今回で3回目となったカブトムシ幼虫掘り出し隊。大雨予報でしたが、今回も開催時間の午前9時~11時は天気がどうにかもってくれました。昨年と同じく、今年も多くの方にご参加いただき、14組、計36名が掘り出し隊員になってもらいました。隊員の皆さんには、掘り出したい気持ちを抑えてもらって、まずは座学。カブトムシの幼虫を沢山掘り出せるのはなぜなのか、どういう環境がカブトムシにとって必要なのかについて、お話しさせていただきました。弊会がミヤマシジミのために草を刈り、刈り草をたい肥にしていることだけでなく、その近くで別のグループ「理想の森プロジェクト伊那谷」さんが里山整備活動を継続されていることも、知ってもらうことができたと思います。
学習会の後は、堆肥場に移動して、みんなで一斉にカブトムシ幼虫を掘り出しました。今回の掘り出しは昨年よりも1週間ほど遅く、気温が高いためなのかはわかりませんが、カブトムシは堆肥の表面近くで多く見つかりました。子供たちの「見つけた!」や「これはオスメスどっち?」の声があちこちからあがり、昨年から準備してきた甲斐があったというものです。3桁には惜しくも届きませんでしたが、オスが55匹、メスが44匹の計99匹の幼虫を掘り出すことができ、子ども1人につき5匹を持ち帰ってもらうことができました。堆肥と幼虫を水槽に目一杯詰めて満足そうな子供たちに、最後にミヤマシジミの幼虫を観察してもらいました。今年は昨年よりも発生が遅いものの、堆肥場の脇のコマツナギで2,3,4齢の幼虫を10匹近く確認できました。コマツナギがないとミヤマシジミが生息できないということをわかってもらったので、無償配布したコマツナギの苗は全てお持ち帰りしてもらえました。カブトムシからミヤマシジミへと、生き物に対する関心のバトンが繋がることを願い、イベントは終了となりました。
参加者が帰り、片付けが終わった後は、会員と飯島町生涯学習センターの担当の方の計8名で、1時間ほどかけてコマツナギの植え替えを行いました。総会の日(4月19日)にタネをまいて1か月強が経ち、数センチに成長した実生を1つずつ、堆肥を入れたポットに移していきます。ポットに堆肥を詰める担当と、そこに実生を植える担当とが、効率よく作業したおかげで、種まきケース1箱(200ポット程)を終えることができました。しかし、ケースは10箱以上あります。これから、会員の皆さんは、自宅で時間を見つけて少しずつポットに植え替えていくことになります。大変な作業ですが、コマツナギが地域内に増えていけば、ミヤマシジミがもっと身近な蝶になっていくはずです。カブトムシのお陰で栄養たっぷりに仕上がった堆肥を武器に、弊会ではミヤマシジミが飛来する環境を増やしていきます。
真剣に話を聞いてくれている隊員の皆さん。アイドル昆虫カブトムシは、やはり無敵です。
いざ掘り出し!開始すぐに続々とカブトムシの幼虫が見つかり、歓声があちこちから聞こえてきました。
刈り草を堆肥にしてくれているのはカブトムシだけではありません。写真のオケラやミミズなども見つかりました。
丸々と太ったカブトムシの幼虫。あと2か月ほどすれば大きな成虫に大変身してくれることでしょう。
オス・メスを確認しながら、掘り出した幼虫の合計をみんなで数えていきます。
最後にミヤマシジミの幼虫も観察。コマツナギに潜むクモにも注目が集まっていました。
最後の最後に、コマツナギの苗を頒布しました。種まきから1年が経った苗はどれもしっかりしています。
スタッフは居残りで、植え替え作業。出来上がった苗は、会員で分担して夏の植栽会まで育てます。
前日の大雨から一転して晴れ渡り、晴れ男か晴れ女、それとも両方の会員の方々のおかげで、今回も無事活動を実施することができました。今回は、昨年コマツナギを植栽した飯島町文化館で、コマツナギ以外の草をむしる作業を9名で、刈り草堆肥を作っている飯島町本郷地区で、堆肥の切り返し作業を3名で、同時進行で行いました。
昨年設置した植栽区は、土が痩せていそうな芝地を選んだつもりでしたが、場所によって、アカツメクサが優占していたり、オニウシノケグサやスイバが多かったりと、植生は様々でした。その結果、コマツナギが元気に葉を茂らせている植栽区もあれば、他の植物に追いやられて、植えた時よりしょぼくれている植栽区もありました。この差が今後のミヤマシジミの定着に及ぼす影響を調べるとともに、文化館で安定して個体群が維持されるような管理を目指していきたいと思います。会員の方からは、この場所はなだらかな斜面や平地が多く、膝をつけての作業ができるので、これまで作業してきた急傾斜地よりも作業が楽だったとご意見いただきました。ただ、昨年1000株ほど植栽したせいで面積が広く、作業の予定時間を40分ほど超過してしまいました。
堆肥の切り返し作業は、重機で切り返す人、堆肥に水をかける人、カブトムシの幼虫を回収する人の、3人で役割分担がうまくでき、順調に作業が進みました。カブトムシ幼虫は見つけられただけで40匹以上いたので、24日の掘り出しイベントでは子供たちが十分に楽しんでくれそうです。切り返し中に、少し腐熟が進んだ刈り草をタイワンタケクマバチが飛び回って集めており、堆肥場は色々な生き物の集まる場所になっているようです。
今回も若い助っ人が来てくれたので、自己紹介タイムをとりました。様子を見に来た近所の方も、少しの間作業を手伝ってくれました。
みんなで真剣に作業しました。普段の草刈りとは違い、ゆっくりとした時間が流れており、お喋りも弾みました。
カブトムシを探しながら、慎重に堆肥を掘り返します。重機の奥に見える枯草の巨大な山も今回掘り返しました。
カブトムシは堆肥の中で集中分布しているような印象です。堆肥の中の世界を想像しながら、丸々育った幼虫を数えて、リリースしました。
今年度の最初の活動として、2025年度の総会を執り行いました。当日は桜の花びらが舞う暖かい1日となり、弊会の前途は明るい気がしました。会員の皆様はお忙しい合間を縫って13名ご出席くださりました。総会第1部では、昨年度の事業報告や会計監査、今年度の事業計画など、全ての議題が承認され、会員の方から有意義なご意見も頂戴しました。今年度は、刈り草堆肥を培土として育てた在来植物の苗を販売する事業を試行的に始めていきます。また、活動にご参加いただいた方に交通費や謝金を支払うことも決まりました。総会第2部では、飯島町で制定された飯島町生物多様性保全条例についてや、弊会が今後期待されていく役割について、参加者で議論を深めました。弊会は70歳代が主軸なので、会員一人一人が若い方を巻き込んでいく努力をしていこうという話になりました。
総会後の勉強会では21名で、井原道夫さんから伊那谷南部のミヤマシジミについて、平澤正典さんから宮田村でのアサギマダラの里の取り組みについて、お話を伺いました。井原さんによると、阿智村でかつて行われた圃場整備事業で、コマツナギの植え戻しを行い、ミヤマシジミの絶滅は阻止できたそうです。しかし、その後の農業者の世代交代によって、地際での草刈りが常態化し、絶滅を招いてしまったようです。伊那谷南部で重要な生息地域であった阿智村では2023年に発生が途絶え、伊那谷南部は絶滅状態に近いという悲しい現実を教えていただきました。平澤さんは、ご自身が当時の役場職員として宮田村の圃場整備事業を深くかかわった経験について触れ、村内にわずかに残った豊かな環境を産業や観光に結び付けて守っていく仕組みづくりを詳しくお話ししていただきました。自然共生サイトの申請についてのお話も、近隣市町村にとってとても参考になる内容だったのではないでしょうか。
勉強会後のタネ蒔きワークショップでは、春の暖かさの中で、コマツナギのタネを培土に蒔いていきました。昨年のちょっとした実験をもとに、刈り草堆肥の上に赤玉土を敷き詰め、栄養十分だけど雑草が生えづらい培土にできたかと思います。これから8月まで植え替えや水やりで大変ですが、スクラムを組んで頑張っていきましょう!
総会の様子。会場の後ろには昨年度に活動に関わってくれた飯島小学校6年1組のポスターを掲示させてもらいました。
勉強会の様子。伊那谷のミヤマシジミの現状や、地域で守っていくことの重要性を再確認できました。
井原さんが持ってきていただいた標本箱。たっぷり時間をかけて眺めていたい素晴らしいコレクションでした。
ワークショップからは子供たちも参加してくれてワイワイ楽しめました。芽を出し始めるのはあと1週間くらいでしょうか。