300回 三崎談話会

300回 三崎談話会

日時:2020年1月16日(木)16時30分~

場所:東京大学大学院理学系研究科・附属臨海実験所・セミナー室

講演者:前川清人(富山大学学術研究部理学系・准教授)

懇親会: 18時30分〜 場所未定 



前川清人(富山大学学術研究部理学系・准教授)

「シロアリの兵隊カーストを生み出す特殊な脱皮を調節するしくみ」


 シロアリの社会性の進化時期は,アリやハチよりも数千万年早く,およそ1億5千万年前だと考えられています。多くの独立した系統学的な解析により,現生のシロアリはゴキブリ内の単系統群であり,家族性の社会構造をもつ腐朽材食性のキゴキブリが姉妹群であることがほぼ確定しています。雌雄の成虫と子虫から成るキゴキブリの家族構造は,一般的なシロアリのコロニー発達の初期段階によく似ています。明確に異なる点は不妊の兵隊の有無で,シロアリでは一部の未成熟な個体から兵隊が分化します。兵隊は,特徴的な形態変化(武器の形成)を伴う脱皮を経て分化するため,どのようなしくみで発生が調節されているのかは古くから興味を集めてきました。ただし,兵隊に分化する個体はコロニー内のごく一部だけなので,分化前から個体を特定し,自然条件下で分化過程を観察することはほぼ不可能でした。しかし近年,コロニー発達の初期段階において,兵隊に分化する予定の個体が特定できたため,分化の要因や分化過程の変化を詳しく解析できるようになってきました。本発表では,これらの近年の成果や関連する研究動向を中心にお話ししたいと思います。歴史ある談話会の節目の回に相応しい発表を目指します。