治療の専門知識と機器の仕組み
このページでは、透析治療の仕組みや機器の役割など、一歩踏み込んだ専門知識を分かりやすく解説します。治療の技術的な側面を理解することは、あなたが安心して治療を受けることにつながります。
このページでは、透析治療の仕組みや機器の役割など、一歩踏み込んだ専門知識を分かりやすく解説します。治療の技術的な側面を理解することは、あなたが安心して治療を受けることにつながります。
透析治療で、実際に血液をきれいにする役割を担っているのが「ダイアライザ」です。これは、しばしば「人工腎臓」とも呼ばれる、透析治療の核となる高性能なフィルターです。
ダイアライザの基本的な構造
中空糸膜(ちゅうくうしまく): 髪の毛よりも細いストローのような繊維(約1万本)の壁が「半透膜」という特殊な膜でできています。この膜を隔てて、血液と透析液が流れます。
血液と透析液の流れ: 中空糸の内部を患者さんの血液が、中空糸の周囲をきれいな透析液が流れます。両者は混ざり合うことはありませんが、膜を介して物質の交換が行われます。
血液をきれいにする2つの原理
拡散(老廃物を捨てる仕組み):
濃度が高い方(血液側)から低い方(透析液側)へ老廃物(尿毒素)が移動する原理を利用して、血液を浄化します。
限外ろ過(水分を抜く仕組み):
膜の内側と外側の圧力を調整することで、余分な水分を膜を通して強制的に押し出し、体内に溜まりすぎた水分を正確に除去します。
当院のダイアライザへのこだわり
患者さん一人ひとりの体の大きさ、透析時間、合併症のリスクなどを総合的に判断し、最適なダイアライザを選定しています。特に、オンラインHDFに対応した高性能なダイアライザも積極的に採用しています。ダイアライザは使い捨てであり、毎回新しいものを使用します。
当院で使用しているダイアライザ
オンラインHDFで使用されるヘモダイアフィルタ
透析室にある「コンソール(透析監視装置)」は、治療を正確かつ安全に進めるための機械です。「透析液の準備」と「血液の状態監視」という重要な二つの役割を担っています。
役割1:血液をきれいにするための準備係
コンソールは、ダイアライザに必要な「透析液」を完璧な状態で準備・供給します。
温度調整: 血液を冷やしたり温めたりしないよう、体温とほぼ同じ約37度に温めて供給します。
流量制御: 血液と透析液を適切なスピードでダイアライザに送り、効率よく老廃物を取り除きます。
役割2:患者さんの安全を守る監視役
コンソールの最も重要な役割は、治療中の患者さんの安全を厳重に監視することです。
血液ポンプとシリンジポンプ: 血液の循環を一定に保ち、抗凝固剤(ヘパリンなど)を微量かつ正確に注入します。
厳重なアラーム(警報)機能: 多くのセンサーが搭載されており、血圧の急激な変化、空気の混入(空気塞栓のリスク)、血液漏れといった異常を瞬時に察知し、警報を発すると同時にポンプを停止させます。
当センターでは、全台ニプロ社製のNCV-3シリーズを使用しています。
透析液は、老廃物を引きつけ、失われた大切な成分を補給する役割を担う「特別な薬液」です。
透析液の2つの大切な役割
ゴミを集める(老廃物の除去): ダイアライザの膜を介して、血液中の老廃物を透析液側へ引きつけます(拡散)。
体に必要な成分を補う: カルシウム、重炭酸イオンなど、体に必要な成分が適切な濃度で配合されており、治療中に必要な成分が血液に戻されます。
当院の透析液品質管理
当院では、透析液の安全基準を最高水準で管理しています。
ステップ1:水処理装置による「超純粋化」: 水道水から不純物や微量の細菌、塩素などを徹底的に除去し、非常に清浄度の高い水を作ります。
ステップ2:エンドトキシンなどの「徹底除去」: 細菌の死骸に含まれる「エンドトキシン」なども特殊なフィルターで除去します。
超純粋化透析液(ウルトラピュア透析液): 当院は、国際的にも最高水準の清浄度で管理されたこの透析液を使用することで、透析中の発熱や炎症、長期的な合併症のリスクを抑えることを目指しています。
これらを実現するために、エンドトキシンや生菌培養検査など、厳格な水質検査を臨床工学技士主導で毎月行っております。
従来の透析(HD)に「濾過(ろか)」という強力な作用をプラスした、より進化・効率化された透析治療です。
オンラインHDFの仕組み: 大量のきれいな超純粋化透析液を体内に送り込み、圧力をかけて老廃物を「洗い流す」ように強制的に引き出します。
メリット: 従来のHDでは取り除きにくかった「少し大きめの老廃物」を効率よく除去でき、倦怠感、透析中の血圧低下、頑固なかゆみなどの改善が期待されます。
図はヘモダイアフィルタ。形はダイアライザと変わりません。