全6編でこの作品はおしまいです。ここでは私がこの作品を作るに当たって、思っていた事などを書いていこうと思います。
もちろんこの作品を作るに当たった事の発端はコロナウイルスのパンデミックです。
日本にウィルスが上陸してしまった頃は、今までになく死を身近に感じた人も多くいる事でしょう。今だって医療従事者・保健所の方々には負担が増していくばかりの日々です。
外出自粛をしている頃、私は就職活動に向けてか、はたまた就職活動から目を逸らすためか、日々アートブック作品を作っていました。なるべく抜け殻にならないように、常に頭の隅に小さい目標を立てて、マイペースに生活していました。そうして出来るだけ楽しく暮らせるように勤めても、コロナ禍の生活は人の心を落ち込ませます。対面で話す事が減った事によって人々の社会的な繋がりはほとんどSNSに集約されました。しかしそうなる事によって、人々の心が同じ方を向いて、大きな津波のように何かに流れぶつかるような瞬間を多々目前として、恐ろしく感じられました。そしてその波の中に、あるいはぶつかる先に、自分もいるのではないかと。逃げ出すきっかけはそれにありました。運転していると、それ以外の事をぼんやりとしか考えないでいられるのが好きなのです。
コロナ禍をテーマとした作品を今作る事に意義があると思う学生はたくさんいますし、時代を切り取るような素晴らしい作品がたくさん生まれました。出来るだけピンチをチャンスに、という事を私たちの教授も仰っていましたし、私もそういう言葉を心に添えて制作に臨みました。
こんな書き方をするのはよくない事かもしれませんが、美術が病気を治す事や感染リスクを下げる能力はありません。美術で物理的に人の命を救う事はできません。
でも、人間の原動力は心です。心が低く落ち込んでしまう事が何よりも人の行動力を制限する。どんな生活を送る人達にも抱えられる気持ちの限界はあるのです。このような毎日の中で、明るい気持ちで暮らせる事が何よりも生命維持に繋がる事だと強く感じました。
そんな訳で、新しい価値観の提示のような事を考えるのは一旦はやめにしました。ただの一大学院生が自分の機嫌を取る様を、心の赴くままに、いかに愉快にかっこよく発表するか。それが私が今の状況に合わせて、のびのびと制作できる名目だと思い至りました。強いてこの作品で何を伝えたかったかと明文化するならば、逃げるは恥じゃないし役に立つし楽しいと言う事でしょうか。この絵日記のような、エッセイのような作品で、ドライブに行くような、違う景色を見るような、誰かの気分転換の手助けになればと思います。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
山越真衣