最後は,新進気鋭の若手研究者,山仲 芳和 助教との共同研究です.その第1報が,次の論文誌に掲載されました.
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0248470 ※著名なオンラインジャーナルです.オープンなので無料で読めます.
この研究は,既存技術の応用ではなく,次世代AIの核となる新技術を,独自のアイデアで構築したものです.
AIは,膨大な状況証拠から,未知の法則を学習するのが得意です.
例えば,街のある地点から,別の地点まで,裏道を含めて無数のルートがあったとして,交通状況などを考慮しながら,どのルートが一番早いか? そんな問題に答えるのが得意です.
その際に,無くてはならないのが「最適化アルゴリズム」です.
最適化アルゴリズムとは,関数の最小値(または最大値)を見つける技法のことです.1変数関数や2変数関数なら簡単ですが,10000変数関数だったらどうでしょう.AIを作る際には,このような超多変数関数の最小値(または最大値)を求めるアルゴリズムが必要になります.
まじめに解説すると,相当マニアックなので,とりあえず動画だけ見てもらいます.
この図の背景は,ある地形(2変数関数)の等高線を表しています.この地形には,5つの谷が存在します.
パラパラ激しく動く青い点は,谷を見つける粒子(虫みたいなもの)の群れを表しています.
ゆっくり動く赤い点は,群れが,谷かも知れない,と思っている場所です.
時間が経つにつれ,赤い点が,本当の谷に近づいていく様子が分かります.
我々のアルゴリズムは,5つの谷を同時に見つけます(もっと多くても大丈夫).従来の方法では,1つずつしか見つけられませんでした.
そのために,我々は,天体力学の原理を応用しました.(いわゆるスイングバイの効果を応用しました)
最適化アルゴリズムの研究者は,計算機分野の人が多いので,まさか,天体力学が役に立つとは思っていなかったことでしょう.
自分は機械分野だから,計算機科学ネタには手を出さないとか,そんなことはお構いなしに,これからも思いつくまま前進していきたいと思います!
実は,ニューラルネットワークについても,力学の観点を入れると,色々と思いつくことがあります.乞うご期待!
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