DX教育ユニット
Report
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目的
ICT活用とリテラシーの教育モデルを作る
ICTは教育において授業の効率化と生徒の理解促進にとても有効なツールです。さらに主体的で対話的な深い学びを実現する上でも役立ちます。その一方で、児童・生徒のリテラシーの問題や生成AIを教育現場でどう扱うかという課題もあります。日々進化し続けるICTの活用は教員間で共有してこそ意味がありますし、リテラシーや生成AIに関しては組織としての線引きが必要です。そのため、ICT活用による聖学院の授業・学習環境デザインの理想形を模索し、リテラシーを育てるための12年間の教育モデルを作ることがこのユニットの目的です。
マインド
デジタルシチズンシップを備えた人材育成
ICTを使うことが目的ではなく、ICTがあることで新しい学びのアプローチや授業設計が生まれる、そのような取り入れ方が基本的なスタンスとなります。教員だけではなく、生徒にとっても課題解決やアウトプットのアイデアやヒントとなるよう心掛けています。そのため、当初教員の授業設計が中心だった活動内容も、2024年から生徒の活動にも力を入れ始めました。これらを通じ、デジタル技術を用いて社会に積極的に関与できるデジタルシチズンシップを備えた人材の育成を目指します。
実績
教育手法の議論→生徒の活動の場へ
当初、ICTを活用した効果的な授業モデルの研究会から始まり、デジタルシチズンシップや生成AIについての研修や会議など教員側を中心に活動を行いました。その間、益川弘如先生(現・青山学院大学教授)にアドバイザーとして協力いただきました。その後、デジタルツールを生徒のアウトプットにつなげ、実践に落とし込むフェーズへと移行し生徒中心の取り組みが実施されました。またSDGsに取り組む聖学院関係者を評価するための制度、「SDGsポイント」の整備も進め、SDGsプロジェクトの活動推進にも貢献しています。
展望
成果を活用するフェーズへ
「DXを当たり前に」を目標にします。生成AIの授業での活用および教職員の校務での活用について定期的に研究会を開くとともに、DXハイスクールについても取り組んでいきます。またこれまで培ってきた教育現場でのDXについては「英語・グローバル教育/教育探究ユニット」で、生徒の活動については「GX・SX教育ユニット」で活用していくことを視野に入れています。さらに各校の全ての教科および自治体・企業・大学とも連携をとり、学内外での生徒の学びとアウトプットの機会創出につなげていきたいと考えています。
聖学院中高、伊藤豊先生の国語の授業を共有しました。スモールステップで作文を進めつつ、その都度ロイロ・ノートで提出、生徒同士で共有する授業です。他の生徒の作文の良いところは取り入れてよいというルール。途中で集中力を欠いたり、作文が苦手な生徒でも共有することで授業についてこられます。デジタル活用のヒントにつながる研究会となりました。
文部科学省から、ChatGPTを中心とした生成系AIの授業や教育活動での活用についてのガイドラインが出るまでの間、学校法人としてどのように取り扱うかを話し合いました。初等教育・中等教育においては取り入れず、高等教育においても不必要に使わない、使う場合は保護者に許可をとる、などの方向性が決まりました。ただし生成系AIの可能性を否定するものではなく、この先を見据えてのルール化でした。今日でも法人としての基本スタンスの一つとなっています。
SDGsプロジェクトのメンバー以外の多くの人々のSDGs活動を後押しするための制度、SDGsポイントを構築しました。三重大学MIEUポイントを参考に、SDGsに真剣に取り組む児童・生徒・教職員を評価・表彰し可視化するための制度です。
日立製作所の研究所「協創の森」と産総研の循環経済社会研究プロジェクト
聖学院中高、女子聖学院中高の生徒の希望者を対象に、UoCと日立産業総合研究所ラボが共催する「SFプロトタイピングWS」が開催されました。SFプロトタイピングとは、未来社会を象徴するガジェットを使ったSFのストーリーを作り寸劇を演じるものです。動きのあるシナリオと社会を生きる登場人物の視点が盛り込まれていることが条件となります。「月曜日に電気の供給が止まるという島」や「ハンバーガーショップのゴミを減らす」など社会課題が盛り込まれ、それに対してDXをどう活用するかを考えさせるワークショップとなりました。
英語学習においてはライティングやスピーキングをAIに採点してもらうなどの活用があり、そもそも語学学習においてはデジタルツールとの相性の良さがあります。加えて「英語・グローバル教育/教育探究ユニット」が今後教科全般の授業デザインを扱う予定のため、当ユニットで培ってきた授業デザインにおけるデジタル活用の知見がいかせると考えています。またデジタルシチズンシップをはじめとしたリテラシーについても共有していく方針です。
聖学院SDGsポイントはSDGsプロジェクトを前提としたシステムですし、その他の校外での生徒の活動もGX・SXという視点が含まれています。デジタルツールはあくまで手段です。生徒たちの本来の活動の目的として「GX・SX教育ユニット」があることを考え、2025年度以降は、その活動と視野を広げるために当ユニットが醸成してきたものを活用していこうと考えています。
女子聖学院高等学校
元々、理工学系に興味があり、何か活動がしたいと思っていました。そんな時に先生からDXユニットのお誘いをいただき、3Dプリンターでクッキー型を作ったり「ロボッチャ」というロボットの大会に参加したりしました。最初は全然ついていけなくて悔しい思いもしましたが、今ではあの時参加して本当に良かったと思っています。興味を持っていることには自分から飛び込んでいくことが大切だと気づかされました。
聖学院高等学校
DXユニットを通して様々なイベントに参加し、時には自分で企画を立てました。これは聖学院でなければできなかった経験だと思っています。特に「SFプロトタイピングWS」では未来の表現手法など、今の自分にはないものをインプットすることができました。最先端の技術や社会の動向に対する理解が深まったことで、将来への視野が広がったと感じています。とても貴重な機会でした。