私たちが国際協力する理由――人道と国益の向こう側
キーワード:キャリア
本書は、国際協力が「誰のために、どのように行われるべきか」という根源的な問いに対し、異なる立場から国際協力に携わってきた著者たちが多角的な示唆を与えてくれる。国際協力と国益が密接に関係していることが明らかにされ、その目的や手法の背後にある国益の存在が、協力の方向性を大きく左右している点が指摘されている。こうした構造を理解する中で、国際協力の動機や在り方は、携わる人の価値観や志向に強く依存しているのだと気づかされた。国際協力に関心を持つ一学生として、自分は何を目的に、どのような立場で携わっていくべきなのかを問い直す機会となった。将来、どのようなアクターとして国際協力に携わるべきかを模索する人にとって、本書は確かな道標となるはずだ。
近藤紗奈(総合人間科学部教育学科)
【書誌情報】紀谷昌彦・山形辰史, 2019, 『私たちが国際協力する理由――人道と国益の向こう側』日本評論社.
〔新版〕国際協力論を学ぶ人のために
本書は、国際協力の仕組みや課題をわかりやすく解説した一冊である。国際協力という言葉が当たり前に飛び交うようになった時代は喜ばしい一方で、その全体像は曖昧なものになっている。この状況で「国際協力とは何か」という問いに対し、各章では筆者それぞれの考察が展開され、そのあり方を捉えられるようになっている。また旧版からの改訂により、SDGs採択など国際情勢の変化を踏まえ、近年の動向が反映されている点も特徴的だ。従来の開発援助の枠組みにとどまらず、環境問題や紛争など幅広いテーマを扱っており、多角的な視点が提供されている。初めて国際協力について学ぶ人にもわかりやすく、すでに学んだ人にとっても国際協力の目的を再考するきっかけになるだろう。
寺田佑香(文学部新聞学科)
【書誌情報】内海成治, 2016, 『〔新版〕国際協力論を学ぶ人のために』世界思想社.
アフリカ経済開発論
キーワード:経済開発, サブサハラアフリカ
上智ソフィア(ソフィア学科)
【書誌情報】高橋基樹・福西隆弘・山崎泉・井手上和代・松原加奈編, 2025, 『アフリカ経済開発論』ミネルヴァ書房.
参加型開発と国際協力――変わるのはわたしたち
キーワード:参加型開発
【書誌情報】ロバート・チェンバース, 2000, 『参加型開発と国際協力――変わるのはわたしたち』野田直人/白鳥清志監訳, 明石書店.
SDGs時代の国際教育開発学
キーワード:教育
【書誌情報】ダニエル・A・ワグナー, 2020, 『SDGs時代の国際教育開発学』前田美子訳, 法律文化社.
「途上国」から問う教育のかたち
キーワード:教育
「学校の外」での人々の生活にも着目して教育を見つめているので、「日々の生活の中での教育の立ち位置」がよく分かる。第一章では、ケニア・キベラスラムの教師の日常を深く理解し、注目を浴びることの少ない教師の努力・子どもたちへの理解の深さ・ボランティア的特性が、質の高い教育を支える根幹であるということを伝えている。このような「共感と理解」を軸にした教育が、理想形なのかもしれないと感じる。同じくケニアをフィールドとした第八章では、家族・友人・パートナーとの関係性が高等教育への移行に影響を与えているということを、五名の女子学生との丁寧な関係性の構築によって明らかにしている。フィールドの声を「聴く」ことによって得られるものの大きさが、よく分かる一冊である。
飯田芽生(総合グローバル学部総合グローバル学科)
【書誌情報】小川未空・杉田映理・澤村信英編, 2025, 『「途上国」から問う教育のかたち』左右社.
国際協力ってなんだろう――現場に生きる開発経済学
キーワード:開発経済学
興味はあっても漠然としたイメージしか持てなかった国際協力について、実際の事例や経済学的な問題に触れながら具体的に知ることができる一冊。ジェンダー・障害による格差、教育、環境問題、法制度、保健ファイナンス・システムなど、開発経済学に関する幅広いテーマが取り上げられており、自身の学びにおいて、今後理解を深めたい分野を検討するきっかけとなる。最終章では、筆者らのグローバリゼーションに対する立場が述べられており、ナショナリズムや価値観の同一化を不安視する声がある一方で、国境を越えた人・もの・金の移動と交流を絶やさぬことが世界全体の発展には必要である、ということが示唆されている。
渡辺万葉(経済学部経済学科)
【書誌情報】高橋和志・山形辰史編, 2010, 『国際協力ってなんだろう――現場に生きる開発経済学』岩波書店.
入門 開発経済学――グローバルな貧困削減と途上国が起こすイノベーション
キーワード:開発経済学
【書誌情報】山形辰史, 2023, 『入門 開発経済学――グローバルな貧困削減と途上国が起こすイノベーション』中央公論新社.
ストーリーで学ぶ開発経済学――途上国の暮らしを考える
キーワード:開発経済学
【書誌情報】黒崎卓・栗田匡相, 2016, 『ストーリーで学ぶ開発経済学――途上国の暮らしを考える』有斐閣.
国際協力――その新しい潮流(第3版)
キーワード:国際協力
現代で求められている国際協力とは何だろうか。過去、一方的な資金援助という形で行われていた国際協力は現在、人間開発や福祉の概念を通じ、経済的側面にとどまらない多面的なものへと変化した。本書では、援助の有効性の見直しや国際環境の変化、さらに非援助国のオーナーシップとガバナンスの重要性を踏まえ、現代に求められる国際協力が考察されている。また、中国のアフリカ対外援助をはじめとする、新たな協力モデルや多様化するアクターの登場が紹介され、今後の日本の役割を考えるうえで、示唆に富んでいる。本書は、これからの国際協力のあり方を考え、多様化し複雑化した国際協力の全体像を整理するための必読書である。
川村優歩(総合グローバル学部総合グローバル学科)
【書誌情報】下村恭民・辻󠄀一人 ・稲田十一 ・深川由起子, 2022, 『国際協力――その新しい潮流(第3版)』有斐閣選書.