舎利母石

しゃりもいし / もいし / しゃりのははいし

舎利母石とは、舎利石を含んだ(内包した/孕んだ)岩石のことを言い、舎利石を含んだ岩脈が侵食されて岩の一部が海岸に流れ着いたものを言う。母石のベースは袰月では主に安山岩で、水分を含むと脆くなる性質がある。色は白、灰色、緑、黄色、茶色である。

山崎湾で採れるものは硬い玄武岩で、下北半島の九艘泊(くそうどまり)と外ヶ浜町(そとがはま)の平館地区(たいらだて)に接する綱不知海岸(つなしらずかいがん)では脆い玄武岩質で色は黒である。

ある日、変わった母石を拾った

 舎利石を内包した舎利母石が風化し舎利石が零れ落ちる。石が石を産み出すことで母石と呼ばれている。母石は海底にあり、常に波の浸食を受けていることで風化が早まり、母石より零れ落ちた舎利石は海岸へ打ち上げられる。また、母石の岩塊も時には侵食によって抉れ、それが塊として分離。舎利石を孕んだ状態の石ころとして海岸に打ち上げられる。

 ある日、何時ものように良質な母石が落ちてはいまいかと海岸を散策していたところ一つの舎利母石を拾った。 これにより舎利石誕生の不思議の後半が一瞬にして解決した。どうしてこんな大量の舎利石が形状を残したまま海岸に打ち上げられるのかということをそれまで知らなかったし、硬度の違いで舎利石が残るものだと思っていたからだ。

 海底の舎利母石はどうなっているのか。 どのようにして舎利母石が侵食され、舎利石が海岸に打ち上げられるのか。そのメカニズムがボロボロになった1個の舎利母石により謎の一部が解明された。また、母石の岩脈も散策中に発見し、頭の中ではあるが、形成時のイメージが概ね掴めてきた。

ここではネットから収集した複数の事実を交え、最近偶然拾ったある舎利母石と実地調査により分かった事実から過程を推察してみた。

風化した母石で解ったこと

なんだ?この母石は!

 そう思って手にとったらボロボロと崩れ始めた。何でこんなに脆いんだ?と疑問に思のは当然。 過去に拾った舎利母石は全て硬いから。こんなに脆い筈がない。

 そもそもの話だが、この舎利母石は何という岩石なのだ?という疑問が次に生まれた。そして、母石の岩石が何であるか調べたところで全て納得したという話である。

 結果から言うと、この溶けた母石は安山岩(あんざんがん)が水を吸って脆くなり、大量の雨によって大規模な地滑り(災害)を引き起こしたあの真砂土である。 まさか、あの硬い安山岩が水を吸っただけでこれほど脆くなるのか?と驚いた。

水を常に吸って脆くなった舎利母石(割る前)
割る前の崩れた部分。舎利石が露出している。

母石は安山岩

Wikipediaを見てくれれば詳しく書いているのだが、簡単に言うと安山岩は「多孔性の岩石で、水を吸うと非常に脆くなる火山性の石」とある。

分かりやすく言えば、安山岩は地球の地殻を形成する二酸化ケイ素が主成分の岩石で、目に見えない細かい穴が多数空いている岩石。 その細かい穴に水が入ると、岩石を構成する粒子の結合が弱くなりバラバラと崩れるという性質がある。例えて言うなら砂糖菓子。あれは硬いが水を吸うと崩れる。その中に水では溶けない舎利石が含まれているというイメージだ。

この母石は轢が堆積している場所を手で掘って湿った層から拾い上げたもの。波の侵食を受けず、地面から常に水分を補給され続け、その形状のままで母岩の安山岩が手で触ると崩れるほど柔らかくなったものだった。

母石から舎利石が溢れるプロセス

つまり、海岸に舎利石が打ち寄せられる事象をまとめるとこうだ。

舎利母石は他の礫がぶつかって削れているのではない。海底に岩脈が在ることで常に水に浸され脆くなるのだ。つまり潮の流れにより母岩である安山岩が溶けていると想像できる。

その結果、固くて耐水性の有る瑪瑙や玉髄(舎利石)が母石からボロボロと零れ落ち、それが波に乗って打ち上げられる。舎利石が岩石(母石)から零れて間もないものは表面にくっきりと母石の痕跡を残してザラザラとした手触りのものも拾える。

舎利石が削れる(磨かれる)のは海岸に打ち上げられ、他の礫と擦れ合う(水摩礫となる)からである。最初は大半が表面に母石の痕跡を残しており、磨かれるのは海岸付近で波に揉まれ他の礫と擦れあってのことだと言える。

舎利母石から舎利石が飛び出ているのは、舎利石が母岩より硬いからということもあるが、実は水に浸かることで脆くなった安山岩が風化(浸食)するから溶け残るのである。

これが舎利石の断面だ

ということで、ボロボロに脆くなった舎利母石を手でバラしてみたところ、中にはぎっしりと舎利石が入っていた。すごい!としか言いようがないほどの密度と言える。

舎利母石を手で割ってみた
割った舎利母石の片方の断面
複数の気泡がつながってできた舎利石

2つまたは3つの舎利石がくっついたもの。

今回は浜で拾った舎利母石がたまたま湿気を帯びてボロボロになっていたので手で簡単に割ることができた。結果はこのとおり、ボロボロじゃなかったら最高に良い舎利母石だったという逸品に入る。

しかも、宙空になった未成長の舎利石まではっきりと視認できる。出てきた舎利石も米粒のように見えるため、昔の人はこれを見てシャリと言ったのではないかとも思える。

米粒状の米粒サイズ舎利石

米粒のような舎利石。1~3ミリ。

なりかけ空洞舎利石断面

成長途中で二酸化ケイ素が不足して中空になった舎利石もハッキリ視認できる。

母石ギャラリー

舎利母石
舎利母石
舎利母石
舎利母石は小さいのに不釣り合いなほど大きな舎利石
舎利母石
青系の舎利母石は舎利石も青い
青い舎利石が多い舎利母石
舎利母石
舎利母石
青い舎利石を拡大したところ
中に縞瑪瑙のように縞がでた舎利石

 現在はごく限られた場所でのみ舎利石や舎利母石は採取できる。資源が無限であるはずもないので、いづれは枯渇するであろうと思われる。採取可能な場所についてもネットで公開せず、口伝のみとしなければ乱獲により浜に上がる量も少なくなるだろう。TVで紹介されるのは勘弁願いたいものだ。