私たちのからだは,実にたくさんの細胞からできています。これらの細胞は固有の構造や性質をもつ個性派の専門家であり,それぞれ集合して組織・器官・器官系を構築し,複雑かつ多様な生命活動を分担しています。この様な,細胞社会とも言える私たちのからだには,からだを全体的に制御する細胞間情報伝達のしくみ(全身制御系)と,個々の組織・器官内での細胞活動を制御する局所的な細胞間情報伝達のしくみ(局所制御系)とが存在し,精緻な細胞間情報伝達網を構築しています。
下垂体(脳下垂体ともいう)は,脊椎動物の脳の直下に垂れ下がるように存在する器官であり,成長,代謝,生殖,免疫などに関わる多種類のホルモンを分泌する重要な内分泌腺です。下垂体から分泌されるホルモンは下垂体ホルモンと総称されますが,今日では下垂体だけでなく,からだのさまざまな組織・器官でもつくられていることがわかってきました。しかし,下垂体ホルモンの下垂体外発現の生理学的意義(働き)については,不明な点が多く残されています。
私たちは下垂体ホルモンの下垂体外発現に注目し,全身制御系と局所制御系の連携による生体機能制御に興味を持ち研究を進めています。
研究紹介の動画のURL→https://youtu.be/rGuSb9NzCHw
私たちヒトは朝起きて夜寝ます。当たり前のことですが、なぜでしょう。生物にはリズムをもった生理現象が多く見られますが、その仕組みにはわかっていないことが多くあります。たとえば、生物は光環境という外部情報を、体内時計や生物時計として体内の情報に変換する仕組みをもっています。そしてその生物時計によってさまざまなホルモンが制御され、リズムをもった生理現象が引き起こされると考えられます。しかしこのメカニズムの詳細についてはまだわかっていないことが多くあります。私は哺乳類の内分泌による生体制御メカニズムに興味をもち、脊椎動物の主要な内分泌器官である下垂体の研究をしています。下垂体のホルモンも生物時計の制御を受けて日内リズムを示すので、リズムをもった生理現象の制御に関わっていると期待して研究を進めています。