あおり運転などの迷惑行為やいじめなどの暴行動画などの投稿が,インターネット上で拡散し炎上する事案が増えていますね.皆さんもネットニュース等で見たことがあるでしょう.
これらの迷惑行為や違法行為はもちろん許されることではないです.法的な処罰や損害賠償などの責任を負うことは致し方ないでしょう.
しかし,そのような行為を行なった人に対し,個人が社会的な制裁を加えることはできるでしょうか?
例えば,行為者の個人情報がインターネット上で晒され,自宅や勤務先に抗議のメールや電話が殺到し,利用していたSNSに誹謗中傷が押し寄せる....これらの行為は,悪いことをした人が悪いのだから止むを得ない,という意見もあります.
「いい気味だ」「自業自得だ」「天罰を与えてやる」と考えてしまう気持ちもわからなくはありません。
しかし....個人が個人を罰することは許されるでしょうか.
法治国家では,違法行為を行なった人は裁判等により,法で定められた罰則で罪を償うことになっています.
「目には目を」とか,「復讐」は時代や国によっては認められていたこともありました。しかし,現代の日本では,犯罪者に対して,裁判等の正当な方法で罰する以外,個人が勝手に罰を与えてはならないのです。「盗まれたら盗めばよい」,「傷つけられたら傷つけてもよい」,という考えを皆がもっていたら,荒廃した社会に向かっていくことは簡単に想像できます。
もちろん,泣き寝入りをしろということではありません。
自分が被害を受けたのであれば,正当な方法で犯人に罰を受けさせるべきです。
しかし,自分の被害でも,他者の被害でも,正当な方法でなく,私的に制裁を与えることは,その行為自体が犯罪です。自分自身が罪を犯し罰せられることにもなりかねないのです。
もちろん,問題となる行動や犯罪を起こした人が悪いのには違いありません。しかし,晒された個人情報や誹謗中傷はインターネット上に残り続け,将来にわたりその人に影響を与え続けてしまいます.
他者を社会から抹殺する行為が許される行動なのか,私たちはもっと深く考えていく必要がありませんか...
暴かれ,晒された個人情報が,当事者ではない,全くの他人であったらどうなるでしょうか?
迷惑行為を行なった人と間違われた一般の人がインターネット上で制裁を受ける事案が増えています.
最近では,あおり運転の加害者の仲間と間違われた一般の人の個人情報が晒されSNSが炎上した事案もありました,
「この人なんじゃないか?」「顔や服装が似ている」「こいつに違いない!」などという確信のない情報が,あっという間にネット上に拡散し,個人攻撃が始まります。
「人違いです」「私ではありません」といくら説明しても,「ウソつけ」「死ね」「お前に決まってる!」などと次から次へ別の人から言い続けられ,ネット上にも誹謗中傷が書き込み続けられるのです。1人 vs 数万人?です。誹謗中傷してくる相手が誰であるかもわからず,いくら弁明してもきりがありません。精神的な苦痛や金銭的な損害がどれだけになるか,想像するだけでもおそろしいことです。
最初に書き込んだ人は「もしかしたらこいつかも・・」という程度の,軽い気持ちだったのかもしれません。でも,それがいつしか「こいつが犯人だ!」となっていきます。「軽い気持ちだったから許される」ようなことではないのです。他人の情報をネット上に晒すということは,どれだけ重大で危険なことなのか,よく考えなければいけません。
犯人に思い当たるような情報を持っているなら,ネット上ではなく,しかるべき関係機関に情報提供するのがよいでしょう。
インターネット上では拡散は低コストですが,修正は高コスト... 一旦広がった情報は間違った情報と分かった後も残り続け,被害者の生活に影響を及ぼします.数年前の誤った書き込みが今だにネットから消えず,誹謗中傷を受け続けたり,再就職などができないなど,苦しみ続けている人もいます.
インターネットは火がないところに煙が立ちかねない場所です.だれかのほんの少しの軽はずみな発言が,思いもよらず人の一生を左右させてしまうことがあり得ます。
書かれている情報を鵜呑みにせず,「その情報の発信源や真偽を確かめることはできるか」「その偽情報を拡散した場合誰が責任を取るのか」をよく考えるようにしましょう!