検索結果を信じるな!自分で考えよう

最近(2023年)、SNSで、カビの生えないパンに対して、危険な保存剤が入っているのではないかとの噂が流れました。信じた人もいたかもしれません。しかし、生物学の実験をした人なら、もう少し深く考えてほしいと思います。

某先生のコメント「安心してください。生えてますよ。」 包装を破ればカビは生えます。

包装したパンの場合、カビの胞子が付着しても育たないのか、そもそもカビの胞子がない清浄な状態なのか、両方の可能性が考えられます。袋を破ったらカビが生えたのなら、カビの生えなかった原因は胞子が付着していなかったこと、パンには殺菌作用の強い薬剤は入っていないことが考えられます。


どのようなことを学んでほしいか

生命科学を学んだみなさんは、世の中の出来事を科学的に判断できる人間になってほしいと思います。影響力のある人の言うことをそのまま信じるのではなく、客観的な証拠に基づいて自分で判断できる人です。そして、その判断力で家族や友人を助けてほしいです。コロナ禍の初期、私のいた研究所は感染者が出て、大変なことになりました。様々な情報が飛び交い、みんな不安に駆られていました。このとき、私のいた研究室の教授は、最新の英語論文を読み、適切に隔離を行い、マスコミやネット情報に踊らされることなく常に客観的な判断をしていました。もしも同じような危機に遭遇したときは、私も同じように研究室メンバーを守ろうと思っています。

2011年の東日本大震災、2020年から2023年のコロナ禍、ともに様々な噂が流れました。今後も大きな災害が起これば、同じように憶測や噂が流れることでしょう。SNSの発言やホームーページの中には、証拠不足の主張や偏った主張がしばしば見受けられます。検索で表示されるAIの答えも、これらの主張に影響を受けます。検索結果をただ信じるのでなく、証拠不足や偏りを見抜く力を身につけてください。

ふだんの学生実験で、行った実験はどのような仮説を検証するものかを考えることや、結果の解釈で「仮説以外の可能性はないだろうか?」と考えることから、見抜く力は身につきます。また、生物や化学の基礎知識も大切だと思います。

科学的知識をもとにした判断力を身につけて卒業することを願っています。