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民事裁判では、ご遺族側が原告となり、事故について自分たちの主張を裁判所に示すことができます。
交通死亡事故では、損害賠償額だけでなく、
・事故がどのように起きたのか
・速度や運転状況はどうだったのか
・過失はどのように考えるべきか
・事故後にどのような行動があったのか
・どの証拠をどのように評価すべきか
などが争点になる場合があります。
民事裁判では、こうした事実について主張し、その根拠となる証拠を提出して、裁判所の判断を求めることができます。
刑事裁判では、検察官が起訴した事実を中心に審理が行われます。
一方、民事裁判では、ご遺族側が原告として、
「この事実を裁判所に判断してもらいたい」
「この証拠も見てもらいたい」
という事項を、弁護士と相談しながら主張することができます。
刑事裁判で十分に扱われなかった事情がある場合でも、それが民事上の責任や損害と関係するのであれば、民事裁判の中で主張・立証を検討できる場合があります。
ただし、民事裁判は刑事裁判をやり直したり、刑罰を変更したりするための手続ではありません。
事故の内容や争点によって、例えば次のような資料が重要になることがあります。
・実況見分調書などの刑事記録
・事故現場の写真
・防犯カメラ映像
・ドライブレコーダー映像
・車両の写真や資料
・診療記録
・救急・消防関係の記録
・鑑定書や専門家の意見書
・目撃者の供述
・事故に関するその他の客観的資料
裁判所は、争点が明らかになると、書証、証人尋問、当事者尋問などの証拠調べを行います。 (裁判所)
刑事事件の記録は、後の民事裁判で重要な証拠となることがあります。
法務省は、被害者やご遺族について、公判記録の閲覧・謄写を原則として認める仕組みを案内しています。
また、不起訴事件の記録は原則非公開ですが、民事訴訟などで損害賠償請求権その他の権利を行使するため、実況見分調書などの客観的証拠が必要と認められる場合には、一定の条件のもとで閲覧・謄写が認められることがあります。 (法務省白書)
刑事記録の取得方法は、事件の処分状況や記録の種類によって異なります。
詳しくは、このサイトの「真実を知るために」のページも参考にしてください。
民事裁判では、自分たちがすでに持っている証拠を提出するだけではありません。
必要な資料を相手方、第三者、官公署などが保有している場合には、内容に応じて、
・文書提出命令
・文書送付嘱託
・調査嘱託
などの手続を利用できる場合があります。
例えば、一定の要件を満たす文書について裁判所に提出を命じてもらったり、文書の所持者に送付を求めてもらったり、官公署などへ必要な調査を依頼してもらったりする方法があります。
ただし、申し立てれば必ず資料を取得できるわけではありません。文書の種類、必要性、法律上の要件などによって判断されます。
民事訴訟法226条は、文書の所持者に文書の送付を嘱託するよう申し立てる制度を定めています。 (e-Gov 法令検索)
刑事判決や刑事事件の記録は、民事裁判でも重要な資料になります。
しかし、刑事裁判と民事裁判は別の手続です。
刑事裁判で認定された事実が、そのまま民事裁判を法的に拘束するわけではありません。
裁判所の判例でも、そのことが示されています。 (裁判所)
そのため、民事裁判では、そこで提出された主張や証拠をもとに事実が判断されます。
刑事裁判で認定された内容が重要な資料になる一方で、新たな証拠や主張が提出された結果、民事裁判で異なる判断がされる場合もあります。
したがって、「刑事裁判で十分に認定されなかったから、民事裁判でももう主張できない」とは限りません。
ただし、民事裁判で必ず異なる認定がされるという意味でもありません。
事故を目撃した人などの証言が必要な場合には、「証人尋問」を申し出ることができます。
例えば、
・事故を目撃した人
・事故前後の状況を知っている人
などについて、証言が必要になる場合があります。
誰を尋問したいのか、その人の証言によって何を証明したいのかを示して申し出ます。
ただし、申し出た証人が必ず採用されるわけではありません。尋問が必要かどうかは裁判所が判断します。
民事裁判には「当事者尋問」という証拠調べがあります。
加害者本人が被告となっている場合などには、
・事故当時、何を見ていたのか
・どのような運転をしていたのか
・事故前後にどのような行動を取ったのか
などについて、本人から説明を求める必要があるとして、当事者尋問を申し出ることができます。
裁判所が必要と判断して採用すれば、加害者本人が質問を受けることになります。
ただし、
「申し出れば必ず加害者本人を尋問できる」
という制度ではありません。
証拠調べの必要性は裁判所が判断します。裁判所も、民事訴訟の証拠調べとして証人尋問・当事者尋問が行われることを案内しています。 (裁判所)
民事裁判で、刑事裁判では十分に扱われなかった事実について主張し、その事実が認められたとしても、それだけで損害賠償額が必ず増えるわけではありません。
例えば、被害者側に過失がない場合には、もともと過失相殺による減額がないため、悪質な運転が認められたことだけで、さらに一定割合が上乗せされる仕組みではありません。
一方で、事故態様や事故後の行動の悪質性が、慰謝料を判断する事情として考慮される場合があります。
また、事故後の行為によって被害が拡大したこととの因果関係が認められる場合には、その行為自体による損害が問題となることもあります。
つまり、「事実を明らかにすること」と「賠償額が増えること」は、必ずしも同じではありません。それでも、事実について裁判所の判断を求めること自体に意味を感じるご遺族もいます。
一定の重大犯罪については、「損害賠償命令制度」を利用できる場合があります。
この制度では、刑事裁判で有罪判決が言い渡された後、刑事裁判の訴訟記録を証拠として利用し、損害賠償について審理します。
原則として4回以内の審理期日で審理を終える仕組みです。
決定に異議が申し立てられると通常の民事訴訟へ移りますが、その場合でも、審理に必要な刑事裁判の記録が民事裁判所へ送付されます。 (法務省)
ただし、すべての交通死亡事故で利用できるわけではありません。
法務省によると、損害賠償命令制度の対象には、故意の犯罪行為により人を死傷させた罪や危険運転致死傷など一定の犯罪が含まれますが、被害者参加制度とは対象範囲が異なります。 (法務省)
利用できるかどうかは、刑事事件の罪名を確認したうえで、弁護士や裁判所に確認してください。
民事裁判では、ご遺族側から事実を主張し、証拠を提出し、尋問を申し出ることができます。
しかし、
・提出した証拠が必ず採用される
・希望する証人を必ず尋問できる
・加害者本人を必ず尋問できる
・主張した事実が必ず認定される
というわけではありません。
最終的にどの証拠を取り調べ、どの事実を認定するかは裁判所が判断します。
そのため、「何を明らかにしたいのか」「そのために、どの証拠が必要なのか」を整理しておくことが重要です。
民事裁判では、ご遺族側から、
事実を主張する
↓
証拠を提出する
↓
手元にない証拠を求める手続を検討する
↓
必要な尋問を申し出る
↓
裁判所に事実と民事上の責任について判断を求める
ことができます。
ただし、事実が認定されることと、損害賠償額が増えることは別の問題です。
「賠償額を求めること」と「事故について事実を明らかにしたいこと」の両方を整理して、民事裁判で何を求めるのかを弁護士に伝えることが大切です。
■ 裁判所「民事訴訟」
主張・証拠の提出、争点整理、証人尋問・当事者尋問などについて説明されています。
裁判所「民事訴訟」
■ 法務省「犯罪白書―記録の閲覧・謄写」
公判記録や不起訴事件記録について、犯罪被害者等が閲覧・謄写できる場合を説明しています。
法務省「令和7年版犯罪白書・記録の閲覧・謄写」
■ e-Gov法令検索「民事訴訟法」
調査嘱託、文書提出命令、文書送付嘱託などの根拠となる法律です。
e-Gov法令検索「民事訴訟法」
■ 法務省「公判段階での被害者支援―損害賠償命令制度」
刑事裁判の記録を利用して損害賠償を審理する制度について説明されています。
法務省「損害賠償命令制度」
■ 法務省「被害者等支援制度の対象罪名一覧」
被害者参加制度と損害賠償命令制度について、それぞれの対象犯罪が確認できます。
法務省「被害者等支援制度の対象罪名一覧」
確認日:2026年9月5日