【優秀賞】

草野 聡一朗

■学校名

宇都宮大学

代表者名

草野 聡一朗大学4年)

■他メンバー

なし

■担当教員(指導者)

なし

馬事文化の再編

野馬追いの里に描かれる新しい人と馬の暮らし

■作品概要

福島県北部の海岸に面した地域に南相馬というまちがあります。ここでは、1000年以上続く「相馬野馬追」という祭りが行われています。この祭りは、地域にとっての誇りであり、人々と馬が共存していた地域でした。しかし、東日本大震災、福島第一原子力発電所の事故の影響を受け、祭りの規模が縮小され、馬を手放す人も多く、馬と地域のつながりが希薄になりつつあります。そこで、南相馬独自の馬事文化を再編し、人と馬が共存する場を「相馬野馬追」の主会場を中心とするエリアに提案します。「相馬野馬追」の中心地に馬と暮らす拠点や引退馬の保護施設を計画し、日常的に馬と触れ合うきっかけを作ります。日常的に馬と触れ合うことで、馬と地域の新たなネットワークをつくりだします。この建物を通して、新たな馬の価値を見出すとともに、人々と馬が共存できる空間を提案します。

■探究の動機や目的

今回の作品は、大学の卒業設計で取り組みました。テーマを決める際に、福島県で生まれ育ち、東日本大震災を直に経験したこともあり、被災地で何か復興に繋がる提案をできないかと考えました。南相馬市は福島第一原子力発電所の事故の影響を受け、一時は避難区域として指定されていました。この街には多くの地域資源があり、その中でも「人と馬の文化」がとても魅力的に感じました。「相馬野馬追祭り」を通して時間をかけて形成されてきたものであり、地域の人々の生業と暮らしに馬が密接に関わっていました。しかし、東日本大震災の影響や高齢化、感染症の影響によって地域の馬の数が減少しているということを知りました。また、かつては農耕や移動手段としての役割が失われた馬という貴重な地域資源に、新たな価値を見出すとともに、地域の復興や活性化に繋がってほしいという思いからこのテーマを選びました。

■探究の方法や内容

現地調査を行い、実際に馬と人の関わり方をリサーチするとともに、南相馬市が公開している相馬野馬追祭りの歴史や活動内容を調べ、提案に活かしました。また、かつて馬と人が共存していた建築の形態を文献や実際の建物を調査することで探求を行いました。


■感想と今後の課題

今回、馬と人の文化について探求し新たな人と馬の関わり方を提案することで、地域資源の大切さや後世に残していくべき文化がどの地域にも存在していることが分かりました。南相馬市の野馬追を通した馬と人の生業と暮らしの文化は、時間をかけて形成されたものであり、次の世代に継承していくと共に現代の暮らしに合うような価値や活用方法を見出すことが、このまちにしかない魅力を再発見し地域活性化につながると感じました。

反省点として、新型コロナウイルスの影響もあり、現地に行ける機会があまりなく現地の話を伺うことができなかったので、今後は地域の人と馬の関わり方を深く探求していき、馬と人暮らしの中の課題や新たな価値を見つけ出していきたいです。

応募作品