このホームページは、内容を随時更新しています。
民事裁判では、判決まで進まず、途中で「裁判上の和解」によって解決することがあります。
「和解」という言葉から、
「加害者を許すことなのではないか」
「仲直りするという意味なのではないか」
と感じ、抵抗を持つご遺族もいるかもしれません。
しかし、裁判上の和解は、そのような意味とは異なります。
裁判上の和解は、民事上の争いについて、賠償額や支払方法などの条件を当事者同士で合意し、訴訟を終了させる法的な手続です。法務省も、訴訟上の和解を「訴訟を終了させる目的」で当事者が争いを解決する合意と説明しています。 (法務省)
裁判上の和解を選んだからといって、
・事故について納得した
・加害者の行為を許した
・事故に対する考えが変わった
という意味になるわけではありません。
あくまで、「民事上の争いを、判決ではなく合意によって終わらせる」という手続です。
ご遺族が事故や加害者に対してどのような気持ちを持っているかと、裁判上の和解を選ぶかどうかは別の問題です。
民事訴訟では、裁判所から和解を勧められることがあります。
民事訴訟法89条では、裁判所は、訴訟がどの段階にあるかを問わず和解を試みることができるとされています。 (法務省)
そのため、審理が進み、
・双方の主張
・提出された証拠
・争点
・裁判所から見た事件の見通し
などがある程度整理された段階で、裁判所から和解の話が出ることがあります。
ただし、裁判所から和解を勧められたからといって、受け入れなければならないわけではありません。
内容に納得できなければ、和解せずに判決を求めることができます。
裁判上の和解では、例えば、
・支払う損害賠償額
・支払期限
・一括払いか分割払いか
・支払いが遅れた場合の取扱い
・その他の解決条件
などについて話し合うことができます。
判決では、裁判所が法律と証拠に基づいて結論を示します。
一方、和解では、当事者双方が受け入れられる条件を探して合意します。
そのため、判決とは異なる柔軟な解決ができる場合があります。
法務省も、和解では、支払能力に応じた分割払いなど、当事者の事情に応じた解決が可能であることを説明しています。 (法務省)
裁判上の和解では、損害賠償額や支払方法だけでなく、当事者双方が合意すれば、金銭以外の事項を和解条項に盛り込める場合があります。
事件の内容によっては、例えば、
・謝罪に関する事項
・一定の行為を行うこと、または行わないこと
・今後の連絡方法
・その他、当事者間で合意できる事項
などが検討されることがあります。
裁判所・司法研修所の和解条項に関する教材でも、金銭支払だけでなく、権利関係の確認や登記手続など、さまざまな内容を和解条項として定める例が示されています。 (裁判所)
ただし、裁判所が一方的に相手方へこれらの内容を命じるものではありません。
和解条項として盛り込むためには、相手方との合意が必要です。
金銭以外にも和解で求めたいことがある場合には、和解の話し合いが本格化する前に、弁護士へ希望を伝えておくとよいでしょう。
裁判上の和解が成立すると、その内容は「和解調書」に記載されます。
民事訴訟法267条により、和解調書に記載された内容には、確定判決と同じ効力があります。 (法務省)
そのため、例えば相手方が和解で約束した金銭を支払わない場合には、和解調書をもとに強制執行を行うことができます。
これは、単なる口約束とは大きく異なる点です。
ここは特に注意が必要です。
裁判上の和解が成立すると、その和解の対象となった紛争は、原則としてその内容で最終的に解決します。
法務省も、裁判上の和解が成立すれば、原則として紛争が終局的に解決され、訴訟事件も終了すると説明しています。 (法務省)
つまり、
「いったん和解して、後から納得できなければ判決を求める」というものではありません。
そのため、和解を成立させる前に、内容を十分確認することが大切です。
裁判所が和解案を示したとしても、最終的に和解するかどうかは当事者が決めます。
「裁判官から勧められたから断れない」ということではありません。
和解案について、
・賠償額に納得できるか
・支払条件に問題がないか
・事実についてどこまで審理された段階なのか
・判決まで進んだ場合の見通しはどうか
・裁判を続ける精神的・経済的負担をどう考えるか
・金銭以外に求めたいことが反映されているか
などを弁護士と確認して判断します。
ご遺族が裁判上の和解を選ぶ理由はさまざまです。
例えば、
・判決までさらに長期間かかることを避けたい
・これ以上裁判を続ける精神的負担を減らしたい
・裁判所から示された金額や条件に納得できる
・判決になった場合の不確実性を避けたい
・早期に賠償金の支払いを受けたい
・金銭以外の条件も含めて解決したい
などがあります。
和解を選ぶことが、「事故の責任を軽く考えること」や「加害者を許すこと」につながるわけではありません。
一方で、「金額だけではなく、裁判所に事実について判断してもらいたい」「判決という形で事故の責任を明確にしてほしい」と考えるご遺族もいます。
その場合には、和解せずに判決を求めるという選択もあります。
裁判上の和解では双方の合意によって訴訟を終えるため、判決のように、裁判所がすべての争点について判断を示すとは限りません。
そのため、「何を得られれば、この裁判を終えることができるのか」を考えることも大切です。
裁判上の和解が成立すると、その内容には強い法的効力があります。
合意する前に、少なくとも、
・支払われる総額
・支払期限
・一括払いか分割払いか
・支払いが滞った場合の取扱い
・遅延損害金の扱い
・金銭以外の条項の内容
・今後追加で請求できない内容になっていないか
・どの紛争について最終解決とするのか
などを、弁護士と十分確認することが重要です。
裁判所・司法研修所の教材でも、和解条項を作成する際には、どの紛争を解決する和解なのかを明確にすることの重要性が示されています。 (裁判所)
裁判上の和解は、「加害者を許すこと」ではなく、民事上の紛争を合意によって終了させる法的な手続です。
裁判所から和解を勧められても、納得できなければ判決を求めることができます。
一方で、和解では、賠償額や支払方法だけでなく、双方が合意すれば金銭以外の事項を盛り込める場合があります。
ただし、和解が成立すると、原則としてその内容で紛争は最終的に解決します。
そのため、「何を求めているのか」「どの条件なら裁判を終えることができるのか」を整理したうえで、和解するかどうかを判断することが大切です。
■ 裁判所・司法研修所「民事弁護実務の基礎~はじめての和解条項~」
裁判上の和解や、和解条項の作成・内容について説明されています。
裁判所「はじめての和解条項」
■ 法務省「訴訟上の和解」
裁判上の和解の意味、民事訴訟法89条・267条、和解の効力やメリットについて説明されています。
法務省「訴訟上の和解」
■ e-Gov法令検索「民事訴訟法」
第89条に和解の試み、第267条に和解調書の効力が定められています。
e-Gov法令検索「民事訴訟法」
確認日:2026年9月5日