研究トピック

⻄部北太平洋の植物プランクトン群集組成を制御する栄養物質供給機構の解明

〜北太平洋中層⽔から供給される鉄とケイ素の重要性〜(低温科学研究所 教授 西岡 純)


北海道⼤学低温科学研究所附属環オホーツク観測研究センターの⻄岡 純教授、同⼤学⼤学院地球環境科学研究院の鈴⽊光次教授、東京⼤学⼤気海洋研究所の⼩川浩史教授、安⽥⼀郎教授(研究当時)らの研究グループは、北太平洋の中層⽔から供給される鉄(Fe)やケイ素(Si) 、窒素(N)などの栄養物質量とその化学量論⽐が、表層の植物プランクトン群集組成を制御することを明らかにしました。

これまで、オホーツク海やベーリング海などの北⽅圏縁辺海から北太平洋に繋がる中層の循環によって植物プランクトンの増殖に⽋かせない Fe や Si や N などの栄養物質が移送され、北太平洋の⽣物⽣産を⾼めていることが分かっていました。しかしこれらの栄養物質が、どこで、どのような物理的メカニズムを経て北太平洋中層から表層に供給されて、この海域の海の恵みをもたらす珪藻類の増殖を制御しているのかは分かっていませんでした。

本研究では、これまでに集めてきた北太平洋の栄養物質の化学的データセットと、同時に観測した乱流混合のパラメータの観測データを、表層の植物プランクトン群集組成の情報とともに解析しました。その結果、北太平洋の亜寒帯循環域と親潮―⿊潮移⾏域において中層⽔から表層に供給される Fe や Si 量やその化学量論⽐によって、珪藻類の現存量が制御されていることが⽰されました。

本研究で⾒えてきた北太平洋の珪藻類の増殖を制御する機構は、我が国の⽔産資源の維持機構や地球規模の炭素循環プロセスの理解を⼤きく進めます。また、現在起こりつつある⽔温上昇や、⿊潮や親潮勢⼒の強化・弱化などの気候変動に起因する海の変化に対して、海洋⽣態系や炭素循環がどのように応答するかを理解する上で⽋かせない知⾒となります。

本研究成果は、2025 年 3 ⽉ 19 ⽇(⽔)公開の Biogeosciences 誌にオンライン掲載されました。

論文名:Phytoplankton community structure in relation to iron and macronutrient fluxes from subsurface waters in the western North Pacific during summer(⻄部北太平洋における表層下から供給される鉄や栄養塩フラックスと植物プランクトン群集組成の関係)

Deng Huailin1,2、鈴⽊光次 3、安⽥⼀郎 4、⼩川浩史 4、⻄岡 純 2
(1 北海道⼤学地球環境科学研究院、2 北海道⼤学低温研究所附属環オホーツク観測研究センター、3 北海道⼤学地球環境科学研究院、4 東京⼤学⼤気海洋研究所)

雑誌名 Biogeosciences(欧州地球科学連合による⽣物地球化学に関する国際誌)

https://doi.org/10.5194/bg-22-1495-2025

公表⽇ 2025 年 3 ⽉ 19 ⽇(⽔) (オンライン公開)

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