直積空間 ℝ × 𝕋 上の非線形シュレディンガー方程式に関連する楕円型方程式を考える。この方程式には、"ラインソリトン"と呼ばれる明示的にかける解が存在する。ここでは、このラインソリトンから分岐する解を構成する。このことは、べき型非線形項の指数をpとすると, p が2以上ならば、すでにYamazaki(2015)により分かっている。ここでは、p>1においても同様のことが示せることを話していたい。この講演は、赤堀公史氏 (静岡大学)、Yakine Bahri氏 (ビクトリア大), Slim Ibrahim氏 (ビクトリア大)との共同研究に基づく。
非線形 Schrödinger 方程式の局所適切性に関しては,1970年代終わり頃から様々な結果が得られており,ほぼ完成の域にあると考えられている。一般に方程式がスケール不変性を持つ場合はスケール変換から決まる臨界的な関数空間で適切性を論ずることが重要な問題であり,冪乗型の非線形 Schrödinger 方程式については基本的には Cazenave-Weissler (1990) により肯定的に解決されている。しかしながら非線形項の滑らかさが低い場合にはそこから来る制約のため適切性の問題が未解決となっている場合がある。本講演ではこのような場合の適切性について論じる。
Serrin型優決定問題とは,Dirichlet境界条件に加えてNeumann境界条件が定数となる過剰決定条件を課したとき,方程式を可解とする領域を決定する問題である.本講演では,介在物を考慮した二相Serrin型優決定問題について考察する.特に介在物が球に近い場合における局所可解性及びKohn--Vogelius汎関数とH^1勾配法を用いた数値アルゴリズムについて説明し,介在物の幾何学的形状が優決定問題の解となる領域にどのような影響を与えるかについて考察する.本講演の内容は,Lorenzo Cavallina氏(東北大学)との共同研究に基づく.
競争関係にある2生物種の個体群ダイナミクスを記述する方程式の一つである交差拡散-競争方程式に現れる時間周期的共存について考える.交差拡散-競争方程式はShigesada, Kawasaki, Teramotoによって提唱された相手種を避けるという効果を取り入れた数理モデルであり,この効果のために2つの生物個体群が空間的な棲み分けを実現しうる.本講演では、主に数値計算の観点から交差拡散-競争方程式に現れる時間周期的共存について議論する.さらに最近得られた空間的な棲み分けに関する新たな知見も含めて紹介したい.
レーザー・プラズマの相互作用を表すモデルとして Colin-Colin '04 により導出された微分型非線形Schrödinger方程式系の初期値問題の適切性を考える. Hirayama '14, Hirayama-Kinoshita '19 により,初期値問題が適切となる初期 値のSobolev空間の指数は,ラプラシアンの係数が満たす条件により変化するこ とが示されている. しかし,係数の条件によっては,適切性が得られている初期値のSobolev空間の 指数と,逐次近似法が破綻するSobolev空間の指数とに隔たりがあった.本講演では,ラプラシアンの係数の条件に関わらず,逐次近似法を用いる限り, ほとんど最良なSobolev空間において初期値問題の適切性が得られることを述べる.なお,本講演の内容は,平山浩之氏(宮崎大学),木下真也氏(埼玉大学)との 共同研究に基づく.
空間1次元微分型非線形シュレディンガー方程式の解の極限挙動について考察する.エネルギー空間における時間大域解の存在は,初期値の質量ノルムやモーメントの大きさがソリトン解のそれよりも小さい場合は知られていた.最近,Bahouri-Perelman によって臨界なソボレフ空間においてその制約条件が排除されたが,ここではエネルギー空間に限り初期値の質量ノルムの大きさがソリトン解のそれと同じ場合の考察を紹介する.
主要項がp-ラプラシアンであり、時間微分項に多価極大単調グラフを持つ二重非線型放物型方程式について考察する。極大単調グラフがべき乗である場合(Porous medium/fast diffusion型)については非常に多くの先行研究があり、適切性だけでなく解の絶滅現象(extinction)の有無についても精査されている。一方でMiyoshi–Tsutsumi(2016)は一般化Carlemanモデルの特異極限として、対数型の非線型性を持つ放物型方程式(極大単調グラフが指数関数である場合に相当)を導出している。本研究ではこれらの数理モデルを包括的に取扱うことを目標に、極大単調グラフに増大度、強圧性、一価性などの条件を可能な限り課さずに可解性を示すことを目的とした。関連する既存の結果として、Barbu(1979)は2つの非線型項の角度条件に着目し、時間微分項に対する増大度や強圧性の要請を回避したHilbert空間上の抽象論を構成している。これを応用すればpが2以上の場合について解の存在が示されるが、この議論におけるHilbert settingは本質的なものであるため、pが2未満の場合に適用することは困難である。以上を踏まえ本講演では、指数pと時間微分項の多価極大単調グラフに可能な限り仮定を置かずに解の存在を示す。
力学的境界条件の下での非線形波動方程式を考える。ここでの力学的境界条件とは、境界条件それ自体が時間発展する微分方程式となるような境界条件とする。力学的境界条件の下での非線形偏微分方程式に対する研究結果は数多く知られているが、波動方程式のような双曲型方程式に力学的境界条件を付した問題に対する結果は見当たらない。本発表では、まず力学的境界条件の下での非線形波動方程式に対して、エネルギー構造を継承する有限差分スキームを提案する。次に、考察対象を半線形波動方程式に限るが、提案したスキームの解(近似解)の存在と一意性および誤差の評価を紹介する。本研究は若杉勇太氏(広島大学)と梅田晃裕氏(愛媛大学)との共同研究に基づく。
In this talk I will present results concerning the singular limit of the solutions of the porous medium equation with a drift. Under the assumption that the drift field is “compressive”, we show that, in the incompressible limit, the solutions converge to the solution of a constrained transport equation with no diffusion. The limit solution reaches the constraint in a so-called congested set, which can be characterized by a certain Hele-Shaw type problem. This convergence result establishes the relationship of the diffuse interface models and sharp interface models of crowd motion and tumor growth. This is joint work with Inwon Kim and Brent Woodhouse.
I will give a survey on recent progress on nonlinear Schrödinger equation possessing a kind of weakly dissipative structure. This talk is based on joint works with Chunhua Li, Yoshinori Nishii and Yuji Sagawa.