佐久良流躰駆術
その概要と沿革
その概要と沿革
1. 躰駆術の起源と特徴
「佐久良流 躰駆術」は、身体と霊性の調和を追求する古流武術であり、その起源は戦国時代にまで遡ります。剣術や槍術、柔術などの古流武術が体系化された技術を継承し発展してきたのに対し、躰駆術は、武士としての正式な訓練を受けることができなかった足軽や民草たちの間で、「生き延びるための術」として自然発生的に生まれた体術の中のひとつです。
戦場での生存を目的とした躰駆術は、身近な道具や環境を活かし、瞬間的な判断と反応で相手を制圧する実践的な技術体系を形成しました。書物による体系的な記録が少なかったため、他流派に比べてその系譜に不明な点もありますが、現地調査と残された史料から、技術や名称の変遷についての考察が進められています。
躰駆術は単なる体術(身体操作)の枠を超え、「霊力操作」の概念を取り入れた稽古体系を持ち、心と身体、そして霊性の調和を目指す武術として不化してきました。
2. 戦場で生まれた「当て身中心」の技術
躰駆術は古流武術には珍しい「当て身(打撃技)」を中心とする体術です。これには草民の戦場での戦い方に関連があります。
(1)鎧の隙間を狙う
戦国時代の戦場では、多くの武士が鎧を着用していました。このため、刀を折られたり、刀や槍を持たない足軽や民草たちが武装した敵に素手で対抗するには、「小太刀や脇差し」で鎧の隙間を狙う技術が不可欠でした。
躰駆術では、首元、腋の下、膝裏などの鎧の隙間を小太刀などで正確に突き、相手から追撃されないよう、「生還することを目指すための技法」が発展しました。当て身中心の体系はこの延長戦にあるのです。
鎧の隙間を突くためには、相手との距離を正確に計ることが求められ、間合いの管理が重要視されました。そのために躰駆術では現在に至るまで「運足法」の稽古に時間をかけています。
(2)振動波による行動の制限
躰駆術の特徴的な技法のひとつが、「振動波」を利用した内部打撃です。この技法は、打撃を相手の体表面で止めるのではなく、体内に振動を伝えることを目的としています。
躰駆術の当て身は軽い打撃でも、正しく打つことで体内で発生した振動を相手の体内で共鳴させます。これにより、相手の動きを一時的に鈍らせたり、呼吸を乱すことが可能となります。振動波そのもので相手を完全に制することはできませんが、振動波を急所に伝えることで、相手の筋肉の反応を一時的に制限し、次の攻撃への隙を生み出します。
3.古流武術としての躰駆術
日本の武術には、大きく分けて以下の2つの流れが存在しています。1つは、心身の鍛錬と合理的な技術追求し、近代武道の基礎となったもの、もう1つは、合気柔術をはじめとした特定の古流柔術に見られる、技術の背後にある「霊」の働きをも重視する流派。身体操作だけでなく、精神性や内面の霊力(エネルギー)も重視する流派です。
躰駆術は、後者の「霊力も重視する武術」に属します。身体操作だけでなく、霊的な力の活用を重視し、心と身体、そして霊性を調和させることを目的とした稽古体系を持っています。この姿勢は、稽古法や理念に強く反映されています。
4.「佐倉流体術」と「佐久良流躰駆術」
(1)組織化
明治時代に入り、社会の近代化と共に多くの伝統武術が失われる危機に直面しました。この流れの中で、「日本の身体操作を後世に残したい」という強い想いから、躰駆術は初めて体系化され、流派としての形を整えることになります。この際、この武術は初代師範の姓を冠して、「佐倉流体術」として初めて組織化されました。
この体系化に伴い、初めて「師範」という制度が導入されました。師範は単なる熟練者ではなく、流派の「術理」を正確に理解し、門弟に伝える役割を担う存在として位置付けられました。
(2)流派名改称
佐倉流体術は師範制の導入によって、佐倉の家系によって継承されてきました。とはいえ佐倉隆体術は大きな組織ではありません。その結果、技術を継承する血縁者がいなくなり、当時の高弟が新たな伝承者として流派を引き継ぐことになります。
もともと佐倉流体術は草民の武術であったことから血筋にこだわる武術ではありませんでしたが、他の古流武術に倣い「血筋と名の継承」の観点から、「佐倉流」という名をそのまま使うことに継承者はためらい、流派の精神と技術を継承する意図を込めて、「佐久良流 躰駆術」へと改称しました。この名称には、以下の意味が込められているといわれています。
「佐久良流」
佐倉の音を引き継ぎながらも、「久しく良いものを保つ」という意味を持ち、流派の技と精神を後世に伝える意志を表しています。血筋ではなく、技術と精神を重んじる姿勢が示されているとされています。
「躰駆術」
「体術」から「躰駆術」へ改称することで、単なる肉体操作にとどまらず、心・意識・霊性を含む統合された身体操作を意味するようになりました。
「躰(からだ)」は心・意識・霊性を含む「統合された身体」を示し、「駆(かける)」を「内なる力を駆使して瞬間的に力を発揮する」ことを表現し、特に当て身技を中心とした流れるような素早い体術であることを象徴しています。
5. 躰駆術の目的と現代での存在意義
佐久良流 躰駆術は、単なる護身術や戦闘技術にとどまらず、心・身体・霊性の調和を追求する武術です。現代においても、躰駆術の稽古を通じて以下のような価値を見出すことができます。
(1)自己の内面と向き合う手段
自らの内側に潜在する可能性を探り、心と身体を一体化させることで自己成長を促します。
(2)ストレス社会への対処法
現代社会のストレスや不安に対して、心身の調和を取り戻し、リラックスした状態を作り出す手段として活用できます。
(3)身体の本来の力を引き出す技術
躰駆術を通じて、身体の持つ本来の力を引き出し、効率的な動きやエネルギーの循環を体感することができます。
佐久良流 躰駆術は、戦国時代に生まれた生存のための体術(当て身術)から進化し、心・身体・霊性を調和させる武術へと発展しました。「佐倉流体術」から「佐久良流躰駆術」への改称は、血筋問題を回避しながらも流派の精神と技術を守り続ける象徴でもあり、霊性と技術体の融合の深化を示すものです。
現代においても、躰駆術は単なる無手の格闘術や護身術を超えた「自己探求と成長の道」として、多くの修行者に受け継がれています。あなたも躰駆術を通じて、自らの内側と向き合い、心と身体の真の調和を体感してみませんか?
佐久良流 躰駆術 近畿教室以外の活動状況
関東教室(東京・千葉・埼玉・群馬・山梨・神奈川)
指導員不在のため活動休止中
中部教室(三重県・愛知県・静岡県・岐阜県)
ワークショップのみ開催中-中部教室にて躰駆術稽古生の参加資格を得ることもできます。
九州地区(九州及び島根・鳥取)
直弟子養成のみ受付
近畿教室指導員
伊藤耕一郎(いとうこういちろう)
1971年生(京都府)
佐久良流躰駆術 内弟子 指導員位(平成5年-)
佐久良流躰駆術 整法上級(平成7年-)
NPO法人ホリスティック医学協会 認定療法士
博士(文学)関西大学
比較宗教学研究 スピリチュアリティ研究
身体性心理学研究
躰駆術三段
空手道三段
少林寺拳法二段