2022

第69回  1月13日(金)        

16:30-17:30 

Vitaly Moroz (Swansea University, UK)

Limit profiles for a class of Choquard equations


We discuss the asymptotic behaviour of groundstates for a class of singularly perturbed Choquard type equations with a local repulsion term. We identify seven different asymptotic regimes and provide a characterization of the limit profiles of the groundstates when perturbation parameter is small. We also outline the behaviour of

groundstates when perturbation is strong. In some of the regimes the limit profile is given by a compactly supported discontinuous minimizer of a Thomas-Fermi type variational problem. This is joint work with Zeng Liu (Suzhou, China) and Damiano Greco (Swansea).


第68回  12月10日(土)(zoom)        

14:00-15:00 

岩崎悟氏 (大阪大学大学院情報科学研究科)

メトリックグラフ上の偏微分方程式の初期状態決定問題とパターン形成問題


メトリックグラフ上の偏微分方程式とは,複数の開区間上の偏微分方程式と境界点における状態変数の接続関係を与えたシステムであり,ネットワーク構造物内部の状態変数の解析に用いられている.

本講演の前半では,メトリックグラフ上の熱拡散方程式に関する初期状態決定問題に関する研究結果を紹介する.具体的には,メトリックグラフ上に存在する複数の観測点上の観測時系列データから初期状態を一意に決定できるための必要十分条件について紹介する.さらにメトリックグラフの構造が与えられたときに,初期状態を一意に決定できるために必要な観測点の最小個数およびその配置を,メトリックグラフから定まる行列の固有値・固有ベクトルから決定可能であることを紹介する.また本講演の後半では,メトリックグラフ上の Allen-Cahn 方程式の安定なパターン定常解の構造に関する研究について,現時点までに考察ができていることを紹介する.



15:15-16:15 

小林俊介氏 (宮崎大学工学教育研究部 )

薄い固体上の燃焼現象に対する数理解析とその応用へ向けて


本研究で着目するのは,紙などの薄い固体上を時間とともに円形に燃え拡がる燃焼現象である.これまで円形燃え拡がり現象の数理モデルとして,ある界面方程式が提案されており,数値スキームの提案や数値シミュレーション結果が報告されている.しかし,解の定性的性質に関する研究はなされていなかった.本講演では,界面方程式の厳密解である拡大円周解に着目し,拡大円周解近傍における摂動の時間発展方程式の導出,ならびに分岐解析・数値解析による結果を報告する.得られる時間発展方程式は,謂わば拡大円周上における Kuramoto—Sivashinsky 方程式であり,界面方程式の解の定性的性質を良く捉えていることを数値的にも観測することができる.時間が許せば,本研究の一つの応用として最近試みている蛇腹折り形状を有する紙の燃焼現象についても触れたい.

なお,本研究内容は,矢崎成俊氏(明治大学),桑名一徳氏(東京理科大学)との共同研究に基づく.

第67回  11月19日(土)(zoom)        

14:00-15:00 

佐川侑司氏 (千葉工業大学)

Upper and lower $L^2$-decay bounds for a class of derivative nonlinear Schr\"odinger equations


空間1次元で3次の微分型非線形項を伴うシュレディンガー方程式の初期値問題を考察する。特に、微分型非線形項が弱い消散構造を持つ場合について考察する。Li-Nishii-Sagawa-Sunagawa(2021)による先行研究では、解のL^2減衰評価が得られた。しかし先行研究で得られたL^2減衰評価には「余分な+δ」があり、評価が最適なのかどうか不明であった。本講演では、先行研究で用いられた手法とは異なる手法を用いることで、解のL^2減衰評価における「余分な+δ」を排除できることを示す。さらに初期値のフーリエ変換がある条件を満たす場合にL^2減衰評価が最適であることを示す。本講演は李春花氏(延辺大学)、西井良徳氏(東京理科大学)、砂川秀明氏(大阪公立大学)との共同研究に基づく。



15:15-16:15 

前田昌也氏 (千葉大学)

Asymptotic stability analysis via positive commutator method


空間一次元における非線形分散型方程式のソリトン解の漸近安定性について考察する。低次の非線形項を持つ場合についてvirial評価からソリトンの局所漸近安定性を導く方法について解説を行う。本講演の内容はS.Cuccagna氏(トリエステ大学),S.Scrobogna氏(トリエステ大学)との共同研究に基づく.

第66回  10月22日(土)(中百舌鳥キャンパス サイエンスホール)        

14:30-15:30 

岡部考宏氏(大阪大学大学院基礎工学研究科)

ナビエ・ストークス方程式の解の外力による制御について


本講演では、全空間上の非圧縮ナビエ・ストークス方程式の解の時間大域挙動について考察をする。解のエネルギー減衰について、Fujigaki-Miyakawa(2001)により、解の線形部分及び非線形項それぞれの漸近展開がなされ、一次の主要項が導出されている。従って、これらの主要項の制御が、速い減衰を得るために必要である。しかし、特に非線形項の制御においては、解の時間空間における全ての情報が必要であることが、Miyakawa-Schonbek(2001)により明らかにされ、その制御は一般に困難である。そこで、非線形項の減衰制御に関して、Brandolese氏との共同研究において、外力の作用により非線形項の一次漸近形の影響を打消し、速い減衰の導出に成功している。本講演では、これについての最近の進展について紹介する。本講演は、Lorenzo Brandolese氏(Lyon 第一大)との共同研究に基づくものである。


15:45-16:45 

西慧氏(京都産業大学理学部)

3種反応拡散方程式でみられるパルス解の分岐構造と集団ダイナミクスについて


パルス解やスポット解のように空間的に局在化した解は、多くの散逸系に現れる普遍的なパターンである。そのような局在化パターンが現れる系として,近年 FitzHugh-Nagumo 型の非線形項をもつ 3成分反応拡散方程式の解析が進められており、これまで v.Heijster-Doelman-Kaper (2008, 2009), Teramoto-v.Heijster (2021), Suzuki-Nishiura (2022) らにより定常解や進行解の存在や安定性が明らかにされている。一方、脈動解をはじめ、より複雑な時空間ダイナミクスも数値的に確認されているが、その解構造については不明な点が多い。本講演ではパルスの運動を記述する有限次元 ODE を導出・解析することで得られた結果や2成分系との違いについて報告する。また、この系では、あるパラメータ領域で複数個のパルス解が連結しクラスターを形成する様子も見られる。講演の後半では、そのダイナミクスと解析結果についても紹介する。なお、本研究は西浦廉政氏 (北海道大学) との共同研究に一部基づく。

第65回  6月25日(土)(zoom)        

14:00-15:00 

筒井容平氏(京都大学大学院理学研究科)

Medians, rearrangements and their maximal functions


この講演では, Euclid 空間上の函数に対する median (中央値) を考える. この median は, 積分平均と同じようなある種の平均と考えられるが, 一意に決まらないという欠点がある. 本講演では, median と 2種類の (非増大な) rearrangments の関係を説明し, median 全体の集合がこれらの rearrangement を用いて記述できることを紹介する. その後, これらを用いた Hardy-Littlewood の極大函数の有界性についても触れる.


15:15-16:15 

中村誠氏(大阪大学大学院情報科学研究科)

Existence and non-existence of global solutions for the Klein-Gordon equation in the de Sitter spacetime


The existence of global solutions for small rough initial data is considered for the Klein-Gordon equation in the de Sitter spacetime based on the mechanism of the spontaneous symmetry breaking for the small positive Hubble constant. The effects of the spatial expansion and contraction on the problem are considered.

第64回  5月28日(土)(zoom)        

14:00-15:00 

物部治徳氏(大阪公立大学理学部)

Spatial segregation of multiple species and fast reaction limit


個体群動態を記述する代表的な数理モデルとして、Lotka-Volterraモデルがある。近年、三村-山田-四ツ谷(1986)、Du-Lin(2010)らによって有限伝播性を持つ個体群動態の数理モデル(Fisher-Stefanモデル)が提唱され、様々な条件下で解析が行われている。一方で、Fisher-Stefanモデルはその方程式においてなぜStefan条件を適用しているか(つまり、なぜ生息域の先端で常に個体群が死滅する条件を課しているのか)、そのモデルに十分な解釈が与えられてないようにもみえる。そこで、ここではLotka-Volterraモデルを基本のモデルとした上で、急速反応極限法を用いて、Fisher-StefanモデルがLotka-Volterraモデルの特殊な場合に対応するという、別の見方を与える。また、3種以上の場合は、極限問題としてどのような多相の自由境界問題が現れるのかについて紹介する。本研究は、出原浩史氏(宮崎大学)とChang-Hong Wu氏(NCTU)との共同研究に基づく。


15:15-16:15 

石渡哲哉氏(芝浦工業大学システム理工学部)

遅延微分方程式の解の爆発について


本講演では、微分方程式の解の爆発という観点から時間遅れの効果についてこの数年研究している内容について紹介する。時間遅れとしては、現在時刻から一定時間前の解の状態を参照する定数遅延や、過去のある区間上の分布が参照される分布遅延など様々なタイプがある。講演の前半では、定数遅延の場合を考え、1次元問題および2次元問題について、特に時間遅れのないODE(系)との比較を軸に考察した結果について紹介する。講演の後半では、分布型の遅れをもつ1次元の遅延微分方程式についての結果を紹介する。なお、本研究は主に中田行彦氏(青山学院大学)との共同研究に基づく。

第63回  4月23日(土)(zoom)        

14:00-15:00 

上田好寛氏(神戸大学大学院海事科学研究科)

緩和項をもつ対称双曲型方程式系の消散構造の特徴付けについて


本講演では,緩和項をもつ対称双曲型方程式系の消散構造についてお話しします.緩和項部分の係数行列がある種の対称性をもつ場合には,静田-川島(1985)によって詳細な消散構造の特徴付けがなされており,安定性条件とよばれる代数的条件によってその安定性の判別がなされることが示されています.しかし,Timoshenko方程式系やEuler-Maxwell方程式系などの場合には,対応する緩和項の係数行列が対称性をもたず一般論を適用することができません.また直接計算により,これら対称性を持たない物理モデルに対して可微分性の損失とよばれる新たな消散構造も見つかってきました.

これらの事実より緩和項の非対称性によって複雑な消散構造が作り出されることが示唆されており,既存の安定性条件を拡張することで,その消散構造をいかに解明するかについて考察します.またさらに,拡張された安定性条件を用いることで、これまでに知られていなかった消散構造についても紹介します.


15:15-16:15 

梶木屋龍治氏(大阪電気通信大学数理科学教育研究センター)

Bifurcation of nodal solutions for the Moore-Nehari differential equation


次のMoore-Nehari 方程式を考察する.

(1)   u'' +h(x,λ)|u|^(p-1)u=0  (-1<x<1),     u(-1)=u(1)=0.

ここで p>1, h(x,λ):=0 (|x|<λ), h(x,λ):=1 (λ ≦ |x| ≦ 1)であり, 0 < λ < 1 はパラメータである. 非負整数 n に対して, 解が区間 (-1,1) にちょうど n 個の零点を持つときに, n-nodal solution という. 偶関数解と奇関数解を総称して, symmetric solution (対称解) という. 各 0 < λ < 1 と n に対して, 方程式(1)は, ただ一つの n-nodal symmetric solution (λ,u_n(x,λ)) をもつ. これは, (0,1) × C^1[-1,1] の中の連続曲線になる. 次のことを証明する.  n が奇数ならば, この曲線は, 分岐しない.  n が偶数ならばこの曲線は分岐して,  n-nodal 非対称解が現れる.