「人工透析が必要になりました」と医師から告げられ、不安に感じている方もいるかもしれません。透析は、特別な治療ではありますが、決して怖いものではありません。一言で言えば、透析とは「働かなくなった腎臓の代わりに、機械で血液をきれいにする治療」です。
腎臓は、背中の腰のあたりに左右2つある握りこぶし大の臓器です。体に必要な機能がたくさんありますが、特に重要な3つの働きを簡単にご紹介します。
① ゴミを捨てる(老廃物の除去)
血液をろ過して、体に不要な**「老廃物(尿毒素)」**を尿と一緒に体外へ捨てる、「体の浄水器」の役割をしています。
② 水分量を調節する
余分な水分を尿として排出することで、体内の水分量を常にベストな状態に保つ調整役です。
③ ホルモンを作る(体調を整える)
血圧をコントロールするホルモンや、赤血球を作るのを助けるホルモン(エリスロポエチン)を作っています。
病気などで腎臓の機能が慢性的に低下し、3つの仕事ができなくなってしまう状態を「腎不全」と呼びます。腎不全が進行すると、体には次のような問題が起こり始めます。
老廃物が溜まる: 血液中にゴミが残り、体がだるくなったり、吐き気がしたりします。
水分が溜まる: 尿が出なくなり、「むくみ(浮腫)」が起こり、心臓にも大きな負担がかかります。
貧血になる: ホルモンが作られなくなり、重い貧血になります。
透析治療は、これらの危険な状態を解消し、腎臓が果たしていた役割を代行するために行うものです。
腎臓の働きを代行する治療(腎代替療法)にはいくつかの種類があり、患者さんのライフスタイルや体の状態に合わせて選択することができます。ご自身やご家族にとって、どの方法が最も適しているかを知るための参考にしてください。
血液透析は、日本で最も多くの患者さんが行っている治療法です。
仕組み:腕の「シャント」から血液を取り出し、透析器(ダイアライザー)を通して老廃物や水分を取り除き、きれいになった血液を体内に戻します。
頻度と場所:原則週に3回、医療施設に通院して行います。
メリット:専門のスタッフが治療のほとんどを行うため、自己管理の負担が少なく安心です。
デメリット:通院のための時間的な拘束があります。食事や水分摂取の制限が比較的厳しくなります。血液を取り出し、戻すためには。多くの場合毎回の透析で、血管に針を刺すことになります。
腹膜透析は、ご自宅でご自身やご家族が行うことのできる治療法です。
仕組み:お腹の中に埋め込んだ「カテーテル」から透析液を注入し、「腹膜」をフィルターとして老廃物や水分を交換します。
頻度と場所:毎日、ご自宅や職場でご自身で行います。通院は月に1〜2回程度です。
メリット:自宅や職場で透析ができ、時間的な自由度が高いです。体への負担が比較的少ないです。
デメリット:毎日、自己管理が必要です。カテーテルを埋め込む手術が必要で、感染症のリスクがあります。また、腹膜には寿命があり、5~10年で腹膜透析ができなくなる場合が多いです。
腎移植は、機能しなくなった腎臓の代わりに、健康な腎臓を移植する治療法です。
仕組み:亡くなった方やご家族から提供された健康な腎臓を移植します。
メリット:透析から解放され、食事や水分の制限が大幅に緩和されます。
デメリット:移植手術が必要で、拒絶反応を防ぐため免疫抑制剤を生涯服用する必要があります。
当クリニックは外来血液透析専門の医療施設です。
当院は、患者さんの安全と快適性を最優先に考え、「透析は生活を支える治療」であるという理念のもと、最新の技術と温かいケアを組み合わせた透析医療を提供しています。不安なこと、疑問に思うことがあれば、いつでもご相談ください。
透析治療は、患者さんごとに最適な方法を選択することが重要です。当院では、患者さんの体格、年齢、合併症の有無などを総合的に判断し、最適な治療法を提供します。
全台オンラインHDF対応コンソール
従来の透析では除去しきれなかった老廃物や有害物質を効率的に取り除くオンラインHDF(血液透析濾過)に全台対応しています。これは、合併症リスクを軽減し、より質の高い生活をサポートします。(オンラインHDFの詳しい仕組みは[A-2. 専門知識]をご覧ください)
積層型ダイアライザの導入
透析中の血圧変動が気になる方やご高齢の患者さんには、積層型ダイアライザを導入することで、身体への負担を軽減し、より安全な治療を目指しています。
徹底した透析液水質管理
透析治療の根幹となる透析液の品質に徹底的にこだわっています。国際的な最高水準の清浄度が保証された透析液(ウルトラピュア透析液)を使用し、長期的な合併症のリスクを抑えます。
バスキュラーアクセス専門外来:
長期的な透析生活を支える生命線であるシャント(内シャント・人工血管)の管理に注力しています。エコー(超音波)を用いた定期的なアクセスチェック体制を確立。異常の早期発見・早期治療を可能にし、アクセス肢の長期維持に努めています。必要に応じ、連携する咲花病院で迅速なシャント修復術を実施します。
エコーガイド下穿刺:
穿刺困難な患者さんのために、超音波エコーで血管を正確に確認しながら穿刺を行うことで、患者さんの痛みや負担を大幅に軽減し、確実な穿刺を実現します。
透析中の運動療法:
透析時間を利用した運動療法を積極的に推奨し、患者さんの体調や体力に合わせたプログラムを考案。筋力低下の予防や、活動的な毎日のサポートを目指します。
参考文献・関連リンク
日本腎臓学会
日本腎臓学会が作成した、腎臓病に関する一般の方向けの情報サイトです。
日本透析医学会
透析治療に関する専門的な情報が掲載されています。
日本腹膜透析研究会
腹膜透析に特化した情報や、患者さん向けの情報が充実しています。
日本移植学会
腎移植を含めた臓器移植全般に関する情報を提供しています。