東京湾のカニ
渡邊精一先生(東京海洋大学)のご指導の下、主に学生時代に行った研究です。
渡邊精一先生(東京海洋大学)のご指導の下、主に学生時代に行った研究です。
出身研究室では、半島南西部に位置する千葉県館山市坂田(ばんだ)の岩礁に生息するエビ・カニ類の生活史等に関する研究が行われていました。私は卒業論文の題材として、褐藻ウミトラノオの付着根周辺でよくみられるトラノオガニの生活史を与えていただきました。1年間毎月1回、磯でカニを採集して、大きさを測ったり、卵の状態を調べたり、卵からふ化させた幼生を飼育して発生を調べる等して、このカニの分布域北限である東京湾における生活史を明らかにしました。
Wataru Doi, Masashi Yokota and Seiichi Watanabe, 2007. Growth and reproduction of the pilumnid crab Benthopanope indica (Decapoda: Brachyura) in Tateyama Bay, Japan. La Mer, 45 (3): 135–147.
土井 航・渡邊精一, 2002. トラノオガニに現れた間性個体. Cancer, 11: 1–2.
東京湾内湾域に広がる砂泥底はシャコやマアナゴの漁場として知られています。しかし、1980年代後半からシャコの資源量は大きく減少しはじめました。東京湾では夏季に発生する貧酸素水塊により、多くの底生動物が死滅します。また、レジームシフトと呼ばれる環境と底生魚介類群集の構造的変化が起こっていることも明らかにされています。そのような中にあっても、以前から安定的に大きな資源密度を示している2種のカニについて生活史を調べました。
土井 航・渡邊精一・清水詢道・田島良博, 2011. 東京湾の平場におけるカニ類相と多様性. 神奈川自然誌資料, 32: 63–70.
土井 航・渡邊精一, 2010. 東京湾におけるケブカエンコウガニ(十脚目:短尾下目)の個体群構造と生活史. 日本ベントス学会誌, 65: 10–17.
Wataru Doi, Masashi Yokota, Carlos A. Strüssmann and Seiichi Watanabe, 2008. Growth and reproduction of the portunid crab Charybdis bimaculata (Decapoda: Brachyura) in Tokyo Bay. Journal of Crustacean Biology, 28 (4): 641–651.
Wataru Doi, Than Than Lwin, Masashi Yokota, Carlos A. Strüssmann and Seiichi Watanabe, 2007. Maturity and reproduction of goneplacid crab Carcinoplax vestita (Decapoda, Brachyura) in Tokyo Bay. Fisheries Science, 73 (2): 331–340.
土井 航・渡邊精一, 2006. ケブカエンコウガニCarcinoplax vestitaにみられた交尾栓. Cancer, 15: 13–15.
土井 航・渡邊精一・清水詢道, 2004. 東京湾生物相モニタリング調査に出現したカニ類の多様性と分布. 神奈川県水産総合研究所研究報告, 9 : 13–18.
外航船が頻繁に往来する東京湾は、海の外来生物が多く生息しています。チチュウカイミドリガニは地中海原産の外来種です。本種やイッカククモガニを含む外来種カニ類の生態や、日本の外来種の甲殻類についてレビューを書きました。
タカノケフサイソガニとその近縁種ケフサイソガニは東アジアが自然分布域ですが、欧米では外来種として定着し、分布を拡大しています。それら2種の遺伝的な判別方法を開発しました。
Izumi Yamasaki, Wataru Doi, Winda Mercedes Mingkid, Masashi Yokota, Carlos Augusto Strüssmann, and Seiichi Watanabe, 2011. Molecular-based method to distinguish the sibling species Hemigrapsus penicillatus and Hemigrapsus takanoi (Decapoda: Brachyura: Varunidae). Journal of Crustacean Biology, 31 (4): 577–581.
Wataru Doi, Seiichi Watanabe, and James T. Carlton, 2011. Alien Marine Crustaceans of Japan: A Preliminary Assessment In the Wrong Place - Alien Marine Crustaceans: Distribution, Biology and Impacts Series: Invading Nature - Springer Series in Invasion Ecology, Vol. 6 Galil, Bella S.; Clark, Paul F.; Carlton, James T. (Eds.) 1st Edition., 2011, XV, 716 p., Hardcover, p. 419–449.
土井 航・渡邊精一, 2011. 外来甲殻類. 東京湾海洋環境研究委員会編, 東京湾 人と自然のかかわりの再生, 148–150.
土井 航, 2011. カニ研究者として東京湾再生に思うこと. 東京湾海洋環境研究委員会編, 東京湾 人と自然のかかわりの再生:,352–355.
Wataru Doi, Yuichi Iinuma, Masashi Yokota, and Seiichi Watanabe, 2009. Comparative feeding behavior of invasive (Carcinus aestuarii) and native crabs (Hemigrapsus takanoi). Crustacean Research, 38: 1–11.
土井 航・渡邊精一・風呂田利夫, 2009. 大都市近郊の内湾域に定着した外来種のカニたち. 海の外来生物-人間によって撹乱された地球の海. 日本プランクトン学会・日本ベントス学会編, 東海大学出版会, 76–90.