第89回 4月18日(土)(大阪公立大学杉本キャンパス理学部棟数学大講究室 (E408))
Axis-symmetric multi-point blow-up in a two-dimensional Keller--Segel system with a bipolar source-sink flow
本講演では,走化性現象を記述する Keller--Segel 方程式系に,時間に依存しない速度場による移流効果を加えたモデルに対し,爆発解の特異構造を考察する.ここで扱う速度場は,source-sink 型(双極型)の定常速度場である.このとき,両座標軸に関する対称性をもち,全質量が $16\pi$ を超え,さらに適切な幾何学的条件を満たす初期値に対して,有限時間で多点爆発を起こす解が存在することを示す.より具体的には,爆発時刻において原点は爆発点とならず,爆発点集合は偶数個の点からなり,両座標軸に関して対称に配置されることを示す.この結果は,古典的な球対称解において爆発点が原点に限られる場合と対照的である.
証明の主要な道具は,解の局所質量評価と $\varepsilon$-regularity theorem である.初期凝集の中心を原点から十分離して配置することにより,原点近傍における解の局所質量が十分小さいことを示し,さらに $\varepsilon$-regularity theorem を適用することで,原点近傍で解が有界に保たれることを導く.なお,本講演は杉山由恵氏(大阪大学),関行宏氏(東京都立大学)との共同研究に基づく.
六角格子上の離散シュレディンガー方程式に対する分散型評価
六角格子上の離散シュレディンガー方程式はグラフェン上の電子を強束縛近似で記述するモデル方程式として知られている.本講演ではポテンシャルがない場合の自由発展における$L^1 \to L^\infty$評価を各運動量について局所的に得られ,最も遅い時間減衰$|t|^{-2/3}$のオーダーであることを示す.証明は運動量空間における振動積分で得られるが,位相関数が特異になるディラック点は Varchenko の定理のような一般論が適用できないため初等的な積分計算によって評価する.本講演は Younghun Hong 氏 (Chung-Ang University), Changhun Yang 氏 (Chungbuk National University)との共同研究に基づく.