2022年 11月20日 読谷で開かれた、「うむふぇす 2022」に参加してきました。
こちらのイベントは「いも好きによる いも好きのための いもの祭典」ということで、ステージブースではイモ談義がおこなわれ、これからの沖縄県におけるいもの過去と今、未来に向けて有識者の方々が意見を交わされていました。フードブースではいもに関する専門店様が多数出店していました。
ステージブースのイモ談義では、前半に「イモの現状」について生産、加工、販売、研究等の様々な観点から沖縄の抱えるイモ問題について議論が行われました。
沖縄のイモ生産はそのほとんど(すべてといっても過言ではないくらい)が加工用に生産されており、紅芋ペーストやパウダーなどのお菓子用につかわれています。これによって「いもの選択肢が少ない」といった問題が生まれているそうです。最終的に加工されるため、紅芋の個性というのはあまり必要なく、育てやすく色味が良く安定した収量を確保できる品種ばかり育てがちになってしまいます。また、ほとんどが加工用に使われることから、「紅芋の見た目」というものに注意を払う必要がないため、管理や手入れにあまり注力しない農家さんも多々見られます。こうした生産における紅芋の多様性や徹底した管理体系が失われることで、病気が流行った際に甚大なダメージを受けるといった問題が生まれてしまいます。(実際、「サツマイモ基腐病」が沖縄県内ならず、全国に蔓延しておりその生産に甚大な被害を及ぼしているのです。)
そして、紅芋(サツマイモ)の持つ「育てやすさ」というのも、病気の蔓延に拍車をかける一つの要因となっています。ほとんどの紅芋は苗を地面に挿し、発根さえしてしまえば勝手に育ってくれます。我々も経験しており、サツマイモの茎をテキトーに地面に放り投げてもそこから成長していくほど生命力が高いのです。そのため、わざわざ農家さんは苗を買うのではなく、自生しているものや自分が以前に育てていた紅芋から苗や種芋を調達しているのが現状です。もし、その調達した紅芋が病気におかされていたら、これから育てる紅芋も病気におかされてしまうのです。
この問題を解決すべく、「ウイルスフリー苗」(病気に罹っていない健全な苗)の導入が期待されていますが、うまくいっていないのが現状です。この背景には「ウイルスフリー苗」を作るのが非常に困難であり、量産できないということがあります。実際に、令和4年の9月中旬に南部農林高校の方で「ウイルスフリー苗」(この時はハンダマ)を作るために茎頂培養を体験してきました。茎頂を取り除き、その茎頂を寒天培地に移植する作業を、顕微鏡をのぞきながらピンセットと剃刀を使い進めていくのですが、これが繊細かつ素早さを求められるため(植物が死なないために)非常に難しいのです。この「ウイルスフリー苗」を作る方法は現在はまだ手作業である部分が多いため、その量産が難しく、普及に至っていないのです。
では、イモの生産について沖縄県はどのように向き合えばいいのでしょうか。一つ重要なことは「収穫時期の分散」です。現在、沖縄県では春植え(春に植え、秋に収穫)が主流となっており、秋に大量に紅芋が出荷されます。このような栽培形態によって、実はある問題が発生しているのです。それは年中安定した紅芋の供給が困難になっているということです。沖縄は気温と湿度の問題からイモを長い間貯蔵するために冷蔵庫のような温度と湿度管理が徹底された設備が必要となってきます。加えて、沖縄の土性の観点から比較的腐りやすいのではないかと考えられています。イモを長期の間、維持・管理するためには非常にお金がかかってしまうのです。御菓子御殿様などでは、一気に紅芋ペースとして加工し冷凍する手法がとられています。ゆえに秋の季節に仕事量が集中してしまい非常に忙しくなっていると仰られていました。また、収穫に時期が集中していることで、何か天候や病気などによる被害が蔓延した場合、その被害が拡大しやすいという点も安定した供給の難しい要因となっています。
沖縄は年中温暖な気候であるためどの時期でも紅芋の栽培が可能となっています。これを生かし年中安定したイモの供給ができるような体系づくりをしていくことが重要です。例えば春と秋とでイモの単価を変化させ、生産時期を分散させることなど提案としてあがっていました。
後半の談義では「イモのこれから」について議論が行われました。
世間ではサツマイモブームが巻き起こっており、スーパーやコンビニなどでは甘藷(サツマイモ)を用いた加工品が数多く見られています。
この「波」に沖縄のイモはどのように乗っかればいいのでしょうか?
このホームページ内でも様々な沖縄県におけるいもの課題について書いてきました。サツマイモ基腐病の蔓延、加工用生産が故のイモの多様性の低下、農業従事者の高齢化、イモの供給バランスとその安定性、etc
しかし、課題だらけではなく、沖縄の明るいイモの未来に向けても様々な動きが見られます。沖縄の紅芋は甘味が少なく淡白な味から、やきいもには適していないとされてきました。そのため沖縄県でもやきいもに適した紅芋を作ろうと品種改良がおこなわれています。また、沖縄の紅芋の本来の特徴を生かした広め方もとても大事です。紅芋は淡白な味が故に、味がつけやすく料理等に非常に向いています。スイーツだけでなく日常的な食事の面で紅芋を食べていただけるような「仕掛け」や「ムーブメント」があっても非常に面白いかもしれません。ほかにも、IMUGE.などの新たな紅芋の活用方法が企業様などで模索されています。
沖縄県における紅芋の課題、そして、これからの未来に向けて多方面から様々な方が関わり合い、アプローチをしていくことが重要です。
編集者 山浦