鳥類の羽は,ヒトの毛と同様にケラチンを産生・蓄積した表皮細胞の死細胞からなります。「羽は鳥類を特徴づける動物界で最も精巧な皮膚付属器」,この定義は今や古くさいものとなりました。白亜紀の大型肉食恐竜ティラノザウルス(Tyrannosaurus rex)にも羽毛が生えていたことが近年の化石研究でわかったからです。鳥類は,今日では獣脚類恐竜の末裔とみなされています。

鳥類の羽は実に興味深い。その形や色模様には多様性がみられ,生えるからだの部域で異なっていたり,個体成長に伴って変化したり,雌雄差があったりします。このことは,羽がさまざまな生物学的情報の統合により形成されることを如実に物語っています。個体成長の情報,例えば子供と大人の違いを伝える情報とは何なのでしょうか。からだの部域の情報とは,雌雄差形成にはたらく情報とはどのようなものでしょうか。また,これらのさまざまな生物学的に重要な情報を統合して,羽の形や色模様を表現するしくみとはどのようなものなのでしょうか。さらに,羽形成は,個体成長に伴った生えかわりや季節的な換羽に伴って全身的に起こることもあれば,事故や病気で失った羽の再生のように部分的に起こることもあります。羽形成はどのように調節されているのでしょうか。考えるほど疑問が生まれ興味は尽きません。

鳥類の羽は再生します。羽を抜いても,その環境に応じた羽形成が羽包で再現されます。また,羽形成は局所制御系がはたらくだけでなく,ホルモンなどによる全身的な制御を受けます。従って,全身制御系と局所制御系の連携による生体機能制御のしくみを解析する優れたモデル系と考えられます。

私たちはニワトリの羽形成における以下の課題に取組んでいます。