日時:2019年7月11日(木)17時00分~
場所:東京大学大学院理学系研究科・附属臨海実験所・セミナー室
講演者:広瀬雅人(北里大学・海洋生命科学部・助教)
懇親会: 18時30分〜 会場未定
広瀬雅人(北里大学・海洋生命科学部・助教)
「コケムシの多様な形態と生活様式はどのように生み出されてきたのか―群体性にみる種の多様性と最近の系統分類から―」
群体性は数多くの動物門にみられる体制の一つで、無性的に生じた多数の個虫が生体組織でつながった群体を形成することで特徴づけられる。コケムシは貝殻や海藻の上に固着することで知られる群体性の無脊椎動物の一門で、体長1 mmにも満たない個虫が触手冠を用いて水中の微生物や有機物片を摂食する。海産種の多くは炭酸カルシウムの虫室から成る骨格を形成し、その形態は古くから重要な分類形質として利用されてきた。コケムシはまた、古生代から知られる化石記録を含めた約20,000種すべてが群体性であることから、群体としての生き方に特化した動物門であるとも言える。その形態や生活様式は実に多様であり、硬い固着基質が存在しない砂泥底や間隙環境、さらには貝殻の内部など、ありとあらゆる環境で独特な生活様式を獲得している。これら群体性に特化した動物門にみられる多様な生き方は、群体性を切り口として動物の進化を論じる上でも興味深いテーマである。本講演では演者が手掛けてきた研究内容を中心に、コケムシの群体のかたちと生活様式の多様性を紹介するとともに、その種の多様性と系統分類について最新の知見を交えながら、コケムシの魅力に迫りたい。