第13回ドイツ編④Germany
聴いたことあるドイツの歌
石井由美子
2021.10.31(日)16:00~
聴いたことあるドイツの歌
石井由美子
2021.10.31(日)16:00~
(写真はドイツ在清水英恵さん提供)
はじめに:
音楽を中心にひとつの国をとりあげて、その国のネイティブのかた、その国に滞在歴ある方や紹介したいことがある方をお迎えして、みなさまと楽しい時間を共有する「世界音楽の旅」。「ドイツリートへの招待」という本格的講義の合間に、ドイツの比較的ポピュラーな歌をとりあげてみたいと思います。
<本日取り上げる曲 >
(1)「歌の翼に」詩集「歌の本」(1827) ハイネ25~26歳 メンデルスゾーンが曲をつけたのは24歳の頃、若いふたりの作った曲。
(2)「ローレライ」(詩 ハイネ 曲 ジルヒャー )
(3)「ムシデン(別れ)」シュヴァーベン地方の民謡 世界的に有名。
(4)「すみれの花咲く頃」1928年 ドイツの流行歌→パリレビュー劇場でフランス語歌詞に。それをヨーロッパ滞在中の白井鐵造が見て帰国後 宝塚歌劇で使った。
(5)「小さな喫茶店で」1928年 日本でも、1935年(昭和10年)瀬沼喜久雄の訳詞によるレコード発売。中野忠晴が歌い流行した。
(6)「リリーマルレーン」第二次世界大戦から生まれたもっとも有名な「戦時の歌」
その他、名訳詞者、「近藤朔風」についてのお話もしたいと思います。
歌の当時の映像や、美しいライン川などの映像も、お楽しみください。
「リリーマルレーン」は、最後にドイツ語で一緒に歌ってみたいと思います。
石井由美子:
「世界音楽の旅つくば発」発起人管理人。上智大学卒。趣味はピアノ、合唱。
ブラームスやメンデルスゾーンの生まれたドイツの都市「ハンブルク」の正式名称は「自由ハンザ都市ハンブルク」。
「ハンス」は日本人の「太郎」にあたる名前。「ハンス」の複数形が「ハンザ」仲間→同盟、となった。
ドイツの歌には「憧れ」という言葉が多く出てきます。「歌の翼に」の中では遠いインドの情景への憧れが歌われます。はるかな地への憧れ、女性への憧れ、春への憧れなどです。
ライン川の景色を見ながらペーターシュライアーの歌を聴く
近藤朔風さんのなんと素晴らしい名訳でしょう。ドイツ語の直訳と朔風訳とを見比べてみて下さい。
ドイツ語のRuhe(憩い)を朔風は「幸」と訳しています。Ruhe(憩い)という言葉もドイツの詩によく見られます。ドイツ人にとって特別な単語のように感じます。
ドイツ語で「小さいバラ、小さいバラ、小さいバラ、赤い」という歌詞を、「紅におう」と訳しています。簡潔で美しい日本語、リズムも軽快です。
「ムシデン」はシュヴァーベン地方の方言で書かれています。「美しき水車小屋の娘」「冬の旅」などは、職人の修業中と思われる歌。「さすらう」ということばもドイツの歌ではキーワード。マイスター制度の伝統と関係あるのかもしれません。
技術だけでなく、弟子を教育できる指導力、経営能力も必要。試験に合格すればどの国の人も「マイスター」になれるようです。
宝塚の歌、シャンソンと思われていますが、実は、ドイツ発祥の歌。当時の映像を見ながら。
ドイツ語歌詞と日本語訳は、NHKCDブック「やさしく歌えるドイツ語のうた」(田辺秀樹)より。
ドイツ語、ハインツ・マリア・リンスの歌で
中野忠晴の歌で
ちょうどNHKのラジオ「まいにちドイツ語10月号」で「<ドイツ語圏>記憶に残る近現代の女性たち」をやっていて、ディートリッヒのことを知りました。
リリー・マルレーンを歌ったララ・アンデルセンは再婚相手がユダヤ人だったため逮捕されあわや処刑されるところだったが、命の代償として、生涯この歌を歌うことができなくなった。一方ドイツ出身の女優マレーネ・ディートリヒはナチス政権を嫌いアメリカの市民権を得ていたので、第二次世界大戦中は、連合国側の人間としてイギリス兵士の慰問をしていた。そしてイギリス兵からのリクエストの多い「リリー・マルレーン」を歌うようになり、いつしかディートリヒの持ち歌となった。日本人女性歌手も多く歌っています。
「リリー・マルレーン」歌詞(一部)
兵舎の大きな門の前、街灯の下で会っていたね/今も街灯があるのならその下でまた会おう/(略)
もしも僕が運に見放され国に戻れなくなったら/あの街灯の下にはだれが立つのだろう/君と一緒にだれが立つのだろう
銃声を止めた愛の歌声
第二次世界大戦から生まれたもっとも有名な「戦時の歌」。1939年レコード発売の時は売れなかったが、1941年、主に勇ましい行進曲をかけていたドイツ兵士向けのラジオ局「前線に送る夕べ」という番組で、21:57∼22:00までの3分間だけ、この曲を流したところ、やがて、北アフリカ戦線のイギリス軍兵士たちの間でも人気が高まり、アメリカに移住していたドイツ出身のマレーネ・ディートリヒも連合国側のドイツ語放送局で歌うなど、交戦国の両方の側で聴かれ歌われる人気曲となっていった。
兵士の切ない心情を歌ったこの歌は、戦場にあって、だれもが、こころの中に愛しい人の面影を思い浮かべたのでしょう。
聴いたことある!ドイツの歌 音源リスト
1)歌の翼に バーバラボニー
①https://www.youtube.com/watch?v=Xfj4thZrFj4
2)ローレライ ペーターシュライアー (ライン川映像)
3)ムシデン(別れ)(ドイツ語と英語付)
③https://www.youtube.com/watch?v=1CIimgUq7ic
4)すみれの花咲く頃
④https://youtu.be/x2_S3U7a8WQ (ドイツ語)Richard Taube
⑤https://youtu.be/vT4yX31KKeY (フランス語)
⑥https://www.youtube.com/watch?v=o-KfN35E3Wo
(当時の映像 1‘10から~2’35)
5)小さな喫茶店で
⑦https://youtu.be/NM5tKwnE1Jc (Heinz Maria Lins)
➇https://www.youtube.com/watch?v=dJcg7rz4Utw (中野忠晴)
6)リリーマルレーン
⑨https://youtu.be/eU1DatM2p9A (ディートリッヒ ドイツ語と訳)
⑩https://sp.uta-net.com/movie/81257/ (加藤登紀子)
⑪https://www.youtube.com/watch?v=Lhcuu7Gc2q0 (アンデルセンと映像)
https://www.youtube.com/watch?v=O6GFioNt1QA
(英語による、曲についての詳しい解説付 映像)
視聴者から:
ローレライと野薔薇の訳詩の美しさと正確さに驚かされました。ドイツ語の歌を歌う機会があるなんて新鮮でした。/ドイツ語の歌曲や民謡が日本で親しく歌われるようになったのには 明治時代に素敵な日本語に訳詩をしてくれた方たちがいたからと改めて感心しました。/近藤朔風のことは初めて知りましたが、素晴らしい訳詞に驚かされました。限られた文字数で意味を盛り込んできれいな日本語にするのは至難の業なのに、優雅な歌に仕上げられていて感動しました。今まで原文と比べたこともなかったので、分かりやすい説明で、目から鱗でした。/リリーマルレーンの歌の背景を聞いた後で、歌ってみるとその心情がちょっぴり理解できたような気がした。/戦地で聴いたリリーマルレンの曲を兵士達が、どんな思いで聴いたかと考えると辛くなりました。/リリーマルレーンの歌は時代背景を感じながら、また歴史をを感じながら、とても意味深く心に強くまた心に響きました。平和を強く祈りたい気持ちになりました。
清水英恵さんより「ドイツ編」へのコメントです。(2019.6~2021.6 ドイツミュンヘンに2年間滞在)
ドイツ滞在中の半分はコロナで身動き出来ませんでしたが、ドイツの自然や人やお金の価値感、家族の大切さ等を学べた2年間でした。
ビール大国のドイツ。水の様に飲み。水より安い。酒場ではコースターにマークを入れて何倍飲んだか勘定するのに驚きました。時期的に出る発泡ワイン(ワイン発酵途中で飲むタイプ)の蓋を少し開けたまま売られているので、持ち帰りの際溢れている光景をよく見ました。
人々はフレンドリー過ぎず、どこか控えめで聡明と感じました。
小学校の段階で、成績により将来性を決めるというそのシステムは色々な意見は有るとは思いますが、やりたい事を早く見つける手がかりにもなると感じました。そして教育に関しては生まれてから大学院まで全て国の税金で賄われます。学力の高い子供達は国民に対して敬意を持って学んでいきます。そして厳しいテストがあり進学はとてもハードルが高いという点も素晴らしいと思います。
職人職や専門職へのサポートも充実していて、どの分野に職に就いても、生活には欠かせない存在と言う事をみなが理解している国でした。