本郷図譜とは

「図鑑」はある意味その生物の一般の認識を決める存在とも言えます。20世紀末の菌類図鑑は携帯版から地方図鑑に至るまで本郷次雄滋賀大名誉教授の監修によるものが大多数を占めていました。

 それらの中には山と渓谷社の「日本のきのこ」や後に詳述する保育社の原色図鑑のように、今なお改定を重ねられたり、あるいは復刊されて愛用されている図鑑もあります。

 日本の菌類研究が論文を丹念に読む研究者だけでなく広く愛好者も担い手となるための基礎はこれらの図鑑にあるといっても過言ではないでしょう。

2000年10月27日 三重県宮川村にて

本郷氏が描いたVolvariella bombycina

国立科学博物館草創期から東京を中心にきのこの普及を図った今関六也氏とともに、本郷氏は関西を中心に戦後のきのこ界を発展させました。

今関氏との共著で 1957 年に保育社から『原色日本菌類図鑑』を刊行した当時はまだ若手研究者であった本郷氏ですが、続いて発行されたたくさんの図鑑は全国の愛好者に影響を与えた図鑑は菌類アマチュアの必携の書になりました。これらの図鑑には本郷次雄氏が描いた原色図がふんだんに使われています。

本郷次雄氏が描いた2000枚を超えるきのこの精密な図譜は現在、大阪市立自然史博物館に寄贈され、学術的な利用に供されています。