「即時停戦と人道支援を求める中東研究者有志アピール」(第二報)
フォローアップおよび意思表明
「即時停戦と人道支援を求める中東研究者有志アピール」(第二報)
フォローアップおよび意思表明
ガザで続く惨状に対し憂慮の声が強まった結果、国連総会で即時停戦決議が日本を含む153カ国の賛成で採択される(12月12日)など、現在、圧倒的多数の諸国および世界の市民は停戦を求めている。しかしイスラエル政府はガザに対する無差別攻撃、子どもや女性を含む市民全体を対象とするジェノサイド(集団抹殺)ともいえる行為を続け、ガザ全域へと侵攻を拡大している。住民の死者は既に二万人を超え、9割が住居を失い、衛生状況の悪化と飢餓に直面している。国際世論の批判にもかかわらず明白に国際法違反の侵攻、戦争犯罪の続行によって人道上の惨事が拡大している状況であり、さらに今後ガザをイスラエルが長期にわたって掌握・管理し、その将来のあり方を一方的に決めていくかのような方針も公言されている。
私たち中東研究者有志は「ガザの事態を憂慮し、即時停戦と人道支援を訴える中東研究者のアピール」(10月17日)を発し、幅広い研究者・市民からの賛同署名(国内4868名、12月24日現在)をいただいた。しかし、状況がより深刻化し、破局的様相さえ呈しつつある現状を踏まえ、同アピールで示した①即時停戦および人質の解放、②ガザへの攻撃停止と封鎖解除、③国際法・国際人道法の順守、④対話と交渉を通じた問題解決の環境整備のため国際社会が力を尽くすこと、の諸点を改めて訴える。
さらに、国際法違反の戦争と戦争犯罪を一刻も早くやめさせるためには、以下の措置が求められる:
(1)国連安保理での即時停戦決議可決など、停戦に向けた国際的圧力・協働を強めること。国連総会もしくは安保理での停戦決議を無視して戦争を続ける当事者に対する経済的および外交的制裁の発動。
(2)紛争当事国への兵器供与や軍事支援、武器共同開発等の中止。
(3)紛争の全当事者による国際法・国際人道法に反する行為を調査・訴追するための、国際的な司法手続きの開始。
また、戦争や占領の長期化、武力による現状変更を許さず、地域の平和と安定に向けた長期的展望を得るためには、以下が重要である:
(4)ガザの再占領、一部もしくは全域の併合、住民の強制的移動や追放を許さないこと。
(5)武力による領土拡大を認めず、占領下の住民の保護や占領地への入植地建設を禁じた国際法をパレスチナ全域において遵守すること。
(6)戦争と占領の終結、民族自決権尊重の原則に基づく、平和的・公正な解決のための対話と交渉を可能とする環境を国際社会が整えること。とりわけ、戦争の結果が既成事実化されたり、問題の当事者であり人道的悲劇の只中にあるパレスチナの人々自身の声が排除・無視されることがないようにすること。
私たちは中東地域の歴史・文化・政治等の解明に携わってきた研究者として、また中東の人々との交流を重ねてきた市民として、中東における平和と人間性の回復をめざし、今後も世界の市民、日本政府をはじめとする各国の政策決定者らと対話・協働しつつ、持てる知識と経験を提供して問題解決の道を探っていきたいと考える。
2023年12月25日
呼びかけ人:
飯塚正人(東京外国語大学)、鵜飼哲(一橋大学)、臼杵陽(日本女子大学)、大稔哲也(早稲田大学)、岡真理(早稲田大学)、岡野内正(法政大学)、栗田禎子(千葉大学)、黒木英充(東京外国語大学)、後藤絵美(東京外国語大学)、酒井啓子(千葉大学)、長沢栄治(東京大学)、長沢美抄子(ライター)、奈良本英佑(法政大学)、保坂修司(日本エネルギー経済研究所)、三浦徹(お茶の水女子大学)、山岸智子(明治大学)、山本薫(慶應義塾大学)以上17名