ゲーム理論 予備の連絡ページ 2021年度 (log)
このページでは補足的な連絡事項,授業の内容 (教材) への補足,期末試験結果などを掲載する予定.重要な事務連絡は主として Moodle コースページで行う.ここで更新があれば Moodle コースページでお知らせするように努める.
以下は古い記事から順に並べる予定.
科目ポスターと研究紹介文 10/5
2019年度まではオリーブスクエア1階掲示板にポスターと科目開講案内を掲示して開講を周知していた.有名なゲームの利得表と展開形を用いたポスターを下に掲載する.
受講科目を決める際に講師の研究業績はチェックしているだろうか? 業績リストを見てもわけがわからないことも多いかもしれない.以下のエッセイは三原の研究の一部を一般向けに紹介した文章である.科目選択の参考になるかもしれない:
「情報を引き出すことと得たい結果を計算すること: ゲーム理論と社会選択理論から」(『大学新入生のための情報リテラシー』[香川大学総合情報センター編 2014年,学術図書出版社] に所収されたものの修正版)
履修登録を取消すべきか迷っている人へ 10/5
事務連絡だと思うが,Moodle に載せると「うざい」と言われそうなのでこちらに載せる.シラバスやメールに書いたことと重複があるが,以下を参考にして参加するかどうかを判断するといい:
取消期間が短いので注意.
取り消さなければ成績はつく (シラバス5頁「履修登録の意味」参照).
不可などの悪い成績がつけば GPA (grade point average) は下がる.GPA が下がると在学中や卒業後の海外留学のチャンスを大きく失うだろう.また,奨学金が取り消されたり,特定科目群で一定の成績を要求するような卒業要件を満たせなくなったりする.
この科目ではボードゲームやコンピューターゲームは扱わない.社会における人間行動をあつかう.
高校数学の知識はほとんど必要ない.だが,関数を表す f(x, y) といった数学記号に早いうちに慣れないときびしい.「場合分け」などの数学的議論について行ける力も必要.補助教材の2章を眺めれば感じはつかめるはず.「場合分け」はたとえば2.3節に登場する.
成績に差がつきやすい.期末試験問題の大半は課題や小テストにひじょうに近い類題である.それらをしっかりやっていれば「優」以上を取るのは容易だが (でも2021年度は自習がメインだから「しっかりやる」というのが大変かも),手を抜いたらすぐに「不可」になるだろう.現在の教材に切り換えたのは2016年度で,その年は秀,優,良,可,不可はそれぞれ 4, 2, 0, 3, 1名で,2017年度は1, 0, 1, 0, 3名だった.中間試験を Web 小テストに替えた2018年度は 7, 3, 2, 1, 9名で,2019年度は2, 4, 2, 5, 4 名,2020年度は 1, 1, 1, 3, 14名 (期末試験受験者に限れば 1, 1, 1, 3, 3名).
講師の自己紹介 10/6
講師の人物像を知ることは授業内容の理解の増進にもつながると言われている.気になる人のために以下に掲載する.他にも「ゲーム理論: 補助教材」の5.2.1節「三原麗珠の自己紹介への補足」でも見るといい.また,このページ左枠の「連絡先・別サイト」からは個人ページに行けるし,そこからさらに別サイトにもリンクが張ってある.
三原麗珠の自己紹介 (2021年10月).嫌いなものは騒音.活発すぎる娘たちや息子の教育に悩まされ,日々消耗している. もともと長く眠る方だったけど,この5年くらいはほぼ毎日睡眠導入剤を飲んで以前より眠れるようになったため,睡眠時間は9時間を切るようになったと思う.長年の IBS (過敏性腸症候群) のせいで外食だけでなく外出すること自体が億劫になった.授業のある朝は基本的に食事は避けている.最近身体のいろんなところに不調が出て来た.2017年7月にクビの後ろの骨を開く手術を受けたけど,症状である右腕の麻痺はまだまだ続きそう.以前は咳喘息のため一年のうち数ヶ月は咳で苦しむ日々だったが,ここ8年はアドエアあるいはエリプタというステロイド吸入薬が効いている.(でもここ2年ちょっと効きが悪い気も.カビでも吸ってるんだろうか.) ICU (国際基督教大学) の社会科学科で学士,ミネソタ大学の数学院で修士,経済学大学院で博士を取り,大阪大学やカリフォルニア工科大学にいたこともある.2008年に図書館に異動したことで仕事上のストレスは減ったけど,大学では相変わらず学生のためにならない「改革」が続いているため心安らかでない日々を送っている.詩を作ったりオルガン音楽を聴きに行ったりといった時期もあったが,最近は Twitter でときどきつぶやくくらいで,趣味らしい趣味もなくなってしまった.趣味なんかよりたくさん勉強して良質な研究をしたいのだが,家庭的事情や身体的事情でなかなか研究する時間が取れない (いはんや勉強の時間をや) のが残念.
Twitter をやっている.弛れとか怒りに満ちた発言もかなりあるため,閲覧することはお勧めはしない.しかし発言はどちらかというと批判的思考を追求するものや学術的なものが多い.言及するばあいは (リプライや引用 tweet など) こちらに見える形でやってくれればありがたい.できるだけ批判的に返したい.ちなみに「批判」とは悪口とか非難とはまったく別物であることは,学生なら知ってるよね?
2018年7月にセクハラなどに関するTwitter での発言が盛り上がって全国ニュースになった.そのため「大学の信用を傷つけた」とかで上層部に睨まれた.でもみなさんはまったく気にしなくていいと思う.(どうしても受け入れられない人はこの科目は受講しない方がいいだろう.というか,そういう繊細な人はわざわざそれらの発言を見るな.笑) 批判の大半はストローマン論法 (僕が言ってもいないことを言ったことにして,それを攻撃) だったし,学問的意義も込められた文脈を無視したものだった.問題にされた発言は,仮想的人物の発言の引用だったり,仮定法だったり,反語的表現であったり,同一発言中で取り消してあったり等々.作品中で演じられたペルソナと作者の区別もせずに彼らは怒っていたわけだ.
期末試験直前情報 2021年度 2/13
昨年度の記事を参照.
期末試験結果 3/7
記録・事務連絡
期末試験は2月15日実施.3名受験.1030開始,12:00まで退出なし.
期末試験問題・正解例・配点・採点基準は Moodle のコースページに掲載した.
期末試験の採点は以下の3種類の点数を別々に計算して念入りに行った: (i) 獲得点を手計算で合計した点数,(ii) 獲得点を自動で合計した点数,(iii) 減点を手計算で合計した点数.
期末試験総点の得点率は64%だった.2016年度以来のこの数値は80%, 57%, 80%, 70%, 56%である.得点率60%未満の問題が8問中4問あった.小テストや試験対策用として予告した課題との類似性を考えれば,もっと点数を取って欲しかった.
過半数の受験者が失点した問題 (中央値が満点でない問題) は2016年度は8題中2題,2017年度は9題中7題,2018年度は9題中1題,2019年度は8題中5題,2020年度は8題中6題,2021年度は8題中5題だった.
期末試験問題は返却しない.内容を確認したい人は三原オフィスへ.あらかじめメールで連絡を取った方がいい.
成績に関するデータはこちら. 成績評価 (秀はS, 優は A, 良は B, 可は C, 不可は X) の分布,小テスト・期末試験・それら合計の得点分布・平均点・中央値が載っている.得点分布はそれぞれ高い得点から順にリストしており,特定の行に横に並ぶ点数は同一学生のものを意味しない.
期末試験の各問題ごとの得点分布・平均・中央値は,上のスプレッドシート左上の「期末詳細」タブをクリックすると現れる.得点分布は問題ごとに高い得点から順にリストしており,特定の行に横に並ぶ点数は同一学生のものを意味しない.
初期および最終的な履修登録者20名と8名に対して,期末試験受験者は3名,合格者は2名だった.予想の範囲内であるが,安易な受講はもっと減したいところ.過年度の実績をしめすことによりそれを減らそうとすると,好成績を目指すような (リスクを嫌う) 学生に限って履修登録を取り消したりする.最後までしっかりと取り組む学生だけを学期はじめに十分確保することは毎年度の課題である.
個別の成績は Moodle に掲載した.Moodle に表示された成績が大学から後日受け取った成績と一致していない場合は,修学支援グループに「成績調査依頼票」を提出のこと.
以下の全項目の値が確認できる (このような詳細な情報を提供していることを知ることもなく終わってしまう人が毎年のようにいるけど): 期末の各問の点数,各回の小テスト点数,小テスト合計,期末得点,試験総点,救済点,救済点コメント,救済後総点,最終評定. 救済点は救済により合格する可能性ある者にのみ付与した (たとえば期末未受験だと救済点は計算していない).
小テストの配点は26点で,各回の配点は当初予告した「評価点」通りとした.以下は合格した時期で区切った評価点 (受験回数による減点を除く):
小テスト1: 5, 0, -5
小テスト2: (6 or 5), 0, -5
小テスト3: 5, 0, -5
小テスト4: 5, 0, -5
小テスト5: 5, 0
小テストの受験回数による評価点の減点は最初の締め切り以前についてのみ実施した.締め切り以後は正解例が配布されているため受験回数を数える意味がないため.
小テスト1, 2, 3については,合格点に至るまでの受験回数が6回以上でマイナス1点とした.(甘いと思うけど,予告していなかったため.)
小テスト4, 5 については予告した通りに減点した.
小テストの記録で (タイムスタンプと氏名表記を除く) すべての回答が同じものは重複としてあつかった.重複分はそのうち1回分だけを受験回数に数えた.(1度だけ送信したつもりのものが2度記録されたりするエラーにはこれで対処できる.)
7点を上限とする救済点 (ボーナス点) の扱いは以下のとおり.フォーラム参加と期末試験のコメント欄で1名が5点を (通常はこのように高い救済点は出さない; 今年度は学期途中で小テストの受験回数による減点を厳しくする措置を取ったため,救済点を与える基準を例外的に緩めた),1名が2点を獲得した.救済点により評定が変わったのは1名だった.
Moodle コースページは 4月1日以降のいずれかの日に閉鎖される予定.
[教員向け情報] Moodle に成績評定を載せる方法をアップデートした.
最後に
ゲーム理論についてもっと知りたければ,あらためてシラバスの「参考文献」欄を見るとよい.読み物の類いも載っている.
もちろん補助教材の読書案内も参考に.特に経済学を専攻しようとする学生には,「はじめに」にある「経済学を学ぶ方のための読書案内」を何度も参照して,経済学マスターのためのプランを作ってみることを勧める.
なにか相談したいことがあったら連絡してくれていい.メールでないと捕まりにくいだろう.学問一般とか若者・学生事情にかんする雑談,経済学関連分野大学院進学にかんする相談などを歓迎する.一方,普通の就職とか経済情勢なんかについて尋ねてくれてもあまりためになることは言えない.また,自分はひとの名前だけでなく顔もすぐ忘れてしまうので,ゲーム理論を取っただれだと教えてくれないとたぶん分からない.
では,ごきげんよう! おっと,下の付録を忘れずに.
付録: 期末試験の自由記述欄のコメントと,それへの返答 3/7
期末試験の自由記述欄のコメントから (要約してある; カッコ内の数字は整理番号):
この授業で私自身と最も関わりがあるものは期待値である.中学生の頃から競馬を見ており,オッズと期待値に囲まれてきた.それらをもとに期待値を算出するツールを開発しているものの,なかなかしっくりくるものが作れない.しかしながらこうした数学の世界の奥深さを感じ,授業を通じてより深まったと感じている.(2138)
三原: うまく開発できれば稼げるツールなのかな.この授業では期待効用理論にちょっとだけ触れたけど,動画は作ってないし,テスト範囲からは除外した.期待効用は1人の意思決定では重要な理論だが,ゲーム理論の主要ターゲットは2人以上の決定であるという事情のため.でも期待効用がゲーム理論の基礎になっていることはまちがいない.ちなみにこの授業で何本も動画を紹介した渡辺隆裕さんも競馬が大好きみたいで,「競馬の本命と穴馬の偏りにおける進化ゲーム解釈」という論文も書いている.
授業でしめされた渡辺先生の動画で「ゲーム理論を学習すればゲームで勝てますか?」という質問に答えていた.渡辺先生は,ゲーム理論は「すべてのプレイヤーが win-win の関係になることを考える」として,「勝つ」ことは別と話していた.しかし私はゲーム理論は経済やマーケティングに関係するため,自分の利益・損害を主体に考える「勝つ」ためのものととらえてしまう.三原先生ならこの質問にどう答えますか.(2135)
三原.「そんな質問は学期中にフォーラムに投稿するか期末テスト直後にでも声をかけてくれよ」と思ったが,回答に含めたいアイディアをいくつか列挙してみよう:
ゲーム理論はいろいろな人間行動を扱う.経済現象に限らない.
経済やマーケティングで自分の利益や費用をメインに考えるというのは当たっている (ゲームでは「利得」にあたる) が,そこでは必ずしも「勝ち負け」を考えられるわけではない.
「勝ち負け」があるゲームは限られている.たいていの自発的関係は互いに利益を得られるようになっているからだ.ただ,利益の配分に偏りがあることはあり,それを「勝ち負け」と呼びたくなるかもしれない.そんな場合でも参加しないよりは参加した方がマシなことが普通.たとえばスポーツの試合なら,参加できないよりは (負けるにしても) 参加できた方がうれしいだろう.ブラック企業に半年間勤めるのはその期間仕事がないよりはマシだろう (職場環境が正しく予想できていれば).「勝ち負け」にこだわるあまり,自分が本当に追求したい利益を見誤ってしまわないことが重要.
ゲーム理論を学べば「勝ち負け」があるゲームについては勝てる---とは言えない.相手もゲーム理論を知っているかもしれないし.ゲーム理論に対する習熟度やそれ以外の知識も重要だということだ.
一方で,自己の利益 (利得) を最大化するということは,あらゆるゲームで考えることができる.均衡をなりたたせるもとになった「最適反応」はまさにそれで,想定される相手の行動に対して自分の利得を最大化する合理性を指す.相手に「勝つ」という発想ではなく,自分の利得をできるだけ大きくするという意味で「勝つ」という言葉を使っているのなら言いたいことは分かる.しかしその言葉を使うと,どうしても相手を負かすことばかり意識してしまいがちだ.それでは決定を誤りやすいだろう.
最適反応は正しい予想に対して行わないと意味がない.予想する際に「相手も合理的に振る舞うはずだ」と想定するのがゲーム理論の「均衡」の考え方だ.社会科学の目的は社会現象の説明である.社会科学者が予想する時は合理性を想定するのがもっとも率直だろう.
意思決定者 (プレーヤー) としての予想が,観察者 (分析・説明する者) である社会科学者の予想とちがうことは 当然あるだろう.意思決定者の目的は社会科学者のそれとは異なるから,他の予想はあってもいい.それでも意思決定の誤りは,相手が合理的に行動することを読み込めない点に起因することが多いはずだ.いざという場面で得意な技を使うと決めているスポーツ選手は,相手にそれを防御されやすいだろう.ゲーム理論の思考法を意思決定に役立ててほしい.
おまけ.ルール (ゲーム) を作るばあいも,それが適用される側の気持ちを考えるべきだ.たとえば「新型コロナウイルスの感染者は入試を受験させない」 というルールはどういう効果を持つだろうか.感染疑いがある受験生は,おそらく自分の症状を隠して受験するだろう.そういう行動を予測した上で,そうなってもいいのかどうかを考慮しつつルールを作るべきなのだ.