国際緊急人道支援のキャリアと仕事ーー人の命と生活を守るために
キーワード:キャリア
本書は、国際緊急人道支援の現場経験やキャリア形成について、著者自身の視点から赤裸々に語られた一冊である。単なる理論解説ではなく、実際の現場で直面する課題や支援活動のリアルな側面が描かれており、緊急支援の本質や意義について深く考えさせられる内容となっている。特に、国際緊急人道支援に関心があるものの、具体的なキャリアの選択肢が分からない人にとって、大いに参考になる。現地調査や危機対応などの具体的な仕事内容や求められるスキルについても詳しく述べられている。章ごとに異なる体験談が紹介され、多様な視点から語られるため、読みやすく、国際人道支援に携わることの意義や難しさがリアルに伝わってくる。緊急人道支援に興味がある人だけでなく、将来的に国際協力の分野で働きたいと考えている人にとっても、キャリアのヒントとなる一冊だと感じた。
馬渕空(総合人間科学部教育学科)
【書誌情報】小松太郎編, 2020, 『国際緊急人道支援のキャリアと仕事――人の命と生活を守るために』国際開発ジャーナル社.
人道的交渉の現場から――国境なき医師団の葛藤と選択
キーワード:保健医療
タイトルの通り、国境なき医師団の葛藤と選択の難しさを強く実感した。MSFの理念の実践には、政治との関係を切り離すことができない。日々情勢が変化していく中で、中立として決断を下したことの見え方が変化してしまうこともある。ゆえにMSFの支援は単に現場へ飛び込むだけでは成立せず、権力者との綿密な交渉や常に自らの立場を見定めることが不可欠である。そして時に、権力者の意向次第で、市民への医療が制限されることも多々ある。本書は、時代によって捉え方が変化していく人道支援における現場の葛藤と紛争の現実を医療支援の視点から捉えることができる一冊である。
島村七彩(総合人間科学部看護学科)
【書誌情報】クレール・マゴン/ミカエル・ノイマン/ファブリス・ワイズマン編, 2012, 『人道的交渉の現場から――国境なき医師団の葛藤と選択』株式会社リングァ・ギルド他訳, 小学館スクウェア.