2021

第62回 1月29 日(土)(zoom)

14:00-15:00

森竜樹氏(武蔵野大学工学部)

フェーズフィールドモデルの定常問題の解の大域的分岐構造


フェーズフィールドモデルの定常問題の大域的解構造について考える.フェーズフィールドモデルは純物質の凝固のモデルとして知られており,Fix(1983),Caginalp(1986)により数値的および数学的な研究が始められた.定常問題は全エンタルピー保存則などから,積分制約条件がついたAllen-Cahn-Nagumo型の方程式に帰着される.これまで,この定常問題に関しては,Elliott-Zheng(1990),および,Suzuki-Tasaki(2009)によって特殊な状況下での,解の存在・非存在についての部分的な結果が得られている.しかしながら,すべての解の大域的構造については全く研究がなされていなかった.本講演では,すべての定常解の大域的構造の概要について報告する.なお,本講演は田崎 創平(北海道大学),辻川 亨(宮崎大学),四ツ谷晶二(龍谷大学)との共同研究に基づくものである.


15:15-16:15

松澤寛氏(神奈川大学理学部)

A nonlinear Stefan problem with a multi-stable type nonlinearity in high space dimensions


空間高次元における反応拡散方程式のStefan問題を考える.非線形項がロジスティック型で空間1次元の場合,この問題は外来生物の侵入現象のモデルとしてDu-Lin(2010)により提唱された.本講演では正の安定平衡点を2つもつpositive bistable型とよばれる非線形項を考える.空間次元が1の場合はKawai-Yamada(2016)は生物種の侵入の成功を表すspreadingについて,それぞれの安定平衡点に対応する2種類のspreading(small spreading と big spreading)が示され,Kaneko-Matsuzawa-Yamada(2020)で解の詳細な形状が調べられた。


本研究では上記のKawai-Yamada(2016)およびKaneko-Matsuzawa-Yamada(2020)の結果を空間高次元の場合に拡張することを考える.具体的には3つについて結果を得た.


(I) 球対称解の場合の解の漸近挙動の分類定理

(II) 球対称の場合にもspreadingが起こるとき,ある条件下ではpropagating terraceとよばれる形状の解が現れること

(III) 対称性を仮定しない場合の漸近挙動の分類定理


時間の都合上,講演では(I), (III)に焦点を絞り報告する.時間が許せば(II)についても触れたい.本講演は兼子裕大氏(日本女子大学),山田義雄名誉教授(早稲田大学)との共同研究に基づく.

第61回 12月11 日(土)(zoom)

14:00-15:00

福田一貴氏(信州大学工学部 )

非整数階分散項を伴う Burgers 方程式の解の漸近挙動


本講演では, 非整数階の分散項を伴う Burgers 方程式の初期値問題の解の漸近挙動について考える. Burgers 方程式においては, 初期値が空間遠方で減衰する場合, 解は対応する自 己相似解である散逸波に漸近することが知られているが, KdV-Burgers 方程式などの分散項付きの方程式の場合には, 分散効果が解の挙動に影響を与え, 散逸波への漸近率や高次漸 近形が変化することなどが知られている. 本研究では, 非整数階の分散項を付与した場合, その分散項の指数の変化に応じて, 解の漸近挙動がどう変化するかに着目して解析を行った. 具体的には, 分散項の指数に応じた散逸波への漸近率と, それに対応する新しい解の第 2 次漸近形を得ることに成功した. また, より高次の漸近形に関する考察も行い, 分散項の 指数がちょうど KdV-Burgers 方程式と Benjamin-Ono-Burgers 方程式の中間になる場合を境にして, 解の第3次漸近形以降に分岐が生じることも明らかにしたので, それらの結果を紹介する. なお, 本講演は板坂健太氏との共同研究に基づく.

15:15-16:15

梅津健一郎氏(茨城大学教育学部

Uniqueness of a positive solution for the Laplace equation with indefinite superlinear boundary conditions: near a critical case

本講演では,滑らかな境界をもつ多次元有界領域において,indefinite superlinear タイプの非線形境界条件のもとで Laplace 方程式を考える.この非線形境界条件は population genetics に由来する.indefinite superlinear タイプの非線形問題は正値解の多重性が期待されるところであるが,境界条件に内包する indefinite weight が臨界条件「に近い」状況のとき,正値解の一意性が成り立つことを証明する.

まず,境界値問題に対する Nehari manifold 上で,付随するfibering map を援用して,変分法を展開し正値解の存在を示す.そして,固有値解析により,このとき得られる不安定正値解に陰関数定理が適用できる条件を考える.正値解に対する線形化固有値問題の最小固有値が負である場合に,第二固有値が正である条件を求めて正値解の一意性を導く.1次元における結果との比較も行う予定である.

第60回 11月27 日(土)(zoom)

14:00-15:00

山本宏子氏(東京大学大学院数理科学研究科

半線型波動方程式に対する反応拡散近似

反応拡散近似は,ある方程式の解を多成分の反応拡散系の解を用いて近似する手法であり,これまで,交差拡散系や退化放物型方程式などの非線型拡散問題で用いられてきた.近似に用いる反応拡散系は拡散が線型であることから,数値計算のコストが低いなどの利点があって,応用上も非常に重要である.本講演では,反応拡散系とは性質の異なる半線型波動方程式,及び消散型半線型波動方程式に対する反応拡散近似について紹介する.なお,本研究の一部は,明治大学の二宮広和氏との共同研究に基づくものである.


15:15-16:15

下條昌彦氏 (東京都立大学理学部

Spreading and extinction of solutions to the logarithmic diffusion equation with a logistic reaction

放物型方程式の解が波動のように空間中を伝わる現象は,たとえば単安定な反応項をもつ半線形放物型方程式に見ることができる.また,対数拡散方程式は2次元リッチ流,プラズマ拡散現象,ボルツマン方程式のカーレマンモデルに対する特異極限から得られる.本講演では単安定な反応項をもつ対数拡散方程式を直線上で考える.この方程式の解は,拡散項の特異性が反応項より相対的に弱いとき,空間内を波のように広がる.逆に拡散項の方が相対的に強いと,解は有限時間で消滅する.そして,拡散項と反応項が釣り合うとき,フロントやパルスの時空パターンが生み出される.我々は遠方で指数減衰する正値解の振る舞いを完全分類し,それらの解の漸近挙動を論ずる.


第591016 日(土)(zoom)

14:00-15:00

菊池弘明氏(津田塾大学学芸学部

Construction of bifurcation branch from line solitons for nonlinear Schrodinger equations on product space ℝ × 𝕋

直積空間 ℝ × 𝕋 上の非線形シュレディンガー方程式に関連する楕円型方程式を考える。この方程式には、"ラインソリトン"と呼ばれる明示的にかける解が存在する。ここでは、このラインソリトンから分岐する解を構成する。このことは、べき型非線形項の指数をpとすると, p が2以上ならば、すでにYamazaki(2015)により分かっている。ここでは、p>1においても同様のことが示せることを話していたい。この講演は、赤堀公史氏 (静岡大学)、Yakine Bahri氏 (ビクトリア大), Slim Ibrahim氏 (ビクトリア大)との共同研究に基づく。

15:15-16:15

和田健志氏 (島根大学総合理工学研究科

臨界非線形 Schrodinger 方程式の適切性について

非線形 Schrödinger 方程式の局所適切性に関しては,1970年代終わり頃から様々な結果が得られており,ほぼ完成の域にあると考えられている。一般に方程式がスケール不変性を持つ場合はスケール変換から決まる臨界的な関数空間で適切性を論ずることが重要な問題であり,冪乗型の非線形 Schrödinger 方程式については基本的には Cazenave-Weissler (1990) により肯定的に解決されている。しかしながら非線形項の滑らかさが低い場合にはそこから来る制約のため適切性の問題が未解決となっている場合がある。本講演ではこのような場合の適切性について論じる。


第58回 7月31 日(土)(zoom)

14:00-15:00

谷地村敏明氏(京都大学ASHBi)

二相媒質におけるSerrin型優決定問題について

Serrin型優決定問題とは,Dirichlet境界条件に加えてNeumann境界条件が定数となる過剰決定条件を課したとき,方程式を可解とする領域を決定する問題である.本講演では,介在物を考慮した二相Serrin型優決定問題について考察する.特に介在物が球に近い場合における局所可解性及びKohn--Vogelius汎関数とH^1勾配法を用いた数値アルゴリズムについて説明し,介在物の幾何学的形状が優決定問題の解となる領域にどのような影響を与えるかについて考察する.本講演の内容は,Lorenzo Cavallina氏(東北大学)との共同研究に基づく.

15:15-16:15

出原浩史氏 (宮崎大学工学教育研究部)

交差拡散-競争方程式における時間周期的共存について

競争関係にある2生物種の個体群ダイナミクスを記述する方程式の一つである交差拡散-競争方程式に現れる時間周期的共存について考える.交差拡散-競争方程式はShigesada, Kawasaki, Teramotoによって提唱された相手種を避けるという効果を取り入れた数理モデルであり,この効果のために2つの生物個体群が空間的な棲み分けを実現しうる.本講演では、主に数値計算の観点から交差拡散-競争方程式に現れる時間周期的共存について議論する.さらに最近得られた空間的な棲み分けに関する新たな知見も含めて紹介したい.

第57回 6月26 日(土)(zoom)

14:00-15:00

岡本葵氏 (大阪大学理学部)

微分型非線形Schrödinger方程式系のほとんど最良なSobolev空間における適切性

レーザー・プラズマの相互作用を表すモデルとして Colin-Colin '04 により導出された微分型非線形Schrödinger方程式系の初期値問題の適切性を考える. Hirayama '14, Hirayama-Kinoshita '19 により,初期値問題が適切となる初期 値のSobolev空間の指数は,ラプラシアンの係数が満たす条件により変化するこ とが示されている. しかし,係数の条件によっては,適切性が得られている初期値のSobolev空間の 指数と,逐次近似法が破綻するSobolev空間の指数とに隔たりがあった.本講演では,ラプラシアンの係数の条件に関わらず,逐次近似法を用いる限り, ほとんど最良なSobolev空間において初期値問題の適切性が得られることを述べる.なお,本講演の内容は,平山浩之氏(宮崎大学),木下真也氏(埼玉大学)との 共同研究に基づく.

15:15-16:15

高岡秀夫氏 (神戸大学理学部)

微分型非線形シュレディンガー方程式の解の極限挙動について

空間1次元微分型非線形シュレディンガー方程式の解の極限挙動について考察する.エネルギー空間における時間大域解の存在は,初期値の質量ノルムやモーメントの大きさがソリトン解のそれよりも小さい場合は知られていた.最近,Bahouri-Perelman によって臨界なソボレフ空間においてその制約条件が排除されたが,ここではエネルギー空間に限り初期値の質量ノルムの大きさがソリトン解のそれと同じ場合の考察を紹介する.

第56回 5月15日(土)(zoom)

14:00-15:00

内田俊氏 (大分大学理工学部)

p-ラプラシアンを主要項に持つ二重非線型放物型方程式の可解性について

主要項がp-ラプラシアンであり、時間微分項に多価極大単調グラフを持つ二重非線型放物型方程式について考察する。極大単調グラフがべき乗である場合(Porous medium/fast diffusion型)については非常に多くの先行研究があり、適切性だけでなく解の絶滅現象(extinction)の有無についても精査されている。一方でMiyoshi–Tsutsumi(2016)は一般化Carlemanモデルの特異極限として、対数型の非線型性を持つ放物型方程式(極大単調グラフが指数関数である場合に相当)を導出している。本研究ではこれらの数理モデルを包括的に取扱うことを目標に、極大単調グラフに増大度、強圧性、一価性などの条件を可能な限り課さずに可解性を示すことを目的とした。関連する既存の結果として、Barbu(1979)は2つの非線型項の角度条件に着目し、時間微分項に対する増大度や強圧性の要請を回避したHilbert空間上の抽象論を構成している。これを応用すればpが2以上の場合について解の存在が示されるが、この議論におけるHilbert settingは本質的なものであるため、pが2未満の場合に適用することは困難である。以上を踏まえ本講演では、指数pと時間微分項の多価極大単調グラフに可能な限り仮定を置かずに解の存在を示す。

15:15-16:15

吉川周二氏 (大分大学理工学部)

Structure-preserving finite difference schemes for nonlinear wave equations with dynamic boundary conditions

力学的境界条件の下での非線形波動方程式を考える。ここでの力学的境界条件とは、境界条件それ自体が時間発展する微分方程式となるような境界条件とする。力学的境界条件の下での非線形偏微分方程式に対する研究結果は数多く知られているが、波動方程式のような双曲型方程式に力学的境界条件を付した問題に対する結果は見当たらない。本発表では、まず力学的境界条件の下での非線形波動方程式に対して、エネルギー構造を継承する有限差分スキームを提案する。次に、考察対象を半線形波動方程式に限るが、提案したスキームの解(近似解)の存在と一意性および誤差の評価を紹介する。本研究は若杉勇太氏(広島大学)と梅田晃裕氏(愛媛大学)との共同研究に基づく。

第55回 4月17日(土)(zoom)

14:00-15:00

Norbert Pozar氏(金沢大学理工学域)

Incompressible limit of the porous medium equation with a drift

In this talk I will present results concerning the singular limit of the solutions of the porous medium equation with a drift. Under the assumption that the drift field is “compressive”, we show that, in the incompressible limit, the solutions converge to the solution of a constrained transport equation with no diffusion. The limit solution reaches the constraint in a so-called congested set, which can be characterized by a certain Hele-Shaw type problem. This convergence result establishes the relationship of the diffuse interface models and sharp interface models of crowd motion and tumor growth. This is joint work with Inwon Kim and Brent Woodhouse.

15:15-16:15

砂川秀明氏(大阪市立大学理学部)

Nonlinear Schrödinger equation with weakly dissipative structure

I will give a survey on recent progress on nonlinear Schrödinger equation possessing a kind of weakly dissipative structure. This talk is based on joint works with Chunhua Li, Yoshinori Nishii and Yuji Sagawa.