SEED-Netが紡ぐアセアンと日本の連帯
キーワード:教育
本書は、長年実施されてきた、東南アジアにおける工業系人材育成ネットワークであるSEED-Netが構築されていく過程や公式文書には現れないストーリーが凝縮されている。日本の国際協力が繰り広げる長期的かつ壮大なプログラムが、現場でどのように機能し、影響をもたらしていくのか、現場実践者だからこその視点で描かれている一冊だ。中でも、第二章に登場したSEED-Netの参加学生の言葉が印象的だ。彼女はこのプログラムに参加した理由を、「東南アジアが好きだから。なぜなら、この地域はカラフルだから。」と表現した。宗教も言語も様々で、それぞれ違った色を持つ東南アジアの国々のネットワークだからこそ生み出す調和は、日本の国際協力によってまさに一枚の色鮮やかな布となり、共生の象徴として織りなされていくものだと考える。
平田紫音(総合人間科学部教育学科)
【書誌情報】小西伸幸・梅宮直樹, 2023, 『SEED-Netが紡ぐアセアンと日本の連帯』佐伯コミュニケーションズ.
日本型開発協力――途上国支援はなぜ必要なのか
この本では、これまでの日本の開発協力事例を踏まえ、中国やインドをはじめとした新興国の途上国支援の拡大と自国利益や国際利益の観点から、日本型開発協力のこれからのあり方を論じている。日本は開国したての途上国の状態から、世界の大国に上り詰めた過去を持つ。加えて、災害対策支援、経済インフラ、制度設計における日本の高い技術は多くの発展途上国から大きな信頼を得ている。権威主義と民主主義の体制間競争や、先進国内で起こる「支援疲れ」で、国際支援の意義や自国益重視論が問われる中、途上国支援における日本の役割は非常に重要である。日本の持つこれらのアドバンテージを生かし、日本がいかにして「信頼大国」となるか、多くの国が注目している。
大石将(経済学部経済学科)
【書誌情報】松本勝男, 2023, 『日本型開発協力――途上国支援はなぜ必要なのか』筑摩書房.
国際協力ってなんだ?――つながりを創るJICA職員の仕事
国際協力と聞いたとき、遠い途上国で何か「してあげる」ことを想像し、今の自分とは縁のない話だと考える人も多いだろう。本書はそんな固定観念を捨てさせ、日本にいる我々にも国際協力に関わることができると気づかせてくれる。国際協力機構(JICA)の行う途上国支援には、専門家の現地への派遣や人材育成のために研修の企画など多岐にわたる。各章でいろいろな方法がとられるが、それら全てに共通するのは「つながり」を広げていくという考え方だ。本書は我々に、「つながり」をつくり世界を少しでも良くしていくJICA職員の仕事の重要性や尊さを教えてくれるだけでなく、「自分にも何かできるかもしれない」という、国際協力について考えるきっかけを与えてくれる一冊である。グローバル化が進む今だからこそ、多くの人に読んでほしいと思える一冊だ。
鈴見亮咲(経済学部経済学科)
【書誌情報】大河原誠也編, 2025,『国際協力ってなんだ?――つながりを創るJICA職員の仕事』筑摩書房.