測定装置
蛍光寿命測定装置TCSPC
英語による詳しい説明はこちらにあります。
蛍光減衰曲線は、時間相関単一光子計数法(TCSPC)を用いて測定します(Ref, p. 33)。この方法は単一光子現象という稀に光子が観測されるような、励起光強度を最小化した励起条件での測定となるため、試料の劣化を避けることができます。
励起源:375 nmで発振する半導体レーザー(PicoQuant, LDH-P-C-375)を電源制御ユニット(PicoQuant, PDL 800-B)で駆動し、2.5MHzのパルス発振に設定しています。
光学系:試料からの蛍光に偏光特性を含まないようにするために、35.25度に偏光させて試料を励起しています(文献, p. 254, 方法5)。試料からの蛍光は1対の平凸レンズで集光し、偏光解消板を通して、分光器(分光計器, M10)に導入します。
信号処理:分光された蛍光成分をマイクロチャネルプレート型光電子増倍管(MCP-PMT, Hamamatsu, R3809U)で検出し、プリアンプ(Hamamatsu, C5594)で増幅した後、CFD(波高弁別器)でタイミング信号を取り出してから、TAC(時間-電圧変換器)のスタート信号として時間相関単一光子計数装置(Becker and Hickl, SPC630)に入力します。電源制御ユニットからの同期出力を、遅延回路とCFDに通し、TACのストップ信号として使います。これは逆接続と言われるものであり、TACのデッドタイムを回避することができるため、より多くの光子を計数することができます(文献, p. 45, p. 134)。
時間分解能:ベシクルを使った装置応答関数(IRF)の半値全幅 (FWHM)は、50 ps前後です。得られる減衰曲線はコンボリューション積分の形をしていますので(下図参照)、IRFを使って蛍光減衰曲線をデコンボリューションすることにより、12 ps程度の蛍光寿命までは有意な値として求めることができます。
時間分解蛍光スペクトル:励起光強度を一定にした条件で、各蛍光波長における蛍光減衰曲線を同一時間だけ積算します。そして、これら一連の減衰曲線を同一時間で結ぶことによって作成します。
文献: ナノ・ピコ秒の蛍光測定と解析法―時間相関単一光子計数法、Desmond V. O'Connor (著), David Phillips (著), 平山 鋭 (訳), 原 清明 (訳)、学会出版センター.