アルコール依存症 2025年6月5日 文責:漆原幸雄
『生きていることに対する苦悩』から逃れるために、飲んでしまう病気です。養命酒、料理酒などに依存するケースもあり。
在宅、軽症
*健康診断が悪かった、妻にしかられた、など減らしたいと思って、すぐ結果に結び付けられる例。
*暴言・暴力、人格が変わる等なく、家族関係は円満。酒量多くとも「楽しいお酒」で、人に迷惑をかけない。
➤アルパ飲みで効率よく酔えれば、必ずしも多い量を飲みたい訳ではない。そういう段階です。
① 初めの1杯を早飲みしない
気分の高揚、快楽は「30分に1本」で最大を維持できる
アルコールは胃・小腸で吸収されますが、いい感じに酔うのに最低30分はかかります。早く酔いたいと思って、2本・3本とゴクゴク飲んでも、酔い方は早くなりません。(胃腸の吸収を超えて早飲みしても、無駄。効率の悪い飲み方になる。)
*気分の高揚、快楽には上限。しかし、害は飲めば飲むほど増える。同じ血中濃度でも、記憶障害、体の動揺、認知・運動機能に対する障害が大きい。
② 断酒薬(レグテクト、セリンクロ)
*アルパ飲みで対処できない例は、脳の飲酒要求を抑える薬(断酒薬)を使う。
レグテクト
気持ちいい、また飲みたいと思う脳の欲求を抑えます。副作用は特にありません。(前ほど気持ち良く酔えません。何か物足りない、こんなもんだったっけ?という感じです。)
*特に断酒直後や、ちょくちょく飲み続けている例に。 *断酒成功1~2年で、一旦やめて良い。
セリンクロ
強力な分、うっすら吐き気あり。(お酒を飲むとなお気分が悪くなる。) 在宅だと勝手にやめている例が多い。使うにしても0.5Tにとどめる。 (*過食・肥満にも有効)
シアナマイド液、ノックビン粉末
アルコールの分解を阻害、極端に悪酔いさせる薬。飲むと著しい動悸(頻脈)、気分不良を生じる。飲酒欲求を抑える訳ではなく、どうなるか分かっているなと脅しをかける薬で、時代遅れ。新規では処方されなくなった。
強制治療、重症
*後遺症を生じている。
➤人生の苦しみから逃れることに主眼があり、気持ちよく酔うというよりは、つぶれて苦しさを忘れたいという飲み方。際限なく飲む、飲むと人格が変わる、人の手をわずらわせる・迷惑をかけることもしばしば。飲み方うんぬんでは対処できない。(大体は、そもそも治療を望んでいない。)
アルコール後遺症
●脳にダメージ …手の震え、性格変化(気難しい、批判に敏感)、不眠、認知症
●社会的影響 …否認(アルコールの害を認めようとしない、飲んでいる量や害の程度を過少申告)、連続飲酒(家事・仕事など社会的責任の放棄、約束を破る、嘘と隠し事が増える)、家族関係の悪化(離婚、孤立)
●膵臓にダメージ …慢性膵炎(上腹部の圧痛、嘔吐・下痢)、糖尿病
●不自然な事故 …転倒・骨折、階段から転落、風呂で溺死。極端な不注意。
●口腔・咽頭・食道癌 …×3倍に。
●急性アルコール中毒 …血中濃度0.4%(一気飲み、約8合)で半数死亡。 酒に弱い体質ドイツ0%、韓国28%、日本44%。日本の場合、4~5合で危険あり。
平均寿命51歳。早死にする。(不慮の事故、病死など)
●肝臓 …回復力が高く、ダメージあっても回復する。γGTP高値、後年になって多発性肝嚢胞。(肝硬変、食道静脈瘤もないわけではないが…)
治療薬
「フルニトラゼパム+ヒルナミン」
最強の睡眠薬
*思い切って寝る前に薬をかためる。(不眠が一番の苦痛、せめて夜は寝かせる。)
*セロクエルなど複合作用の薬ではなく、フルニトラゼパム+ヒルナミンの一択。
*抗うつ薬はイライラしやすく、適さない例が大半。
*自宅で飲み続ける例には、「眠剤+飲酒」となると、転倒・失禁が増えるだけ。不適切。
「ビタミンB1+ランドセン(orセルシン)」
ウェルニッケ脳症(脳障害)対策。
*ビタミンB1が欠乏しやすく、処方しておいた方が無難。(*連続飲酒、手が震える例は、倒れて入院などの際に脳症を起こす。)
*半減期の長いベンゾジアゼピン系を併用すると、離脱症状(脳症)を抑えられる。
●使うべきでない薬●
×→レキサルティ、トラゾドン、抗うつ薬(SSRI・SNRI、レメロン) イライラして良くない。
×→セロクエル、デパケン、リスパダールも今一つ。イライラ、憂鬱に何か薬を出したくなるが、アルコール依存症では裏目に出る。(*振戦・歩行困難、アカシジアなど、案外副作用が出やすい。)(*長年の飲酒で、脳神経がダメージを受けている。)
×→日中の抗不安薬(デパス等) 眠剤に回すべき。
〇→レグナイト、リリカは使用可。抗うつ効果は弱く、イライラもしない。
イネイブラー(enabler)
共依存の概念を理解しておく必要がある。(以下、介護者の心構えと思ってください)
【1】(飲む飲まないに関しては)ほうっておく。本人がやめたいと思わない限り、周りの人にはどうしようもない。
*寝たきり、全介助になるか、施設入所・入院となった場合は別。
アメリカの研究で分かったのは、『飲酒をやめさせようとする妻の行動が、かえって夫のアルコール依存症を悪化させる』ことです。酒をやめるよう注意する、酒をとりあげる・(本人の)お金を渡さない、失禁・嘔吐物の後始末をする、など。
①飲む・飲まないは本人の自由。口を出さない。 ②飲酒の上での失敗は、後始末しない。
【2】自分のことは自分でする。ダメと思って、何でもやりすぎると、余計ダメになってしまう。患者の方もダメ人間扱いされて、いい気はしない。これだと人間が成長することもない。
必ず自分の問題は自分で解決する。それぐらいはできる人だ、と信じてください。そうすることがお互いの成長につながります。
うるさく勉強しろと言われたら、余計やる気をなくすのと同じ。余計な一言を言わない方が、子どもは勉強するし、アルコール依存症の問題も早くに解決する。
解決は今世のうちとは限らない。苦痛をともに受け続けることが、耐えがたい場合もあるし、誰の利益にもならない場合もある。
【3】どこまでやる・やらないは介護者の心ひとつです。
*「いい加減にしろよ」と怒りすら感じる場合
*「またか」「もう嫌」、うんざりしている場合
*「こんなことがあって…」「大変」、言って回りたくなる時
*「酔っぱらいの相手はしたくない」「私はお酒が嫌い」という方
介護・支援は「うっとうしい」「いい加減に…」と怒りながらやるものではない。嫌々は、どちらのためにもならない。ちょっとでも嫌と思ったら、その件には一切関わらなくていい。何もしなくていい。
相手を嫌いになって、チクチク攻撃して、それでも介護を続けるというのは美徳ではなく、失態です。
(ここを軽視すると、相互不信、虐待・精神病につながる)
飲酒量と行動の変化、対応方法
ほろ酔い
1~2本、血中濃度0.05~0.1%
酔っぱらって、気分が良くなる。
人に迷惑をかけることはない。
話は通じる。記憶も残る。
●避難は、ほろ酔いか、飲みだす前です。ひどいことがあるまで待つ必要はない。
酩酊
3~6本、血中濃度0.1~0.3%
気が大きくなる、ふらつく、口数や手足の動きが増える、判断力・抑制が外れる。
気分が変わりやすい。その人の地が出る。(*翌日、記憶はあいまい)
時に、口調がきつくなる、ぐちぐち言い出す、人を傷つけることを平気で言う、粗暴行為など。
●こちらが気を使う、機嫌を取る必要は一切ない。
泥酔
7~12本、血中濃度0.3~0.4%
立てなくなる、言葉が支離滅裂、一人でしゃべり続ける、嘔吐・失禁、そのまま寝てしまう等。
翌日(どころか数分後には)、全く覚えていない。まともに相手するだけ無駄。ほうっておく。
*酔って醜態をさらすなら、その場を離れ、そのような姿は見ないようにしましょう。
*これ以上は危ない・少しでも嫌と思ったら、以降は一人で飲み続けてもらう(自分の部屋・外に避難)旨、合意しておきましょう。また、後始末に関しても、自分のしたことは酔いが覚めてから、必ず自分でしてもらう(こちらでは何もしない)旨、合意しておきましょう。
*これは、相手のことが嫌いになって、決定的な破局を迎えることを避けるための努力であって、相手に冷酷というのと真逆の、誠実で勇気ある行動です。(*相手は飲み続けたい、こちらは限度があるという、両者が折り合えるギリギリの所です。)
③機嫌を取る必要は一切ない。(*「畏れる」「へつらう」「嫌々する」は状況を必ず悪化) ④ストレス・精神的圧迫を少しでも感じるなら、その瞬間(飲もうとした時など)に避難。(自分のことは自分で守る)
参考図書
●『母のお酒をやめさせたい』 三森みさ
●『酔うと化け物になる父がつらい』 菊池真理子
●『虐待父がようやく死んだ』 あらいぴろよ
●『夫婦の関係を見て子は育つ』 信田さよ子
(依存症の治療は、宗教になってきます。)(どう生きるか、生命の本質)
日蓮大聖人の御書や創価学会・池田大作の著書など勉強してみてほしい。
推薦図書
●『勝利の経典「御書」に学ぶ』、全1—22巻
●『女性に贈ることば365日』 一番読みやすい。特別な知識なく読める。
● 池田先生スピーチ集 『希望の明日へ』
●『輝きの人間世紀へ、御書とその心』 御書と言うのは、750年前の指導書です。
●『新・人間革命 第3巻』 特に「仏法西還」の後半1/3と、「仏陀」の章。
●創価学会、月1回発刊 『大白蓮華』
「冥の照覧」を体感できるかが、ポイントです。