ここでは、ゲーム特有のプレイヤーが“体験”するというメカニズムをゲーム以外の領域に活用していく取り組みを指す。
また、ゲームやデジタルエンタメ特有のCG表現方法(ビジュアル)で実体験と同じくらいの体験記憶を刷り込む。
ゲーム制作で意識されるUI設計により、自分の意思通りに手足を動かす感覚で体験感覚を得させる。
単純な繰り返し行為を飽きずに楽しい気持ちで行わせるゲームノウハウで、記憶の刷り込みや操作の上達、繰り返し作業のモチベーションの維持を図る。
その目的は、ゲームの要素を社会活動やサービス開発に組み込むことにより、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させることである。
ゲームメカニズムを製品サービスに展開する上で、次のゲーミフィケーション3要素を把握すると理解に役立つ。(出典:ゲーミフィケーションとは何か徹底解説!SSAITSのブログ)
•課題(クエスト、ミッション、ランキング、難度設定)
•報酬(バッジ、経験値、レベルアップ、ポイント)
•交流(チャット、対戦、アバター、ソーシャル)
ゲーミフィケーションとは、もともとゲームではない製品サービス・広告・教育などの活動にゲームのメカニズムを取り入れ、『参加者のモチベーションを維持』『意欲を引き出し』をして、(もともとゲームではない)活動全体をゲームとしてデザインすること。
一方、シリアスゲームは、ゲームという製品サービスに社会課題などのテーマを取り上げることで、エンタメ以外の目的で利用されるゲームのこと。
この項では、製品サービスへの展開に於いてゲーミフィケーションで用いるゲームメカニズムの「具体的手法=要素」について記述する。
•[ポイント]:ゲームの得点や獲得ポイントといった数値目標となる要素。
•[報酬]:バッチやステッカー、アイテムといったプレイヤーがゲーム中で得られる報酬要素。
•[ランキング]:ハイスコアランキングや、アバターの容姿・装着物・称号等でのレベルといった他者と比較で競い合う要素。
•[チュートリアル]:説明書等を熟読することなく、ゲーム内で操作の仕方やルールを理解させる手引き要素。
•[制限]:時間的な制限や、利用できるアイテム等といった数的な制限をつける要素。
これらの要素を組み合わせて、利用者のエンゲージメントや利用意欲を高めたり、製品サービスへの興味関心の喚起を目論む。
ゲームの要素を教育やビジネス等への製品サービスへ取り入れていくためのデザインプロセスを9個のブロックにして考えてみる。
それを視覚的に表したのが次の図。ゲーミフィケーションによって解決しようとする課題を解決するためにどのようなゲーム要素を取り入れるべきかを考えるのに用いる。
出典:ゲームにすればうまくいく/深田浩嗣
『自発的な学びの促進』『楽しみ熱中させる』『レベルアップ・自己成長を実感』『複雑な内容を理解』『実践力も鍛える』を狙う。
業務プロセスのトレーニングを目的としたゲームで作業工程を楽しみながら学べる仕組み。 ⇒作業スタッフのスキルを測るシステムで、スキル習熟の速度向上図る。
危険を伴う作業従事者向けにゲーミフィケーションを活用したトレーニングを施し安全意識を高める仕組み。⇒わずか数分間のゲームをトレーニングに取り入れ繰り返すことで、安全手順の重要性を認識でき、インシデント大幅低減効果を図る。
新人や外国人従業員向けに業務の基本的な作業を体験できるシミュレーションゲームを導入。顧客からの依頼にどのように対応するかでスコアが表示されるシステムでゲームを通じて基本的な応対を学べる仕組み。⇒単純作業に従事するスタッフのモチベーションや日本語理解が不自由な外国人の情報把握向上を図る。
英語コミュニケーション力を必要とする様々な職場に於いて、完了アイテムや学習時間の達成数に応じてゲーム報酬システムと結果のシェアでゴールを目指す意識を高める狙い。⇒SNSを通じて、知人と競ったり、楽しみながら取り組むことができるだけでなく、苦手な問題を攻略したいという気持ち向上を図る。
『従業員のやる気向上』『企業への従業員のエンゲージメント アップ』『従業員による自主的な取り組みや工夫活性化』が狙い。
スタッフの仕事を評価し、点数に応じてポイントやバッジを授与。バッジを集めると報酬を得られるシステム。⇒さまざまなゲーミフィケーションで、スタッフのやる気の引き出しを図る。
業務結果に応じて獲得ポイントを可視化し、自己の組織貢献を実感させる(業務に対するモチベーション向上)。⇒ゲーム画面をきっかけとしたスタッフへの声掛け増加など「職場コミュニケーションの活性化」の効果を図る。
業務実績をゲーム的に視覚化して楽しくスキルアップ。職場の幅広い年齢層ににも受け入れられるデザインの工夫。複雑な情報処理演算をデータベース連携で解消して軽量化してスマホでの運用が出来るシステム。⇒従業員のモチベーションや業務意識の向上を図る。
膨大な情報のなかで、自社のサービスやコンテンツにユーザーを集め、長く深く留まってもらうことでのエンゲージメントの向上を狙う。
ゲームユーザーの特徴を4分類したバートルテストを基準に施策を検討していく。
アーチバー:達成を求める⇒課題目標達成報酬収集
キラー:競争を求める⇒勝負・数値で他者に勝つ
ソーシャライザー:交流を求める⇒他者との交流を楽しむ
エクスプローラ:探検を求める⇒新情報・新発見を喜ぶ
出典:Mocchi press
“おもしろい内容”でなければ、ゲーミフィケーションは失敗する!
取って付けたようなゲーム要素を付加しても、利用者が煩わしく感じてしまっては逆効果。
また、全ての者にとって魅力的なゲームといったものは存在しない。
研究の背景・現状
これから急速に増加すると見込まれるシニア層の課題として『健康で長生き』というテーマがクローズアップされている。 一方で、高齢化の進展とともに、認知症患者数も増加している。「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」の推計では、2020年の65歳以上の高齢者の認知症有病率は16.7%、約602万人となっており、6人に1人程度が認知症有病者と言え、介護者の負担も問題となっている。 現状、薬剤による進行抑制や治療が行われているものの、高齢者に身体への負担があり、副作用および認知力の低下による飲み忘れや過剰摂取の懸念も取りざたされている。 また、ウォーキングや軽い運動による発症予防や治療の取り組みも行われているが、単調な繰り返しは途中で取り組みを止めてしまい継続しないという課題もでている。 そこで、これまでのゲーム制作経験で培ったゲーミフィケーションノウハウを活用して、副作用による身体への負担が少なく、楽しみながら治療を継続できることで 介護家族の負担を軽減し、社会の高齢者課題の解消に役立つものと考える。
研究の計画
本研究では、以下の方法で認知症の発見と軽度認知症からの進行を抑制するためのプログラムを実践・検証する計画である。
① “加齢由来”の物忘れか“認知症発症”の物忘れかをゲーミフィケーションテストで予備判定
② 認知症の進行ステージをゲーミフィケーション_スクリーニングテストで予備判定
③ 反射運動神経力の減退度合をゲームをプレイした結果から自動判定
④ 判定結果より改善プログラムの提案と実施を行い、ゲーミフィケーションで楽しく続けられる仕組みを提供
なお、治験に当たっては、医療介護機関およびシニア介護施設の協力のもと、医学的見地からメトリクス検証をしていく。 現段階では提携先として愛知県大府市ウェルネスバレーおよび国立長寿医療研究センター等の協力を予定している。
期待される研究成果
1.シニアの抱える症状発見問題のソリューション
[現状] 対象者の自尊心等が障壁となり診断テスト受診が進まない。
[研究成果] 一人で楽しく簡単にテストできるので、自尊心も傷つけず、診断機会の向上を図れ、発症の早期発見に繋がる。
2.認知力や反射運動神経力低下を抑止・改善するためのソリューション
[現状]改善プログラムが、単調で飽きる等の理由から途中で放棄されがち。
[研究成果] ゲーミフィケーション効果により楽しく継続できるため、改善取り組みの
失敗が低減される。
マイルストーン
STEP1 では、治験で効果の見込めるゲーミフィケーションコンテンツを1つ以上制作して、動作検証まで進める。 実装されたアプリケーションを治験者が支障なく利用できるか、利用によってどの様な変化がみられるかまでを確認するところまで進捗させる。
STEP2 では、アプリのバリエーションを複数種類実装して実際に治験に臨 める段階まで仕立てる。 治験者に、このアプリパッケージを用い実験に参加していただき、ゲーミフィケーションコンテンツの利用にあたって問題ないことを検証する。 合わせて基本的な治験環境を整備して、目的のデータが取れるところまで進捗させる。
STEP3 では実際に数か月にわたる治験者が参加する実験で、ゲーミフィケーションコンテンツ の効果検証を行う。 並行して、症状別に効果的なアプリケーションを複数種類制作実装して、各種治験デ ータを得られるようにするところまで進捗する。
STEP4 では本研究目的であるシニアの認知症発症予防効果検証および軽度認知症の進行抑制効 果を1年にわたって実験データを取り、本取り組みの効果を検証する。 本研究と投薬や運動・食事療法の併用により認知症状の発症および進行抑止がどこまで相乗効果を高められるかを明らかにする。
研究の背景・現状
現在、日本人の英語力は世界55位と言われており、国際化に対応するためにも早急が英語力強化を図る必要性に迫られている。 そんな中で日本の市場規模の大きさから普段の生活下では、全て日本語だけで物事を済ませることが出来てしまい、英語に触れる機会が少ない状況となっている。 また、諸外国と比較して日本語と英語の言語体系がかけ離れているため英語習得に不利ともいわれている。 英会話という観点から考察すると、近年インバウンドで外国人観光客数は増えてきたとは言え、店舗や観光業に従事する者でない限り直接英語ネイティブな人との会話機会に恵まれてはいない実情もある。 ビジネスを中心に今後益々英語力を求められる社会になっていく中で、英語苦手意識のある者に「成果が実感できるまで途中で挫折せずに効率よく英語習得を続けられる方法の一つのソリューション」としてゲーミフィケーションを活用した英語学習アプリケーションの有効性研究に至った。 現在、英語力を必要としている日本人の多くは、既にゲームプレーに馴染んでおり、ゲーム感覚で英語を学び、英語に触れる機会や時間が増える事で効果が見込めるものと考える。
研究の計画
本研究では、以下の方法で英語力を向上させるアプリプログラム開発の効果を実践・検証する計画である。
① 第一段階で最もベーシックな英単語・イディオムの語彙やスペルを習得数を増やすプログラム
② 第二段階で習得した英単語・イディオムを組み合わせて簡易な英語の文章作成能力を習得するプログラム
③ 第三段階でコミュニケーションロボット相手に英語での会話音声聞き取りを習得するプログラム
④ 最終段階でコミュニケーションロボットと英語で音声会話を続けられる能力を習得するプログラム
なお、治験に当たっては、本学(名古屋国際工科専門職大学)の英語科目を教えられておられる先生方と様々なレベルの英語能力を有する本学学生の協力のもと学習効果や継続意欲維持の検証を行っていく予定。
期待される研究成果
1.英語塾などで生身の人と英会話するのを億劫がるシャイな日本人の学習機会を増やす
[現状] 英会話に苦手意識を持つ者が、生身の人相手に英会話をすることに恥ずかしさや相手の反応を恐れて英会話機会持てない。
[研究成果] コミュニケーションロボット相手に行う英会話では、詰まったり間違ったりすることに恥ずかしさを感じずに学習を行う事ができ、自然と英語に触れる時間が向上する。
2.面白いと感じて続けられる学習プログラムで途中挫折率を低減する
[現状]これまでの学習ツールでは、何らかの理由により途中で挫折してしまうケースが多い。
[研究成果] ゲーミフィケーション効果により楽しく継続できるため、途中で挫折して英語学習を止めてしまう率が低減する。
マイルストーン
STEP1 では、治験で効果の見込めるゲーミフィケーションコンテンツを1つ以上制作して、動作検証まで進める。 実装されたアプリケーションを治験者が支障なく利用できるか、利用によって学習意欲向上意識が高まるかまでを確認するところまで進捗させる。
STEP2 では、アプリのバリエーションを複数種類実装して実際に治験に臨める段階まで仕立てる。 治験者に、このアプリパッケージを用い実験に参加していただき、ゲーミフィケーションコンテンツの利用にあたって問題ないことを検証する。 合わせて基本的な治験環境を整備して、目的のデータが取れるところまで進捗させる。
STEP3 では実際に数か月にわたる治験者が参加する実験で、ゲーミフィケーションコンテンツ の効果検証を行う。 並行して、利用者の短所別に効果的なアプリケーションを複数種類制作実装して、各種治験デ ータを得られるようにするところまで進捗する。
STEP4 では本研究目的である英語学習統合プログラム効果を1年にわたって実験データを取り、本取り組みを検証する。 またこのプログラムのフレームワークを他のテーマへの学習応用とその効果について考察する。
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【STEP1】2021年度の取り組み
『ゲーミフィケーション』有効性認知拡散のために、具体的な英単語習得アプリを作成-実際にプレイ体験を実施。
これまでの英単語習得法と比較して”楽しく”飽きずに””何度も”英単語に触れる機会を増やして学習能率が向上が実感出来ることを検証。
学習者(主に本学学生)への「ゲーミフィケーションの仕組み」と「その有用性」についての理解促進も目論んでいる。
※学習アプリの内容説明の記載は、下のゲーム画像をクリック。
研究の背景・現状
これから急速に増加すると見込まれるシニア層の課題として『健康で長生き』というテーマがクローズアップされている。 一方で、高齢化の進展とともに、身体の健康維持の課題もクローズアップされる状況にある。近年、高齢化の進展に伴って高齢人口のさらなる高齢化が進み、その影響で寝たきり人口の絶対数は増えていくことが予想される。高齢者が健康で自立生活できることに特化した研究が益々求められるようになるものと予測される。 地域包括ケアシステムなどの整備が推進されるなか、そのシステムの中で人が健康でよりよい生活を営むことができることが大切である。寝たきりで手厚い介護が必要となると自分の意志で自由に物事を処理できず、精神的にも辛く幸せな老後を送っているとは言い難くなる。そうなる前に身体の健康を維持する基盤となる足腰の筋力低下抑制のためのトレーニング機器について、途中で挫折せずに続けられ結果に結びつき、かつ高齢者同士のコミュニケーションの活性化にもつながるアミューズメント要素をを備えた健康促進のプログラムが求められているものと考える。
マイルストーン
本研究では、以下のステップで高齢者施設のおける利用者の足腰の衰え抑制及び利用者間のコミュニケーション活性化のためのプログラムを実践・検証する計画である。
① 施設内で楽しく続けられる足腰鍛錬プログラムの提案
② プロトタイプにて被験者を対象とした効果検証
③ プログラム導入による高齢者同士のコミュニケーション活性化効果検証
④ 健康維持プログラムを楽しく続けることが出来る製品サービスを提供
なお、治験に当たっては、医療介護機関およびシニア介護施設の協力のもと、医学的見地からメトリクス検証をしていく。 現段階では提携先として愛知県大府市ウェルネスバレーおよび国立長寿医療研究センター等の協力を予定している。
Octalysis: Complete Gamification Framework - Yu-kai Chou (yukaichou.com) 人間を目標に向かって強く突き動かす要素コアドライブフレームワーク
⇒ 8つのコアドライブを解説|Sayu Hayashida|Monstar Lab, Inc.|note
10才からはじめるプログラミング図鑑たのしくまなぶスクラッチ&Python キャロル・ボーダマン 山崎正浩/創元社 isbn978-4-422-41415-7
親子で学ぶはじめてのプログラミング Unityで3Dゲームをつくろう! 掌田津耶乃/マイナビ出版 isbn978-4-8399-6189-3
ゲーミフィケーション<ゲーム>がビジネスを変える 井上,明/NHK出版 isbn978-4-14-081516-8
GAMIFY ブライアン・バーク 鈴木素子/東洋経済新報社 ASIN:B01AHLET94
ゲーミフィケーションでつくる!「主体的・対話的で深い学び」 中村絵乃/横山験也 他/学事出版 isbn978-4761923037
幸せな未来は「ゲームがつくる」REALITY IS BROKEN ジェイン・マクゴニガル 妹尾堅一朗/早川書房 ISBN978-4152092298
この書籍は、ゲームクリエイターを目指す方々には是非通読して頂きたい良書である。 単に”ゲーム好き”とか”ゲームプレイヤー”の人は読んでもあまりピンとこない内容かもしれないのであるが、ゲーム創作者にとっては改めて思い知らされる面白さ・楽しさの追求ポイントやゲームメカニズムを社会課題のソリューションに活かすヒントが様々語られている。
ゲーミフィケーション<ゲーム>がビジネスを変える 井上明人/NHK出版 ISBN 978-4140815168
ゲーミフィケーションの黎明期(2012年)に発刊された「ビジネスへのゲームメカニズム導入」について解説しているゲーミフィケーション知識のベーシック書籍。
ゲーミフィケーションの歴史(wikipedia.org)
ゲーミフィケーションという用語は2008年にコンピュータ・ソフトウェアの文脈で初めてオンラインで登場した。 その後一般には広まらなかったものが、2010年にゲームの社会的/報酬的側面をソフトウェアに取り入れることを指す意味で広く普及した。 このテクニックはベンチャーキャピタリストの注目を集めた。
ゲーミフィケーションは、ゲームデザイン要素やテクニックをゲーム以外に適用する従来の研究と密接に関係していると考えられている。
日本においては、「ゲーミフィケーション」の商標を株式会社ジースト代表取締役の神馬豪氏が取得している(商標 第5884411号(151))。
ゲームにすればうまくいく 深田康嗣/NHK出版 ISBN 978-4140815366
本書は、実務家の深田氏の著作ということで、身近な事例を様々挙げてゲームメカニズムをそれぞれの事業に活用することで上手くいったことを説いている。内容が読み物の体を取っているので、ゲーム創作者でなくとも十分理解納得しながら読み進めることが出来る。気軽にゲーミフィケーションの実例に触れられる『ゲーミフィケーション』エントリー書籍である。