統合失調症 2025年8月29日 文責:漆原幸雄
思春期になると、「気恥ずかしい」「人の視線が気になる」、多感で気難しい年ごろになります。これが行き過ぎたのが統合失調症です。
(*表情が暗い、学校や仕事に行かなくなった。)
初期症状 幻聴は目立たず、関係念慮・注察気分が主。
【0】漠然とした恐怖感 …「何か怖い」
【1】関係念慮 …周りの人の一挙一動が、自分に関係あるように思えてくる。
・誰かが咳払い →「自分に注意した」「あてつけでやってる」
・誰かが携帯を使う →「自分の状況を逐一報告している」
【2】注察気分 …「見張られている」「盗聴、盗撮」
・「人の視線を感じる」と、カーテンを閉め切ったり、家の前に止まった車・通行人をあやしいと思うように。
(*独語・空笑、奇異行動が目立つ。)
病状が進行 幻聴が活発となる。
【3】幻聴 …人の声や耳障りな音がする。うるさくて寝られない。
・のどが渇いたら「お茶でも飲んだら」。トイレに行くと「またトイレ行くの?」お菓子食べてると「これ以上太ったら豚」。隣人や通行人がいちいち自分の行動に口を出す。
・さあやろうと思ったときに「ドンドン」と壁を叩いたり、急に子供が騒ぎだしたり、大きな音を出して邪魔してくる。
*幻聴は、本来、自分の考えていることや思い付きです。が、統合失調症になると、(自分の考えであっても)人から言われた声のように聞こえます。
【4】独語、空笑 …錯乱状態。
・急にニヤついたり、独り言が多く、一人でしゃべり続けている。内容は意味不明。
(*社会生活が困難に。)
後遺症
【5】思考力の障害、人格荒廃
・幻聴にしても、壁を隔てて何mも離れた所での会話が、内容まではっきり聞き取れる事に
違和感を持てない。(論理的思考の障害)
・意欲がなく部屋にひきこもる。(無為自閉)
・IQの不可逆的低下、自然な表情・情緒が失われる。(知的障害、プレコックス感)
治療 絶対に薬をやめない・やめさせない
*病状が悪化した場合、自分で病院に行くことはまずありません。家族が連れていくしかありません。大体は入院になります。 (←まじめに通院、素直に薬を飲む人なら通院でも可。)
*治療を中断するたび、劇的に病状が悪化します。必要な薬が2倍、3倍と増えます。絶対に治療を中断してはいけません。
・かぜ薬との飲み合わせが気になって、数日、飲むのをやめた。
・家族・友人から、「薬はなるべく飲まない方がいい」「精神科の薬は危険」と言われた。
・一日、薬を飲み忘れても悪化しなかったので、そのまま飲むのをやめた。
・良くなって一年たつので、薬をやめてみたい。
・いつまでも精神科に通っているのは恥ずかしい。
・あの時おかしくなっただけで、私は統合失調症ではないと思う。
*何かと治療をやめてしまうのも統合失調症の特徴です。周囲の人は治療が中断しないよう、注意してください。「勝手にやめない方がいいと思う」「通院先の先生に相談しなよ」 病状が悪化している場合、病院(あるいは地域包括センター)に連絡していただくと助かります。
治療薬
*睡眠薬 →プロピタン、ヒルナミン、デエビゴ、フルニトラゼパム
*錐体外路 …(軽)手の震え、舌の震え(振戦)→(重)姿勢の傾き、流延
*アカシジア …落ち着かない。貧乏ゆすり、歩き回る。 (←錐体外路とセットになって出てくる)
副作用
*振戦、アカシジア →(治療)アキネトン+ランドセン、レグナイト、フルニトラゼパム
(多)リスペリドン、セレネース、ゾテピン、エビリファイ → (少)オランザピン、コントミン、プロピタンに変更
*便秘 →(治療)桂枝茯苓丸、麻子仁丸、酸化マグネシウム+ラキソベロン
(多)リスペリドン、オランザピン → (少)セレネース、コントミン、プロピタンに変更
*過食、肥満 →(治療)トピナ、オゼンピック注
(多)リスペリドン、オランザピン → (少)セレネース、ゾテピン、コントミン、プロピタン、エビリファイに変更
*流延、姿勢の傾き →(治療)減量を検討
(多)リスペリドン、セレネース、ゾテピン → (少)オランザピン、コントミン、エビリファイ、プロピタンに変更
「リスペリドン」 特効薬。まずはリスパダールを使う。強力な分、多少の手の震え、便秘はやむを得ない。が、過食・肥満、流延、姿勢の傾きが出た場合は減量を検討。
「オランザピン」 ①躁病を合併、②妄想性障害、女性の統合失調症に効くイメージ。注察気分や幻聴に対する効果はリスペリドンほど強くない。肥満、糖尿病に注意。
「セレネース」 リスペリドン登場する前は、一番の薬だった。振戦、流延、姿勢の傾きが出やすいのが欠点。肥満、便秘の副作用はゼロである。パワーはリスペリドンに劣るが、オランザピンより強力。躁病にも効く。
*セレネース、トロペロン、クレミン、ゾテピンは似た薬。高齢者には使いづらい。(転倒、誤嚥を増やす)
「コントミン」 高齢者の統合失調症、あるいは妄想性障害の特効薬。リスパダールを行くほどじゃない場合(高齢で体が弱っている、弱い薬でも収拾がつきそう)は、コントミンから使うこともある。効果が弱い分、副作用は少ない。通院レベルの患者に使う。
「ゾテピン」 躁病の特効薬。幻聴、注察気分にはさほど効かない。多弁など、躁状態著明の場合に考慮。
「プロピタン」「ヒルナミン」「デエビゴ」「フルニトラゼパム」 睡眠薬。不眠に使う。
*先に紹介したリスペリドン等も適合すればよく寝られる。
「エビリファイ」 異常にアカシジアが出やすい。注意! そもそもの薬として弱く、あまり使わないが、手の震え、眠気、体重増加がないのは利点。薬が異常に効きやすい人、どうしても副作用で困るという例に使う。
「黄連解毒湯」 体の熱をとり、興奮を鎮める漢方。高体温(36.7℃以上)・春先の悪化など、熱のこもりで病状悪化した際に投与。便秘がある場合は、三黄瀉心湯でもOK。
*リスペリドン等は絶対に必要。漢方薬だけでは良くならない。
「桂枝茯苓丸」 便秘する場合、桂枝茯苓丸に加え、酸化マグネシウムやラキソベロンを併用する。
統合失調症に絶対、使ってはいけない薬
●ダメ!●「加味逍遙散」 漢方薬では加味逍遙散が禁止。幻聴、注察気分を悪化させる。
●ダメ!●「抗うつ薬(特に三環系・四環系、SNRI)」 トレドミン、サインバルタ、トリプタノール、ノリトレン、アナフラニール、ルジオミール、リフレックス、トラゾドンなど、全ての三環系・四環系、SNRIは統合失調症を必ず悪化させる。使用厳禁!!
●ダメ!●「コンサータ」「覚せい剤」 健常者であっても幻聴、被害妄想が出る。厳禁!
統合失調症の「うつ」を治療する薬
*「うつ」を訴える場合、まずはSSRI、レキサルティを使う。(抗うつ効果強め)
「パキシル」「レクサプロ」 よく効く。4~5割の患者には効果があって、少しは「うつ」が良くなる。パキシルは体重増加に注意。
「レキサルティ」 イライラしやすい人にはダメ。元気がなく大人しい人に適合。
*イライラ、衝動性がある場合は、レグナイトやランドセンの方が優る。(抗うつ効果弱め)
「レグナイト」 少し抗うつ効果あり。不眠、アカシジアに効く。
「ランドセン」 イライラ、衝動性を緩和。アカシジア、パニック障害に効く。
もとは統合失調症の薬だが、ほかの用途でしか使わない薬
「クエチアピン」 認知症によく使う。
「フルメジン」 知的障害によく使う。
*いずれも統合失調症には効果が弱く、ほとんど使わない。
今では使われなくなった薬
「ルーラン」「ロナセン」「バルネチール」 他に優れた薬が多数あり、新規では出さない。
職員・友人の対応
【1】一にも二にも薬をきっちり飲んでいるか、が大事です。まじめに通院、薬を切らさないよう支援してください。
【2】悪化時は、一週間・二週間様子を見たりせず、すぐに連れてきてください。対応が早ければ、入院せずに済む場合があります。
【3】幻聴をこちらからはあえて聞かない。 月1回の診察の折などは、幻聴の有無を確認することがありますが、普段は幻聴・被害妄想の話題は、本人から振ってこない限り避けてください。(*幻聴、病的体験の世界に、短時間であっても、つからせない方が良い。)
【4】幻聴や被害妄想の内容に同意を求められた場合、このように返答してください。「そういう音(声)は聞こえない」「〇〇さんには聞こえるんだろうけど、私には聞こえない」 「私には分からないので、精神科の先生に話を聞いてもらった方がいい」
*特に重要なのは【1】【2】です。 【3】【4】は補足と思ってください。
利用できる制度、社会復帰の注意点
「高額療養費」 入院費用の軽減
「作業所」「グループホーム」 就労困難な事例では、作業所・グループホームを検討。
*一般就労は何かと病状再燃しやすい。夜勤、残業免除など、配慮が必要。がやがやと騒がしい所もダメ。クレーム対応、レジ打ち、営業職なども不向きで、農作業、工場勤務、内職、清掃など、人よりは自然やモノを相手にする仕事で、比較的静かな所で人に気を使わず、一人で黙々とできる作業の方が向く。(*何人かのグループで作業するのも不得手。自分の作業が滞ると他の人に影響、休憩やトイレに行くのに一声かけないといけない等。)
*就労する場合、薬は少し多めにして、病状を抑え込んでおく。1~2か月に1回は必ず通院。
*職場に病気のことを話していないと、ちょっと具合が悪い時に、とっさに休めず、数日であっという間に悪化することがある。必ず、職場の責任者には、話を通しておくこと。(知られたくない・採用されにくくなるので、話さないというのはダメ。)
「自立支援医療」 通院費用が安くなる。
「精神科訪問看護」 週3回、1回30分。簡単な相談、社会的手続きの代行も可。
「訪問薬剤管理指導」 薬剤師が訪問し配薬、服薬確認を行う。
「精神障害者手帳」 初診から半年以上。ヘルパーの利用に必要。
「ヘルパー」 独居、障害・虐待家庭など、支援力が弱い場合、ヘルパーを利用できる。
*総体として訪問を嫌がるケースが多い。ただ、通院が途絶えた際の安否確認、2週間に1回の服薬確認はあった方がよい。 (←服薬が命綱、病状悪化すると自分で内服管理できなくなる病気)
*ヘルパーも週1~2回、必要です。極端な偏食から、鉄欠乏性貧血、原因不明の神経痛、糖尿病など合併しやすい。 (←特に統合失調症の後遺症(陰性症状)がある者。食事のことまで丁寧に考えることが難しくなる。健康管理がずさんになりがち。) 栄養バランスを考えた食事を作ってもらいましょう。
「生活保護」
① 生活に困窮。扶養の意思を表示する親族がいないこと。
「傷病手当」 当初1年6か月に限り、給与の6割を保証。
① 勤続1年以上 (*パート、試用期間は算定せず)
② 自己判断で休んだ場合は対象外。休職直後、その後も月1回の通院が必要。
「障害年金」 初診から1年6カ月以上
① 治療を受け、1年6カ月が経過しても治らない場合。
*自宅での生活が自立、入院歴のない人は対象となり辛い。
*労務不能となった場合、生活保護がメインです。
より深い理解のために
<若年発症>
*17~18歳初発 →性ホルモンの影響で体が作り替わる際に、脳も再構築される。患者の脳は生下時は正常、性ホルモンによる二次発達に問題がある。 異常が僅かで遅れて発症する場合、30歳頃の初発になる。その場合、海外旅行や仕事の多忙など、1~3日の不眠が引き金になっている。
*若年発症は重症で、リスペリドン4~6㎎以上、かなり多い量を使う。副作用は便秘、錐体外路・アカシジアが多い。ジストニア(背中の筋肉のこむら返り)は、若年特有。初めからランドセン1~2㎎+アキネトン2~4㎎を併用した方が無難である。(一度でも副作用起こすとコンプライアンスが劇的に悪くなる場合あり) 便秘が出たら、桂枝茯苓丸、ラキソベロン+酸化マグネシウムも使う。総量は多くなりがち。 体重増加にも注意。当初は1~2週に1回体重測定を。
*一旦経過が良くなっても、春先など季節の影響でぶり返したり、何かと再発する。怠薬で悪化する者も多い。
<高齢発症>
*60~70歳初発 →動脈硬化が原因。脳機能低下による。妄想性障害(幻聴のない統合失調症)、あるいは幻聴あるにしてもそこまで支離滅裂とならない症例が多い。
*若年発症と比べ軽症例が多く、リスペリドン0.5~2㎎あるいはコントミン12.5~25㎎あるいはプロピタン50㎎で決着する。施設入所している者などは、服薬管理されるし、悪化時も早期に報告が入るので、治療経過は良好である。
*ランドセン、アキネトンは使わない。(転倒増える)
<覚せい剤後遺症>
*一回の使用で統合失調症になる者もいれば、繰り返し使用してやっと発症する者もいる。脆弱性が人によって違う。
*自然経過で統合失調症になった者と比べ、幻聴に自覚がある者が多い。また、リスペリドンなど治療薬が全然効かない。(大体は、覚せい剤をやめる以外、治療法がない。)
<その他、統合失調症を連想させるフレーズ>
●悪意を感じる(被害妄想) →「毒混ぜられてる、殺される」「電波、ビーム」「悪口」「いじめ」、食事・内服を拒否。
●情報漏洩(思考伝播) →「携帯から情報が洩れる」「考えが伝わる」「プライバシーがない」「近所の人に噂されてる」
●関係念慮 →「人に影響を与えて、不快にさせてしまう」「嫌われたから謝りたい」、自分の臭い・風貌を気にする。
●注察気分 →「電信柱の所に人が立っててのぞかれてる」「カーテンの隙間からのぞかれてる」「見られてる」
●自力救済(奇異行動) →自分の頭を叩く(幻聴を止めようと思い)。イヤホン・耳栓する、サングラス、テープで隙間をふさぐ。警察を呼ぶ、裁判の証拠を集める。近所に苦情・通行人に怒鳴る。急に笑う、独語・空笑。人込み、がやがやした所で疲れやすい。何かと気を使う。おどおどしている。
●独特な言い回し →「父は昭和の空気の人」「ブンタンのノイローゼは夜も寝ない」「牛の病院だから殺されます」
参考図書
*「統合失調症―患者・家族を支えた実例集」 林公一