射線を計数することによって、単位時間あたりの壊変数を計数し、定義に基づき放射能を決定する方法である。 この場合、基準となる放射能標準線源を必要としない。β-γ同時計数法は少なくとも2つの異なるタイプの電離放射線を伴って壊変する放射性核種の放射能を測定するために開発された手法であり6oCoのようにβ線の放出に引き続きγ線を放出する核種に対して適用できる。この手法はβ-γ放出核種の放射能測定に限定されるものではなく、α壊変又は電子捕獲壊変に続いてγ線が放出される放射性核種にも適用される。
β-γ同時計数法の原理は、放射性核種がβ線放出によって壊変し、その後にγ線がほぼ同時に放出されるという理想的な場合において、簡単な方法で説明することができる。検出器及び計数回路は、2つの独立したチャネル(β chとγ chという。)で構成され、それぞれの検出器が1種類の放射線にのみ感度をもつ。従来の古典的な装置で適用される同時計数法は、2つのチャネルβ chとγ chで同時に検出される度に計数されるチャネル(Coincidence chという。)を付加することで実現できる。図にこの方法を適用するための装置の概念図を示す。線源から放出されるβ線及びγ線はそれぞれ独立のβ線、γ線検出器により、それぞれ検出、計数される。さらに、 これら両チャネルの間に同時回路を接続し、それぞれのチャネルにおいて同時検出された場合に計数をとる。このとき、β ch、γ ch及びCoincidence chの同時計数率をnβ、nγ及びncとすると次式が成り立つ。
ここに、εβ及びεγはそれぞれβ ch及びγ chにおける計数効率を表す。(1)~(3)式より放射能(壊変率)n0は次式により計数効率の情報なしに求まる。
また、β ch及びγ chにおける計数効率も次式により得られる。
ただし、式(1)~(6)は、理想的な条件においてのみ成立する式であり、実際には有限の同時計数回路の分解時間、真の同時計数ではない偶発同時計数信号(chance coincidence)、β線検出器の僅かなγ線に対する感度によるβ chにおけるγ線計数に起因する補正を要する。
β検出器として4π計数管を用いた方式を4πβ-γ同時計数法(Campion, 1959)という。 この方式は原理的には一般のβ-γ同時計数法と同じであり、式(1)~(6) はそのまま適用される。高効率計数管を用いてεβを1に近づけられれば、各種の補正項は非常に小さくなる。複雑な壊変をする核種にも4πβ-γ同時計数法は有効だが、測定に際しては計数管の効率のエネルギー特性が一様でないことに起因する補正も必要でとなる。実際には、β chの計数効率を変化させることによる外挿法(Baerg, 1973)が適用される。
従来、4π検出器として、ガスフロー式比例計数管が用いられてきた。近年は液体シンチレーション検出器を用いる例が多いが、当研究室では2枚のプラスチックシンチレータに線源を挟み込むことで4π計数を実現している。
Campion, P.J., 1959. The standardization of radioisotopes by the beta-gamma coincidence method using high efficiency detectors. Int. J. Appl. Radiat. Isot. 4, 232-248.
Baerg, A. P., 1973. The efficiency extrapolation method in coincidence counting. Nucl. Instr. and Meth. 112, 143-150.
薄厚プラスチックシンチレータを用いた選別α-γ反同時スペクトロスコピによる医用α核種放射能測定法の開発
Yuya Soeta, Takahiro Yamada, Ken-ich Mori, Yasushi Sato
The 25th International Conference on Advances in Liquid Scintillation Spectrometry (LSC 2024) 2024年4月16日
Ken-ichi Mori, Takahiro Yamada, Yasushi Sato, Kotaro Nagatsu, Hidetoshi Kikunaga
Applied Radiation and Isotopes 202 111061-111061 2023年12月
Sena Hamagami, Shunsuke Fujino, Takahiro Yamada
Applied Radiation and Isotopes 202 111036-111036 2023年9月
Takahiro Yamada, Yasushi Sato. Akira Yunoki, Yasushi Kawada
Applied Radiation and Isotopes 159 109069-109069 2020年5月