認知症 2025年6月24日 文責:漆原幸雄
認知症は脳が萎縮する病気です。身体面では、手が震える、姿勢が傾く、動作が遅くなるなどの影響が出ます。精神面では、数分前に言ったことも忘れて、同じことを繰り返したり、子どもに戻って生活面で多くの援助が必要になります。
普通の物忘れと認知症はどう違う?
顔は覚えているのに名前が出てこない、とっさに言葉が出ずに「あれ」「これ」といった表現が増える、二階に上がったのはいいが何をするのか思い出せない等があります。なんとなく覚えているけど、あと一歩思い出せない。「あれ、なんやったっけ?」、何か忘れていることに自覚があるタイプの物忘れです。みなさん、経験あると思います。まあ、これは年のせいで心配いりません。
一方、危険なもの忘れ、これは数分前に自分が話したことも忘れて、1日に何十回、何百回と同じ事を言う。さっき人が来たこと、昨日病院に行ったことをもう忘れている。忘れたことを人に言われても「そんなはずない」と怒る。あるいは「ああ、そうそう」と言いながら、全く覚えていない。前後の状況も含めて完全に忘れてしまうので、何か忘れているという感覚が持てない、そういう物忘れです。
*よく転んで骨折したり、トイレの失敗が増えた。
*すぐ迷子になる。電車やバスを使えず、タクシーで帰って来る。
*「ホッチキス」「薬指」「マイク」ぐらいのたまにしか言わない物の名前が分からない。
*日常会話もなかなか理解できない。会話がかみ合わない。 *リモコン、電化製品の使い方が分からない。
*車の運転や家事をすると、手際が悪く見ていて危なっかしい。
*物を盗られた、通帳や印鑑がなくなった、と大騒ぎする。(自分でどこにやったか分からない)
*本人に危機感や深刻感がまるでない。ニコニコして「大丈夫、何も困ってない」。あるいは「大袈裟、すぐ病人扱いする」
長谷川式、時計描画など、記憶テストをすれば、一目瞭然です。
脳萎縮
若い時にはぎっしり詰まっている脳も、年を取ると隙間だらけ・スカスカになって、90にもなると5割の方が認知症に。一応は病気ですが、白髪やシワと一緒で老化現象の一種とも言えます。
緑が頭蓋骨。赤が脳、年を取ってくると、隙間が空いてきて黄色い部分が目立ってきます。が、これぐらいは正常範囲内です。
*CTで萎縮が確認できるのは発症5年目以降です。
緑色の頭蓋骨の中は、赤で示した脳はわずかで、黄色で示す隙間が目立っています。脳の重量も若い頃は1300gありますが、こうなると700gしかありません。
*認知症になって10年、こうなります。
こちらはまだ赤で示した部分は多く、重量は比較的保たれています。が、青で示す、血流が悪くて脳が死んでしまった所が相当にあります。
*認知症になって5~10年ぐらいです。
頭を使わなかったら認知症になる?
脳トレで予防、頭を使わなかったら認知症になる、全部、嘘です。大学病院では、海外で活躍した教授が続々と認知症で入院してきます。既に、学歴と認知症は関係ないと証明されています。
ただ、塩分・砂糖のとりすぎ(肥満、高血圧)、お酒、事故で脳に外傷を負ったり、ベースに動脈硬化や脳の損傷があると確実に発症が早まる。認知症は「生活習慣病」です。
発症すると、意欲がなく、面倒なことを嫌がるようになります。すぐしんどがって部屋にこもったり、風呂や着替えをせず、不潔でだらしない印象を与えます。また、気の向いたことしかせず、自分勝手になります。すぐ怒ったりします。
発症してからだと、ほとんどどうしようもありません。でも若い頃からであれば、「お酒をやめる」「塩分と砂糖を控え」「食後に運動する」ことでしっかり予防できます。
お酒
お酒は少量でも脳を委縮させます。飲んだ量に応じて進むので、嫌ならやめましょう。(*動脈硬化と関係なしに、直接脳を委縮させる。)
タバコ
発癌物質で、癌の30%はタバコが原因。また、動脈硬化を促進。できれば禁煙orアイコスに。
塩分
血圧が高い人は、動脈硬化が既に始まっています。朝に血圧が上がる、血圧130以上、足がむくむ等は、塩分を控えましょう。
*病院・施設食 …1日1400kcal、糖質200g、脂質40g、タンパク55g、塩分8~9g
1日の塩分量は6~8g以下に。ポイントは、①「梅干し、漬物、ふりかけ」禁止。②「ラーメンやうどん、お吸い物など汁物の汁を残す」です。あと、食パンを主食にしないこと。サンドイッチやご飯に塩をふる、しょうゆ・ドレッシングなど調味料も確認。 (*塩辛い味に慣れてしまっている。薄味に! 「味がしなくて気持ち悪い」と言うが、1~2か月で慣れてくる。頑張りましょう。)
WHOは、砂糖の害を警告。1日25g以下を推奨。
①虫歯、歯周病。 腸内環境の悪化。
②肥満、食欲増進作用
③血管年齢、老化を促進
糖質のとり方
砂糖はダメ! でんぷん・穀物の方が体に良い。
◎→そば、雑穀、玄米、ライ麦、納豆
〇→米、小麦、ジャガイモ、トウモロコシ、豆、オリゴ糖など。 (×フライドポテト、ポテトチップス)
×→砂糖、ジュース、菓子、あんこ、ジャム、はちみつ、ケーキ、チョコレート。
小腸に到達する食後20~30分で血糖値は上がります。
①糖質は、でんぷん・穀物で。
②早食い禁止!
③食後運動
なるべく血糖値を上げないこと。
砂糖は吸収が早く、急激に血糖が上がります。(肥満・老化を促進)
でんぷん・穀物は、吸収に時間かかり、上昇がゆるやかです。
*初めにガツガツ食べると、たくさん食べ過ぎてしまう。(コスパが悪い食べ方) 吸収のペースを考えて、ゆっくり食べる方が少量で効率よく満腹に。腹7~8分を心がけましょう。
食後運動
ゆる屈伸(下半身の運動)がオススメ。室内で簡単に、2~3分で効果あり。
ポイントは膝の痛みが出ないよう、少し曲げるだけ。速度は、1回6秒(曲げるの3秒、伸ばすの3秒)、少しゆっくりめで。
常識的な1食分(500~700kcal)を食べたら、空腹でも皿洗いなど家事、軽い運動を。時間をつぶしているうちに腹が膨れてくるし、血糖の上昇も「健常者」と「食後高血糖の人」の間ぐらいで済む。
*食前はダメです。空腹になり過食します。 食後15分から20分がベスト。
*階段の上り下り、掃除や片付け、その場で足踏みでもOK。元気があれば、散歩、なわとびでも。
*認知症で危険の認識が難しい場合は、①訪問看護が入った際、②デイケア内での運動、リハビリ、③終日臥床を避け、なるべく日中は座って過ごすなどで対応する。
家族として知っておきたいこと 初期対応
【1】「もの忘れ」を本人は分からない。自分から病院に行くことはまずありません。家族が異常に気付いた時点で、連れて行くしかない。
【2】生活力が低下する。外出の際は付き添って、食事の準備や掃除・洗濯も家族がして、薬やお金の管理もする。車の運転も危ないのでダメ。幼稚園か小学生に戻ったものとして、同居同然のサポートが必要になります。
ギリギリまで家で、とは思いますが、入院などをきっかけに施設入所にせざるを得ないのが現実です。(*自宅で倒れていた、近隣に迷惑、火事や事故の危険、同居してみたが無理だった等)
【3】本人には認知症であること、進行性の疾患であることまでは説明せず、「年も年なので、定期的に検査を受けましょう」「デイケアで運動、頭も使わないと、ダメになってきますよ」ぐらいで済ませることがほとんどです。
無理に告知すると、「そんなはずない」「病院なんて行くもんじゃない」と、薬を嫌がったり、通院が難しくなったりします。介護申請にも診断書がいります。高血圧、心不全や骨粗鬆症もあるはずで、何かと診察は受けてもらう必要があります。
数年して、病状が進んだとき
ここ数年の記憶がすっぽりと抜け落ちて、数秒前のことも忘れてしまうので、ここはどこか、周りにいる人は誰か、なぜ自分はここにいるのか、全部わからなくなる。 些細なことで混乱、怒ったりします。
家にいるのに「家に帰る」と出ようとし、何時間もウロウロしたり、突然、物を次々と窓から投げ捨てたり。失禁も増え、便をあちこち擦り付けたりします。
また、体も衰え、すぐ転倒。骨折も増えます。なんでも口に入れて、ティッシュやオムツ、時にはビニールや硬貨を食べることも。こうなると在宅は無理、入院や施設入所になります。
対処法を考える
Q.転倒を繰り返す →A.手すり、歩行器を置く。床は整理。(物でつまづく) マットを敷く、ヘッドギア。(コケた時のダメージを減らす) ベッドではなく布団に。(立ち上がれない場合に有効) 骨を丈夫にする薬。(骨折率を半減)
Q.変なものを食べる →A.できる限り物は撤去。食事量をアップする。
Q.混乱・興奮しやすい →A.言って安心するだろう事を言い、無駄に言い争わない。
×「ここは家だから」→〇「タクシー呼ぶからここに座って」
×「さっきご飯食べたじゃない」→〇「何食べたい? 持ってきますね。」
× 理由も分からず怒り出した、なだめる →〇一旦その場は離れ、15~20分して戻る
Q.異常な回数電話してくる →A.着信拒否。相手からの電話には出ず、自分がかけたい時だけかけましょう。(万一、なぜ電話に出ないか問われたら、迷惑になっているとはっきり伝えましょう)
認知症の治療薬
「クエチアピン」
睡眠薬。半減期が4時間と短く、体から抜けやすい。徘徊・不機嫌なども数日で改善。添付文書上、糖尿病に禁忌だが25~50㎎なら影響しない。
「チアプリド」
少しの興奮なら、チアプリドぐらいでおさまる。弱い分、副作用はない。
「メマンチン」
多動、徘徊、机叩き、大声などに。抑える薬で、しんどがってダメな場合もある。
「バルプロ酸ナトリウム」
高次脳機能障害の特効薬。脳出血(脳梗塞)で倒れた後に、抑制が効かなくなる例に。怒ると手が出る、気に入らない人をひっぱたく、介護者を蹴るなど。
レビー小体病
「ドネペジル」「イクセロンパッチ」
元気を出す薬。副作用はイライラ、多動。徘徊が増える、すぐ怒るなど。
レビー小体病の特効薬で、幻視が一時的に減る。治るわけではなく、半年から2年でまた幻視は出てくる。
「抑肝散」
高齢者では、低カリウム血症に注意。(甘草に加え、蒼朮・茯苓で利尿する為)
*幻視(レビー小体病) …①動物がいる(茶色い犬、猫)、②壁から草や竹が生える、③人がいたと思ったら、煙のように消える。(枕元に立ってる、押し入れに子どもがいた等)。しゃべらない。鳴かない。(幻聴はない)
睡眠薬
「デエビゴ」
日中に残りやすい分、抑制効果があって、少し大人しくなる。
「ゾピクロン」「ゾルピデム」、「エスゾピクロン」
普通の睡眠薬。ふらついて全然飲めない人がいるので注意! (10人に1人ぐらい)
*クエチアピン(25)1T≧デエビゴ(5)1T=トラゾドン(25)1T≧ゾピクロン(7.5)1T=ゾルピデム(5)1T>エスゾピクロン(3)1T。
「トラゾドン」
多少の抗うつ効果あり。不眠に効くが、躁状態には適さない。
抗不安薬
「アルプラゾラム」
不定愁訴、不安や息苦しさを訴える患者に。
骨折予防
「プラリア注、デノタスチュアブル」「ミノドロン」
カルシウムを取り込んで骨を丈夫に。腰痛にも効く。骨折率を半減。
精神以外の治療薬
「フォシーガ」
体重を減らす(—2.4㎏)。むくみを改善。延命効果あり。
「エンレスト」
血圧を下げる。延命効果あり。
「桂枝茯苓丸」
下半身の血流、便通を改善。足の冷え、むくみ、腰痛に効く。
「麻子仁丸」
腸の動きが悪く、強度の便秘となった者に使用。