第9回 中国編悠さん②China
昆劇&ポピュラー音楽
松永悠
2021.8.9(月祝)19:00~
昆劇&ポピュラー音楽
松永悠
2021.8.9(月祝)19:00~
はじめに:
悠さんによる中国編の第2回目です。
内容は、1) 昆曲の世界に魅せられた坂東玉三郎 2) C-POPの中のJ-POP 3) 漢詩の世界 です。
講師:松永悠さん
北京市生まれ。大学で日本語を専攻。日系企業に就職し、そこで出会った日本人の男性と結婚、24歳で日本へ。現在48歳、人生の半分が北京、半分が日本。3人の子の母。仕事は医療通訳と医療通訳養成学校講師。新たに海産物輸入ビジネスも始める。
昆曲とは
昆曲とは、明の時代(16世紀)江蘇省崑山で誕生、演劇の世界3大ルーツのひとつと言われ、600年以上もの歴史をもつ、中国の古典的な舞台演劇です。2009年世界無形文化遺産に登録されました。笛を主伴奏とする優美で繊細な曲調を特徴とし、後に生まれる京劇や川劇などに多大な影響を与えたことから「百戯之祖」(あらゆる芝居の祖)と称される。2009年世界無形文化遺産に登録される。
👉「牡丹亭」
「牡丹亭」は「還魂記」とも言い、中国の明代の著名な劇作家、湯顕祖(とうけんそ)の代表作。1598年頃。昆劇最高傑作。原作は全55幕、10日かかる。
玉三郎はそのうち物語性の高い場面を選定、6場面3幕構成にした。
登場人物は、 杜麗娘(ドゥ―・リーニャン) 柳夢梅(リュー・モンメイ)など。
牡丹亭あらすじ/杜麗娘が庭園で遊び疲れて休んでいると夢の中で書生の柳夢梅と出あう。夢の中でお互い好きになり結ばれる。その後杜麗娘は恋煩いで病気になる。彼女は自画像を描き、小間使いに命じその絵を定演のなかの石の下に埋めさせ、ほどなく死ぬ。3年後この庭園の中に宿をかりた柳夢梅は彼女の自画像を見つける。心を込めた呼びかけに、二人は冥界で密会する。柳夢梅は杜麗娘の言う通り、墓を掘り彼女を復活され二人は一家をなす
👉 玉三郎と牡丹亭
2008年北京、蘇州、上海公演、2010年東京公演
玉三郎は京劇の女形、梅蘭芳(めいらんふぁん)のルーツをたどるうち、この昆劇に行き当たった。杜麗娘(とれいじょう)は、夢の神につれられて現れた若者、柳夢梅(りゅうむばい)への思いを募らせて生きては死に、死んでは生き返り、という内容。玉三郎は蘇州語のセリフを3年かけて覚えた。「歌いこんで歌い続けることで表現がよくなるのが昆劇」という。雪のなかで命果てる舞踊「鷺娘」や歌舞伎のような筋立ての飛躍、怪談「牡丹燈籠」にも通じる内容。昆劇は、日本の能や歌舞伎と同じころに生まれている。
以下玉三郎のことば。
「若いころから、中国の文化、文学、演劇に憧れておりました。私が幼い頃に亡くなられた梅蘭芳さんと私の祖父、父が交流があり、祖父は1923年彼女といっしょに舞台に立った。それから中国京劇と深い縁をもちました。
色々な日本の文化、演劇のルーツを知るためにシルクロードのことを考えて、結局中国を渡って考えることになるんですね。そのうち梅蘭芳さんは昆劇を勉強した方だということが分かったんです。それで昆劇の「牡丹亭」を勉強したいと思うようになりました。」
玉三郎は昆曲指導者の中国語の発音の録音を聞き、徹底的に学んだ。中国文化の理解のため、「論語」「孟子」「荘子」「老子」も読んだ。毎日北京に国際電話をかけて「牡丹亭」の歌詞の意味を確かめ、最終的に、劇中のあらゆる人物が歌う歌詞の意味もはっきりと理解した。多くの中国の若い役者でも自分が歌う歌詞さえ完全にはわからないという。
東京公演の舞台挨拶の日には、島根県松江市より牡丹の大鉢が2鉢寄贈された。島根県は日本一の牡丹の産地。
•https://www.youtube.com/watch?v=0EDwbcHwOGE 予告編
1,399 回視聴 2009/05/11 アジアの至宝、坂東玉三郎が中国・蘇州に渡り見事に演じた昆劇、「牡丹亭」。
•https://www.youtube.com/watch?v=EeA_hBjbKcs&t=78s 本編(日本語字幕付き) 約44分
主演:《遊園》杜麗娘,表演者_董飛(男旦)
《驚夢》杜麗娘,表演者__坂東玉三郎(男旦__日本)
柳夢梅,表演者__俞玖林(小生)
春香,表演者__朱璎媛(旦角)
杜母,表演者__陈玲玲(旦角)
夢神,表演者__無名氏(老生)
日中間の音楽交流
1980年代~2000年代 日本から中国への一方通行だった 徳永英明、安全地帯、中島みゆき、ZARDなど
今、交流は2方向へ 宮崎駿アニメの日本語カバー 般若心境のラップなど
https://www.youtube.com/watch?v=j2lSqs370iI 中国語カバー曲 👉翻唱日本的25首华人金典歌曲!
https://www.youtube.com/watch?v=k56tOTuU-A0 千と千尋 👉周深 Zhou Shen (Charlie) 【いつも何度でも (永远同在)】
https://www.youtube.com/watch?v=hkVOjwydtMU 日本語カバー曲 👉《生僻字》日文版《四字熟語》-好聽跪超魔性念經
https://www.youtube.com/watch?v=BkLfOEyEW6U 中国語バージョン般若心経 👉歌う僧侶 薬師寺寛邦キッサコ
漢詩の世界
〇西周~春秋時代 BC12世紀~BC6世紀 詩経 孔子編集 四言詩
〇漢(文学)BC3世紀~3世紀
〇唐(詩)7~10世紀 五言(絶句・律詩) 七言(絶句・律詩)
〇宋(詞)10~13世紀 「如夢令」「水調歌頭」
〇元(曲)13~14世紀 歌舞、音曲、演技が一体となった舞台芸術である雑劇。
〇明 14~17世紀 昆曲→京劇 朗読→歌→演劇
〇西周~春秋時代 BC12世紀~BC6世紀
詩経 四言詩
關關雎鳩 在河之洲
窈宨淑女 君子好逑
(読み下し文)
關關(かんかん)たる雎鳩(しょきゅう)は 河之洲(かわのす)に在り
窈宨(ようちょう)たる淑女は 君子の好逑(こうきゅう)
(意味) ミサゴが ツガイで鳴いている 河の中州にたたずんで あの娘あでやか 花嫁候補
〇漢 BC3~3世紀 〇唐 7~10世紀
https://www.youtube.com/watch?v=j-r2bXXMT9I 春暁
👉中国人がガチで漢文を読むとこうなる!【漢詩 春暁】中国語朗読漢文|孟浩然『春暁(春眠暁を覚えず』
http://chugokugo-script.net/kanshi/ 漢詩の紹介
👉ここでは漢詩の歴史・ルール・形式・有名な漢詩・有名な作者などについて紹介しています。
〇宋(詞)10世紀~13世紀
「詞」とは歌謡の一種で、旋律に合わせて歌うために作られたもの。蘇軾の時代この形式の「詞」が大いに流行。
詞調に合わせて作られ詞調ごとに形式が決められており、例えば「憶江南」では、、句の字数が3.5.7.7.5、押韻が2.4.5句目 と決められている。歌うために作られたといっていい。
蘇軾(1037~1101)
中秋の名月を歌った詞「水調歌頭」(1074)
明月幾時有 明月幾時よりか有る
把酒問青天 酒を把って青天に問ふ
不知天上宮闕 知らず天上の宮闕
今夕是何年 今夕は是何れの年ぞ
我欲乘風歸去 我風に乘って歸り去らんと欲す
又恐瓊樓玉宇 又恐る瓊樓の玉宇
高處不勝寒 高き處寒さに勝へざらんことを
起舞弄清影 起舞して清影を弄ぶ
何似在人間 何ぞ似たる人間に在るに
(意味)
明月よ、いつから空にかかっているのか、盃を手にしながらこう青天に問う、天井の宮殿では、今宵は何年の中秋にあたるのだろうか
自分も風に乗って天上の世界に行ってみたいが、月宮殿は高いところにあるから、寒くてかなわんだろう、せいぜい地上の舞を楽しもう、やはり人の世の方が居心地がよい
(続きの日本語訳)
朱色の高殿をめぐり、綾ぎぬの帳をかすめ、眠らぬ人を照らしている。別に恨みのあろうはずもないのに、何故別れの時に限って満月になるのだ。
人には悲歡離合があり、月には陰晴圓缺がある。古からこのことを完全な形に保つのは難しい。ただ人がとこしえに、千里の距離を離れていても、この月の輝きを共に明ことを願うのみだ。
全ての動画の再生リンク:👉本日紹介された動画がこちらからすべて見ることができます。
https://www.youtube.com/playlist?list=PL3m9Gng-kqzTdzBgbmPdEwaC5WSwPk6gu
視聴者から:中国ポップスで、ジブリの歌を歌う歌手が日本語も上手できれいな声でした。玉三郎が中国の昆劇を演じたということは初めて知りました。興味もって聞きました。漢詩は、やはり中国では、日本人が学校で習うよりもっと専門的に習うのだなと感じました。