更新情報
佐伯立さんが水産資源研究所 釧路庁舎へ異動されました(2024.11.1)
2023年度の業績を追加しました。研究業績(2024.10.1)
Nan Yuanさんが東北大学に異動されました(2024.10.1)
研究集会「環オホーツク陸海結合システムの冠動脈:対馬暖流系の物質循環」7月2-3日
研究集会「縁辺海を繋ぐ物質循環研究にむけて」2024年5月24日
低温科学 第82巻 「環オホーツク圏の科学 — 環オホーツク観測研究センター20年目の歩み —」の発行のお知らせ
令和6年度のメンバーを掲載しました。
環オホーツク観測研究センターのFacebookはこちらです。
アムール川中流域へ溶存鉄と溶存有機炭素を供給する永久凍土湿地の役割(10/4)
地衡流シアー応力が卓越する沿岸フロントにおける陸棚上の鉛直循環(6/30)
無次元パラメータδによって分類される内部重力波-安定渦相互作用の 3 つのレジーム: Scattering, Wheel-Trapping, 渦の変形を伴うSpiral-Trapping(6/30)
その他のページ
環オホーツク自己点検評価2019を掲載しました。(出版物のページへ)
砕氷型巡視船「そうや」による観測(2020年2月)を掲載しました。(最新情報、「そうや」観測ページ)
研究論文:宇宙から海氷を測る
Toyota, T. (2024): Measuring sea ice from space. In "Reference Module in Earth Systems and Environmental Sciences", Eayrs, C.(Ed.), Elsevier, ISBN: 9780124095489, https://doi.org/10.1016/B978-0-323-85242-5.00023-3 (in press)
(豊田)
研究集会:砕氷巡視船そうやを用いたオホーツク海の海氷(流氷)観測研究の次期 10 年構想
北海道大学低温科学研究所では1996年より海上保安庁第一管区と共同研究を実施し、砕氷巡視船「そうや」を用いた冬季南部オホーツク海の海氷域の観測を四半世紀を超えて継続して来た。これまでに国 内の多くの研究者がこの観測機会を生かし、海氷の関わる海洋物理と生物地球化学過程や、季節海氷域 が気候に与える影響など数々の成果に結びつけてきた。さらに「そうや」観測を活かした研究から,数々 の研究が南極・北極の両極域の研究に発展した.2025年にこの「そうや」観測が発足後30年を迎える。 本研究集会では、「そうや」観測を利用してきた関係者が一堂に集まり、「今後どのように「そうや」 観測を維持し発展させ次世代の研究に活かしていくのか」を議論し、次の10年スケールで「そうや」観 測を利用して展開できる季節海氷域のサイエンスを話し合う。
日時:2024年10月22日(火)13:00-17:30
場所:低温科学研究所会議室+オンライン
研究トピック
高緯度と熱帯からの遠隔影響がオホーツク海氷の年々変動を引き起こす親潮・磯口ジェット合流域が混合水域に栄養塩を供給することを発見
~サンマなどの幼魚の育成場に栄養が供給されるシステムを解明~
(低温科学研究所 教授 西岡 純)
~サンマなどの幼魚の育成場に栄養が供給されるシステムを解明~
(低温科学研究所 教授 西岡 純)
親潮と磯口ジェットの合流域には継続的な湧昇ポイントが存在し、その下流で栄養塩濃度が上昇することを明らかにしました。
有光層注 1)への栄養塩供給がサンマなどの小型浮魚類の餌環境の向上に貢献することが期待されます。
国立大学法人東京海洋大学(学長:井関 俊夫、以下「東京海洋大学」)で受け入れている日本学術振興会特別研究員の矢部いつか博士、東京海洋大学学術研究院の長井健容准教授、東京大学大気海洋研究所の伊藤進一教授らの研究グループは、北西太平洋の親潮と磯口ジェットの合流域で発生する湧昇が栄養塩豊富な海水を表層付近へ供給する引き金となることを明らかにしました。
磯口ジェットと隣接する親潮との間には亜寒帯フロントが存在し、フロントとその下流域は小型浮魚類注 5)の好漁場として知られています。特にフロントの南に位置する磯口ジェットは黒潮を起源とし高水温なため、多くの小型浮魚類の幼魚たちの生育場となっています。しかし磯口ジェットは黒潮を起源とするため栄養塩が乏しく、ジェット周辺の幼魚たちの餌を含む生物生産を支える栄養塩がどのように供給されているのか不明でした。
本研究グループは、磯口ジェットを横断する観測を複数年にわたり実施し、親潮と磯口ジェットの合流域にどの年でも強い湧昇流が発生することを示しました。また、合流 域では磯口ジェットの高温・高塩な海水の下に栄養塩豊富な亜寒帯水が流れ込み、湧昇によってジェット内部に栄養塩が供給されることを明らかにしました。
今回の発見は、磯口ジェット周辺が多くの小型浮魚類の幼魚の生育場となっている要因を解明しただけでなく、世界中に分布する同様な海流の合流点の重要性を示すもの で、海洋保護区の選定などに必要な科学的知見となることが期待されます 。
本研究は、水産研究・教育機構の筧茂穂主任研究員、北海道大学低温科学研究所の西岡純教授と共同で行いました。
本研究成果は、2024年 7 月30日(英国時間)に科学誌「Scientific Reports」の オンライン版で公開されました。
論文名:Steady nutrient upwelling around a biological hotspot of the confluence between the quasi-stationary jet and the Oyashio in the western North Pacific
URL:https://doi.org/10.1038/s41598-024-68214-z
詳細はこちら
研究集会:環オホーツク陸海結合システムの冠動脈:対馬暖流系の物質循環
日時:2024年7月2日(火)13:00-17:30、7月3日(水)10:00ー12:45
場所:低温科学研究所講堂+オンライン
研究集会:縁辺海を繋ぐ物質循環研究にむけて
西部北太平洋を含む日本周辺海域は生物生産が高く,世界でも有数の水産資源が豊富な海である。この豊かな恵みを生み出している背景には,日本海,オホーツク海,東シナ海などの縁辺海と,それらを繋ぐ黒潮・親潮の海流が関わる海洋循環と栄養物質の循環が密接に関わっていると考えられる。しかし縁辺海を繋ぐ物質循環については,観測からの定量的な裏付けに乏しい状況であり,日本周辺を繋ぐ視点をもった縁辺海と日本周辺の海流系で最新の精密な化学分析技術を用いた観測計画を立案する。
日時:2024年5月24日(金)9:00-17:30
場所:低温科学研究所講堂+オンライン
全文ダウンロード(85MB)
北海道大学学術成果コレクション(HUSCAP):個々の論文のダウンロードができます。
環オホーツク観測研究センター(以下センター)は,2004年4月に北海道大学低温科学研究所の附属施設として,それまで紋別にあった流氷研究施設を改組する形で設置された.当センターは,オホーツク海を中心とする北東ユーラシアから北太平洋,北極圏から亜熱帯にわたる地域(環オホーツク圏)が地球規模の気候変動に果たす役割を解明すること,また同地域における気候変動のインパクトを正しく評価することを目的とし,環オホーツク圏環境研究の国際拠点となることを目指して活動してきた. 2013年には改組を行い,分野横断的なテーマを対象とした2つの研究分野「気候変動影響評価分野」,「流域圏システム分野」を設け,さらに国内外との共同研究ネットワークを強化するために「国際連携研究推進室」を設置した.この3つを横断的に機能させることで,環オホーツク圏の科学的研究を強く推進してきた
センターは2024年3月で発足後20年を迎える.政治的背景のために観測が困難でデータの空白域であった環オホーツク圏の実態を明らかにすることを目指し,国内,ロシア,中国,米国など50以上の大学や研究・行政機関と連携し,研究機関ネットワークと観測網の構築を行い,数多くの国際共同研究プロジェクトを実施してきた.センターではこれまでにロシア極東海洋気象学研究所(Far Eastern Region Hydro-meteorological Research Institute; FERHRI)との共同研究を立ち上げ継続し,ロシアの調査船を使用した共同観測を実施してきた.この共同観測はロシアの排他的経済水域内における海洋観測の事実上唯一の機会となり,多数の国内外の研究者が参加し,当海域の海洋循環・物質循環の解明や古気候の復元などの成果に繋げてきた.また,アムール川河川流域の水文・物質循環の観測,サハリン北部の海氷・気象・沿岸観測,カムチャツカ半島の森林動態調査,エアロゾルモニタリング,山岳氷河研究などが,ロシア科学アカデミー極東支部太平洋地理研究所,同水生態学研究所,同火山地震学研究所などの研究機関との連携によって実施されてきた.宗谷暖流の研究では,海洋短波海洋レーダー,ドップラーレーダーの運用や,衛星観測,船舶観測,現場調査等を通し,道内水産試験場,漁業組合などと地域機関と連携し,環境変動モニタリングを進めてきた.また低温科学研究所が1996年より進めてきた海上保安庁との共同研究である砕氷巡視船「そうや」を用いた冬季南部オホーツク海の海氷域観測を,当センターが引き継ぎ,継続し実施している.この希少な海氷域の観測の結果,海氷の消長に関わる物理学的な知見や,オホーツク海の海氷長期変動,海氷が関わる海洋循環や生物地球化学的過程などが明らかになっている.これら海洋観測で得られた知見は,「環オホーツク情報処理システム」を用いた将来予測なども含めた数値シミュレーション研究の展開に利用されている.陸域山岳氷河観測では,国際共同研究として米国のアラスカ,ロシアのカムチャッカ半島においてアイスコア掘削を行い,水物質循環メカニズムの変遷を理解するための研究に用いられた.これらの氷河研究はその後,ヒマラヤやグリーンランドにおけるアイスコア研究へと発展し展開されている.また,「知床科学委員会」など国や地方が進める環オホーツク地域の自然理解と環境保全に対して積極的な貢献を行い,世界自然遺産「知床」周辺の海洋や陸面の観測を主体としたプロジェクトを立ち上げ,この地域の陸海相互作用の仕組みと変遷の理解を目指して研究を進めた.この知床周辺の取り組みでは,ゴミ問題などの社会学的な視点も含めて研究が進められた.このようにセンターでは,環オホーツク圏の理解を深化するための研究プロジェクトを牽引・推進し,その地球環境システムにおける役割を明らかにする点で成果を上げてきた.この20年間の研究で,環オホーツク圏では温暖化が進み,シベリア高気圧の急速な弱化にともない,オホーツク海季節海氷域の減少,海洋中層の温暖化と循環の弱化,オホーツク海から北太平洋への物質移送と生物生産,陸域雪氷圏の面的変化などにその影響が鋭敏に現れていることを示した点は重要な発見と言えるだろう.
本号の「低温科学」では,当センターが20年間で実施してきた数々の研究で得られた主な成果の一部と,当センターで始められた研究が発展し全国や世界を舞台に展開された研究などを,現センターに在職する研究者およびセンターを卒業し現在は第一線の研究者として活躍しているOB/OGによって執筆することにした.本稿の読者に,この20年間で広くセンターで実施してきた研究の軌跡と,その後,発展的に進められた研究について紹介できれば嬉しく思う.
「低温科学」 第82巻編集委員会
西岡 純・三寺史夫・白岩孝行・中村知裕・的場澄人・篠原琴乃
研究集会:知床とオホーツク海の海氷-海洋-物質循環-生態系の連関と変動
知床をはじめとするオホーツク海の海氷-海洋-物質循環-生態系の連関を明らかにするため、ここ数年南部オホーツク海の現場観測を集中的に実施してきた。本集会では、これらの研究結果を持ち寄って新しい知見を共有し、今後の方針を議論する。オホーツク海の多様で豊かな海洋環境が成り立つメカニズムの理解を目指す本研究集会の枠組みは、国連開発計画のSDG14「海の豊かさを守ろう」に掲げられた「海洋生態系の保全と持続的な海洋資源利用」の方向性を探る研究にもつながる。
日時:2023年11月27日(月)13:30-17:00
28日(火) 9:00-17:00
場所:低温科学研究所講堂+オンライン
研究論文:アムール川中流域に溶存鉄と溶存有機炭素を供給する永久凍土湿地の役割
Muqing Shi and Takayuki Shirawa (2023) Estimating future streamflow under climate and land use change conditions in northeastern Hokkaido, Japan. J. Hydrol. Regional Studies, 50, 101555. https://doi.org/10.1016/j.ejrh.2023.101555
当センターPD研究員の史穆清(Shi Muqing)さんの学位論文が出版されました。IPCC RCP2.6および8.5シナリオに沿った気象庁の予測気候値と、PANCESによる土地利用・土地被覆シナリオに沿って網走川の将来の流出量を分布型モデルによって推定しました。
(白岩)
観測速報:「2023年2月 巡視船「そうや」海氷観測速報SIRAS-23」を公開しました。
海氷観測速報一覧ページへ(出版物)
研究論文:アムール川中流域に溶存鉄と溶存有機炭素を供給する永久凍土湿地の役割
Tashiro, Y., Yoh, M., Shesterkin, V. P., Shiraiwa, T., Onishi, T. and Naito, D. (2023), Permafrost wetlands are sources of dissolved iron and dissolved organic carbon to the Amur-Mid River in summer. J. Geophys. Res.-Biogeosciences, https://doi.org/10.1029/2023JG007481
アムール川がオホーツク海に輸送する溶存鉄の供給源として、永久凍土をもつ湿地が重要であり、気候変動によって永久凍土が変化することによって河川に流出する鉄も変化する可能性があることを現地での観測から見出しました。
(白岩)
研究論文:地衡流シアー応力が卓越する沿岸フロントにおける陸棚上の鉛直循環
Yuan, N and Mitsudera, H. (2023): Cross-shelf overtuning in geostrophic-stress-dominant coastal fronts. J. Oceanogr., https://doi.org/10.1007/s10872-022-00661-6
沿岸域としては比較的深い大陸棚端において、深い混合層が発達するメカニズムが、大陸棚上の鉛直循環によるものであることを、数値モデルと論理的考察から見出しました。
(原、三寺)
環オホーツク地域とは、オホーツク海を中心とし、西は北東ユーラシアから東は北太平洋、北は北極圏から南は亜熱帯域にわたる地域と捉える。この環オホーツク地域では、近年温暖化が進み、シベリア高気圧の急速な弱化、オホーツク海季節海氷域の減少、海洋中層の温暖化、陸域雪氷圏の面的変化としてその影響が鋭敏に現れている。当センターは、環オホーツク地域が地球規模の環境変動に果たす役割を解明すること、また気候変動から受けるインパクトを正しく評価することを目的とし、その国際研究拠点となることを目指して設立された。これまで、短波海洋レーダの運用や、衛星観測、船舶観測、現地調査等を通し、オホーツク海及びその周辺地域の地球科学的研究と環境変動モニタリングを進めてきた。また、ロシアをはじめとする海外との国際的な研究ネットワーク構築を進め、国際的な観測がほとんど行われたことの無かった環オホーツク地域の陸域・海域・空域の研究を推進してきた。環オホーツク地域に存在する多分野にまたがる地球科学的な課題に挑戦するためには、分野を超えた研究を進める必要があり、当センターでは、専門の異なる研究者間が分野をまたいで有機的に連携し研究に取り組んでいる。当センターではこのような体制のもと、国内外の研究者とともにプロジェクトや共同研究を立ち上げ、牽引し、科学的課題に挑戦し、研究成果に結びつけることを目指し活動している。
センター長 西岡 純
お問い合わせ
〒060-0819 札幌市北区北19条西8丁目
北海道大学低温科学研究所 環オホーツク観測研究センター
E-mail: porc-info at pop.lowtem.hokudai.ac.jp