2023年度から〈横浜国立大学のキャンパス内部、あるいは横浜国立大学から最寄駅の相鉄和田町駅あるいは羽沢横浜国大駅まで、で、サウンドウォークを行う〉プロジェクトを始めようと思い立ちました。その後、しばしば、授業課題の一環として学生にサウンドウォーク作品を制作体験記録報告してもらっています。学部学生の制作物で個人情報などが漏れることもあるので、それぞれを詳細に紹介することはできませんが、概要を報告しておきます。
(2025年度以降こそは、ちゃんと事前に学生に公開許可を得ておくようにします。)
サウンドウォークとは、簡単に言えば、音と耳に注意を向けながら行う散歩です。環境音に耳を傾けるのに慣れた人がガイドとして何人かの人を引率して行うタイプのサウンドウォークが、しばしば行われます。しかし、そのようなある種の玄人が必要なサウンドウォークではなく、素人でも気軽に行えるサウンドウォークを、マニュアル化してどこでも誰でも簡単に実施できるようにしたい。そのように考えました。
サウンドウォークの実践において玄人(≒環境音に耳を傾けるのに慣れた人)がしばしば必要なのは、その方が、環境音の面白さに注意を向けるきっかけを得やすいからだと思います。そこで、環境音の面白さに注意を向けるきっかけを準備することで、素人でも気軽に簡単にサウンドウォークできるような仕組みをマニュアル化してみよう、ということを思い立ちました。
その際に参考にしたのは、Janet Cardiffのサウンドウォーク作品《Her Long Black Hair》です。この作品を単純化して、つまり、ある場所を事前に一度散歩し、散歩する際に独り言を言って、その独り言を録音しておく。次にその録音した独り言を聞きながらその場所をもう一度散歩する。その際の聴覚体験について反芻し、文章として記録してもらう、という仕組みです。
こうすることで、事前に散歩した際の記憶、散歩した際に反していた独り言の録音、二度目の散歩時に聞こえてきた音、二度目の散歩時に録音物を聞き直しながら思い出された記憶等々、複数の時間と知覚のレイヤーが複合反応を起こします。その変化を自覚してもらうために、二度目の散歩時の体験を文章として記録する、ということを、学生にはやってもらいました。
→2023年秋学期音響文化演習:「サウンドウォーク」の回のレジュメ、
→課題制作のモデルとして、中川が制作してみたサウンドウォーク作品の事例:音声(5mb程度)、地図(右図参照)
→2023年秋学期音響文化演習の学生たちの「サウンドウォーク」作品を体験した際の中川のメモ(下に埋め込んだPDFを参照してください)(何かの参考として)
→2024年度国際交流科目でも「Making and Experiencing Soundwalk」というワークショップを行いました(1118, 1209)