2023

第74回  2月17日(土)(大阪公立大学杉本キャンパス理学部棟数学大講究室 (E408))

15:00-16:00 

佐藤 拓也 氏 (熊本大学)

非線形消散型シュレディンガー方程式に対する解析的な解の長時間挙動


非線形消散効果を持つ非線形シュレディンガー方程式を考える。消散性により解の質量は時間について単調に減少するが、ここでは質量が減衰するような特別な非線形次数のもと、解析的なクラスに属する解の長時間挙動を導く。方程式の対称性に基づく擬等角変換も用いることで、先行研究で得られていた上からの質量減衰評価が解析的なクラスの上では最適であることを示す。


16:15-17:15 

谷口 晃一 氏 (東北大学)

Besov空間上の合成作用素の有界性の特徴付け


本講演では, 1次元ユークリッド空間上のBesov空間において合成作用素の有界性を考える. Besov空間の微分可能性の指数 s < 1 の場合は, 合成作用素の有界性の問題はよく研究されており, Bourdaud-Sickel (1999) などの先行研究によって有界性が成立するための必要十分条件が示されている. 一方, s > 1 の場合は未解決であった. 本講演では, s > 1 + 1/p (p は可積分性の指数) の場合において, 合成作用素が有界になるための必要十分条件を与える.

本講演は池田正弘氏 (理化学研究所/慶應義塾大学) および石川勲氏 (愛媛大学/理化学研究所) との共同研究に基づく.

第73回  11月25日(土)

15:00-16:00 

高坂 良史 氏 (神戸大学)

Canham-Helfrich汎関数の勾配流に対する閾値型近似アルゴリズムについて


Canham-Helfrich汎関数の最小化問題は,生体膜の形状解析に用いられる数理モデルの1つである.自発曲率の値が0で曲面の位相変化がないとき,Canham-Helfrich汎関数の最小化問題はWillmore汎関数の最小化問題と同値である.本講演では,Canham-Helfrich汎関数の勾配流として表される4階幾何学的発展方程式の閾値型近似アルゴリズムを紹介する.このアルゴリズムは特性関数を初期値とする4階線形放物型偏微分方程式の解を利用して構成される.本研究は,石井克幸氏(神戸大),榊原航也氏(金沢大)、三宅庸仁氏(東京大)との共同研究に基づく.


16:15-17:15 

高棹 圭介 氏 (京都大学)

フェイズフィールドモデルを用いた体積保存平均曲率流の弱解の存在について


体積保存平均曲率流の弱解を考える。体積保存条件を課さない通常の平均曲率流については、レベルセット法やフェイズフィールド法、Brakkeの方法等を用いて弱解の存在証明が得られている。体積保存平均曲率流についてもフェイズフィールド法を中心とした解析が90年代から行われており、弱解の存在についてはTakasao(2017,2023)のフェイズフィールド法による証明やKim-Kwon(2020)の粘性解理論による証明が得られており、近年解析が進んできている。本講演ではこの問題に適切なフェイズフィールドモデルを導出し、その特異極限がintegral varifoldと呼ばれるラドン測度の族でありかつ$L^2$-flowと呼ばれる弱解であることを示す。

第72回  10月28日(土)

15:00-16:00 

細野 竜也 氏 (東北大学)

誘引反発型走化性方程式の 4 次元における解の時間大域存在について


ある細胞が化学誘引物質あるいは化学忌避物質に反応し別の位置に移動する現象を数理モデル化した誘引反発型走化性方程式における初期値問題を考察する. 走化性方程式の解の時間大域挙動の研究では, 特に 2 次元空間に於いては, 質量臨界現象と呼ばれる解の挙動が大きく変わる初期質量の閾値 8π がよく知られている. 本発表では, 4 次元空間での質量臨界現象に着目し,初期質量が (8π)^2 未満ならば解が時間大域的に存在する結果を紹介する. 本題を示すにあたり, ある 4 階楕円型方程式の解に対する Brezis–Merle 型不等式と対称減少再配置を用いた不等式を導出することで問題の解に対するアプリオリ評価が得られることについて述べる. なお本発表内容は, 小川卓克教授 (東北大学) との共同研究に基づく.


16:15-17:15 

和久井 洋司 氏 (福井大学)

あるKeller-Segel系の有界な前方自己相似解の存在性とその大域的挙動


本発表では、あるKeller-Segel系の初期値問題の有界な前方自己相似解の存在性とその大域的挙動について考察する。本発表で考えるKeller-Segel系において、空間2次元の問題はいわゆる質量臨界な問題となり、初期値の総質量質量の値が解の挙動の分類において重要な役割を果たすが、高次元の場合は総質量のみで解の時間大域挙動を制御することは困難でありかつ自己相似解の存在は質量保存則の成立する枠組みでは期待できない。本発表では、ある移流拡散方程式の有界な自己相似解の存在及び自己相似解の形状関数の次元に応じた挙動について考察する。

第71回  6月24日(土)

15:00-16:00 

北川潤氏 (ミシガン州立大学)

凸領域の境界上での最適輸送について


最適輸送(モンジュ・カントロビッチ)問題では、コスト関数および輸送される測度に関するいくつかの条件下で写像による解(モンジュ解)が与えられることが知られている。ただし、コスト関数がユークリッド距離の2乗を凸領域の境界へ制限したものである場合、Gangbo-McCannによって輸送される測度が非常に良い性質をもつ場合でもモンジュ解ではなく、カップリング(カントロビッチ解)で与えられる場合があることを証明した。本講演では$C^1$領域の境界上で輸送される測度同士の総輸送コストが十分小さい場合はモンジュ解が存在することを紹介する。また、領域が一様凸であっても$C^1$でない場合は反例があり、ある意味sharpな結果であると言える。本研究内容は Seonghyeon Jeong(National Center for Theoretical Sciences, Taiwan)との共同研究に基づく。


16:15-17:15 

吉冨和志氏 (東京都立大学)

Fredholmness of pseudo-differential operators with non-regular symbols 


We establish the Fredholmness of a pseudo-differential operator whose symbol is of class $C^{0,\sigma}$, $0<\sigma<1$, in the spatial variable. Our work here refines the work of Abels and Pfeuffer [Math. Nachr. 293 (2020), 822-846]. 

第70回  4月22日(土)

15:00-16:00 

勝呂剛志氏 (大阪公立大学)

対数型 Sobolev の不等式の1パラメータ拡張と不確定性関係への応用


対数型 Sobolev の不等式とは, ある情報量有界の条件下における確率密度函数の Boltzmann--Shannon エントロピーの最適化問題から得られる函数不等式である. ここでは, Boltzmann--Shannon エントロピーのある拡張から得られる対数型 Sobolev の不等式の1パラメータ拡張を考察する. さらに, 確率密度函数のモーメント有界の下で成り立つ Shannon の不等式との不確定性関係を通したある種の双対性について着目し, 応用として得られた不確定性関係の拡張について述べる.



16:15-17:15 

濱本直樹氏 (大阪公立大学 )

制約条件付きベクトル場に対するHardy型関数不等式及び不確定性原理不等式の最良性について


本講演では, Euclid空間上のベクトル場に対するL2関数不等式について考察する. ここでの制約条件とは, 主に渦無しもしくはソレノイダル(湧出無し)のような流体力学的な条件を指すものとし, そのようなベクトル場をテスト関数としたHardy型不等式及びHeisenbergの不確定性原理不等式を扱う. 制約条件を何も課さない場合については, これらの不等式の最良定数が既に知られているが, 制約条件を課した場合に最良定数値の変更が発生するのか, もしそうだとすれば新しい最良定数はどのような値になるのかを問題にする. さらに, どのような形の関数が最良値を達成するのか, 達成されない場合はどのような形の補正項が追加可能になるのかが問題となる. こういった問題への取り組みについて, 発端となった先行研究及び近年得られた結果を紹介する. 本講演内容は, 高橋太教授(大阪公立大学)との共同研究結果を含む. また, 本研究は科研費(課題番号:22KJ2604, 22K13943)の助成を受けている.