「排泄の自然誌を編む研究会」は、ヒトを含む生きものの排泄行動と排泄されたものに関する研究会です。
第4回研究会のテーマは、「流す/残る」という対照的な二つの視点から排泄にアプローチします。基調講演には法政大学の湯澤規子氏が、長野県上高地の公衆トイレを事例に、自然公園における排泄物処理の現代史から「流すもの」としての排泄を紐解きます。一方、特別講演では千葉大学の泉賢太郎氏より、ベントスの糞化石から太古の生物の摂食戦略やその変遷を解き明かす研究をご紹介いただき、「残るもの」としての排泄が持つ学術的価値について語っていただきます。
総合討論では、北海道大学の山内太郎氏と信州大学の松本卓也も加わり、現代社会の衛生管理から数億年前の生命の痕跡まで、時間と空間を超えた「排泄物のゆくえと価値」について議論します。参加者の方からの積極的なご意見もお待ちしております。
開催日時:2026年1月30日(金)13:30〜
開催形態:会場とオンラインのハイブリッド形式
【会場】信州大学松本キャンパス 理学部C棟 第13講義室(当日参加可)
【オンライン配信】Zoom(要申込み*、先着200名)
参加費:無料
*オンライン配信のお申し込み方法:
以下のURL(Google フォーム)より必要事項を入力し、送信してください。
https://forms.gle/4vAf9TXm5jscSJoX9
オンライン配信をお申込みいただいた方には、お申込みの直後にシステムよりzoomのURLをメールにてお送りします。自動返信メールのため「迷惑メールフォルダ」に振り分けられる場合がありますので、恐れ入りますがご確認ください。
お申込みいただいたのにメールが届かない場合は、お手数ですが下記までご連絡ください。
evo.anthropol.shinshu@gmail.com
13:30〜 趣旨説明 松本 卓也(信州大学理学部)
13:40〜 基調講演 湯澤 規子(法政大学人間環境学部)
「自然公園におけるトイレの現代史―長野県松本市上高地の公衆トイレを事例として」
14:50〜 特別講演 泉 賢太郎(千葉大学教育学部)
「堆積物食ベントスの糞化石から探る摂食戦略およびその時間変化」
16:00〜 総合討論 山内 太郎(北海道大学大学院保健科学研究院)、松本 卓也(信州大学理学部)
演者のお二人とともに、ご発表内容を受けてのパネルディスカッションを行います。
「自然公園におけるトイレの現代史―長野県松本市上高地の公衆トイレを事例として」 湯澤 規子(法政大学人間環境学部)
自然公園(国立公園、国定公園および都道府県立自然公園)の風景および動植物の保護のために自然公園の管理・運営に関する「公園計画」が定められている。その内「施設計画」に含まれる「公衆便所」は実際にはどのように整備され、管理・運営されているのだろうか。自然公園の中でもとりわけ山岳地域ではトイレをめぐる様々な課題があり、国や地方自治体だけでなく民間の山小屋や自然保護団体、し尿処理関連業者などによる取り組みが展開している。本研究では日本における山岳観光地の一つである長野県松本市上高地を事例として,公衆トイレの設置状況および下水処理施設についての現地調査にもとづき、自然公園におけるトイレの現状と課題、その歴史を明らかにする。
「堆積物食ベントスの糞化石から探る摂食戦略およびその時間変化」泉 賢太郎(千葉大学教育学部)
古生物が排泄した糞の一部は生痕化石として地層中に保存される。糞化石を観察することで摂食様式に関する情報を抽出することができる。発表者は、主に海底に生息する堆積物食ベントスの糞化石を対象にこれまで研究を進めてきた。具体的なアプローチとしては、フィールドワーク・化石の観察や分析・数理モデルを軸としている。発表では、複数の異なる種類の糞化石が同所的に産出する地層に注目し、それぞれの糞化石の「排泄主」の堆積物食ベントスの摂食様式について考察する。さらに、地質学的な時間スケールにおいて堆積物食ベントスの糞化石(およびそこに記録されている摂食様式)がどのように変化してきたかについても考察する。また、自身の研究内容に加えて、糞化石の研究の課題や今後の方向性についてもアイデアを共有させていただき、パネルディスカッションにつなげていきたい。
evo.anthropol.shinshu@gmail.com(信州大学理学部生物学コース進化人類学分野)