『中級へ行こう』第2版

本文のトリセツ⁉

『中級へ行こう』の本文の進め方をシェアするページです。

本文を読んで、その課のことばや学習項目の使用を確認し、ざっと内容を確認するだけなんてもったいない!と考えています。

自身の外国語学習者、英語/日本語講師としての経験及び、CELTA外国語としての英語教授資格での学びを元にした、あくまで個人的な授業プラン&メモです。

1.読む前に

本文って何のために読むの?

日常生活において、目的もなく文章を読むことはありません。でも、語学の教科書って、基本的に「はい、読んでください。」と読まされます。試験でもないのに、問いに答えることがその文章を読む目的になっていませんか?(と指摘されまして、目からウロコでした!) スキーマを活性化させる活動は文章を理解する助けにはなりますが、文章を読む目的にはなりません。「本文に(自分がほしい)情報がある」読みたい!」と学生に思わせる、つまり、本文を読む目的を持たせることにつながる活動(例えば質問カードを使ったペアでの会話やクイズなど)を行うようにしています。

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2.ファーストリーディング 1st reading(スキャニング) 

本文に目を通す

「読む前に」の活動が終わったら、本文を読む目的質問の形式で口頭で提示)を確認し、本文へといざないます。ただし、あくまで、質問の答えを探すのが目的なので、じっくり読む必要はありません。スキャニングスキルを意識させると、読解が苦手な学生にもややハードルが下がります。といっても、「スキャニング!」と学生に言うわけではありません。話し合って、制限時間を決めることにより、時間を意識させます。そしてさらに、答えが分かった人には挙手してもらったり、時には着席してもらったり(そう、立って読んでもらうんです!)、何か合図してもらう取り決めをします。

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ファーストリーディングの後で  

本文を読む目的は達成できた?

読んだ後で、本文を読む目的が達成できたか、質問の答えをクラスメートと共有してもらいます。ここでは、クラス全体での確認はしません。自分の力で読んだ、現段階での理解を各自で確認してほしいだけなので、何が正解かも言いません。ただし、クラスメートとの議論は大歓迎です。

.セカンドリーディング 2nd reading (じっくり読む) 

自分の力で読む

本文に目を通しておおまかな内容は分かったけど、「時間が足りなかった」「よく分からないところがあった」「クラスメートと話して、確認したいところがでてきた」などと思っているはず。そこで、少し「読む時間」をとります。黙読です。音読させたり、リピートさせたりはしません。なぜなら、「読む」力をつけるのが授業の目標だからです。読んで、そして、内容を理解してほしいのであって、発音や漢字の読みを練習してほしいわけではありません。

※非漢字圏の学生から「先生、読む時間がありませんね。」と指摘されて、この時間を大切にするようになりました。

5.本文解説 

リピート&解説

本文をCDまたは、教師の声についてリピートさせます。この音声情報(イントネーションやポーズ)が、実は理解の助けにもなります。そして、一段落ずつ解説します。語彙、文法的側面(主語、指示詞、事柄の前後関係、実現の有無など)の理解を確認しながら、本文の内容を読み取っていきす。

「解説」としましたが、説明するのではなく、基本的には質問です。「日本語能力」のアップを狙って、本文の内容の細かいところまで、問いかけながら確認していきます。あくまで口頭での理解確認なので、答え方の正確性は私は求めません。また、クラスの学生全員が、いま問いかけられたその質問を考えているという状況を目指しているので、私は質問をリストにして板書したり、印刷して配布したりはしません。ひとつずつ理解を確認していくことで、間違いの連鎖も避けられます。答えるのに時間がかかる場合もあるかもしれませんが、そこはしっかり待ちます。そして、出てきた学生の答えに応じて、必要ならば、さらに質問追加したりしながら、きちんと理解できていることを確認していきます。個人的には、この臨機応変な対応が肝だと思っています。質問には、教科書のQ&Aに相当する内容も組み込んでおきます。

[教科書のQ&A]教科書のQ&Aは書かせます。教科書からの抜き書きで対応できる問いの形式になっているので、答えを見つけて、正確に切り取って書く練習と捉えています。Q&Aの問いの形式に応じた答え方は、別に練習しておきます。

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6.読んだ後で 

本文を読む目的は達成できた?

本文を読む目的が達成できたか、「ファーストリーディング」の時に提示した質問の答えを今度はクラス全体で共有します。「ファーストリーディング」の後でクラスメートと答えを共有した時は間違っていたとしても、いま、本文解説をふまえて自己修正できます。その気づきは、読めるようになったという達成感にもつながるはず‼

7.読解問題チャレンジ

同義文判定練習

教科書の本文を読むという授業においても、試験対策が可能だと考えています。日本語能力試験(JLPT)や日本留学試験の読解問題は、本文の内容と一致する文を選ぶという出題形式が主です。そこで、本文の内容を口頭で確認したあとに、同義文判定の練習をします。

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8.ディスカッション

「おもしろい」につなげる

本文を概ね理解したところで、本文の内容や筆者の意見を材料に議論します。個々人の考え方の違いはもちろん、学生と教師という立場、または、年齢、文化の違いなどによる見解の相違が明らかになることもあります。「おもしろい」と学生が目を輝かせれば、成功!と私は考えています。

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9.ミニスピーチ

「日本語の文章って、そういう流れですよね。」

かつて教えた学生のことばです。日本語の文章に特有の流れ、話の展開のパターンをつかみとるために、本文を俯瞰し、同じ流れの文章を作ることによって、文章の構造に慣れるとともに、よく使われる表現を自分のものにしてもらおうという活動です。

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※ 教える?教えない?

「もう習ってるはずなのに…」「あれ?まだだっけ?」「これ、説明したほうがいいのかな?」

ことばや文型が既習かどうかは、これまで学習した教科書により異なりますが、初級では使い方を限定して指導することも少なくありません。また、教科書で学習項目として明示的に扱われてはいなかったという場合もあります。習っていると思ったのに実は…なんてことがないように、私は気をつけています。学生の反応が薄いとか、文の意味が読み取れていないと感じたら、それが原因かも!? ただし、未習事項でも、本文を理解するのに差し支えない場合もあります。「教えすぎ」「説明しすぎ」にも注意しています。

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