研究トピック

グリーンランド氷床に飛来するダストの起源
〜アイスコア中の微量
ダストから過去100年の変化が明らかに〜(助教 的場澄人、大学院生(当時)門田萌)

国立極地研究所の永塚尚子特任研究員を中心とする研究グループは、グリーンランド氷床北西 部の「SIGMA-D アイスコア」に含まれる鉱物ダスト(岩石由来の微粒子、図 1)の分析を行い、過去 100 年の間にグリーンランド氷床上に降下したダストの起源について、その連続的な変化を初めて 明らかにしました。

アイスコアに含まれる鉱物ダストの濃度や粒径は地球環境変動の歴史を読み解くための指標とな っています。さらに、鉱物ダストがどこから飛来したか、つまり、ダストの起源を明らかにすることは、過 去の大気循環や供給源となる場所の環境変動を知るための重要な手がかりです。しかし、極域のア イスコアに含まれる鉱物ダストは、量が少ないためにその起源を推定することが難しく、近年の温暖 期のダストの起源についてはこれまでほとんど明らかにされていませんでした。

本研究では、電子顕微鏡を用いて鉱物 ダストのサイズや組成を一粒ずつ解析す ることで、濃度が低い時期でもアイスコア 中の鉱物ダストの起源推定を可能としまし た。本成果により、SIGMA-D アイスコア の鉱物ダスト起源はグリーンランドの気温 変化の影響を受けて変動しており、温暖 な時期には雪や氷の融解によって露出し た氷床周辺の堆積物に由来する鉱物ダ ストが多く飛来していたことが分かりまし た。この成果は、Climate of the Past 誌に掲載されました。

環オホーツク観測センター出身の門田萌さんの修士論文の一部が論文になりました。

詳細はこちら(北海道大学プレスリリース)

Nagatsuka, N. et al. (2021): Variations in mineralogy of dust in an ice core obtained from northwestern Greenland over the past 100 years. Climate of the Past, http://doi.org/10.5194/cp-17-1341-2021


図 1: SIGMA-Dアイスコアに含まれる鉱物ダストのうち、ケイ酸塩鉱物のSEM画像。多数の黒い丸はフィルターの孔。