より身近に より気楽に 難病支援に関わる者同士のつながりを大切にしていきたいという思いから
京都難病研究会 改め 「京都難病ケア Study Group」に名称変更させて戴きました。
難病支援は「多職種が歩みを共にすること」が欠かせません。
それぞれの専門的な見方や経験を共有し、
日々のケアにあたれるような交流の場をつくることで、
難病と共に生きる人々の「より良い生活」を支えていくことを目指します。
■当グループの目標■
日々の現場で感じている迷いや経験を持ち寄り対話を積み重ねることで、
参加者が現場に持ち帰れる学びと、
それぞれが一人で抱え込まずに語り合えるつながりを育んでいきます。
代表
医療法人七生会
辻医院 院長
辻 輝之先生
副代表
御所西歯科中川クリニック 院長
中川研人先生
地域包括ケアの限界と可能性
―― 難病支援と「難病ケアカフェ」が目指すもの ――
1.制度の枠組みと、こぼれ落ちてしまうもの
「地域包括ケアシステム」は、高齢者の方々が住み慣れた地域で安心して暮らせるよう、医療や介護がつながる仕組みとして作られました。しかし実際の現場では、「自分でがんばる(自助)」「みんなで助け合う(互助)」といった手段ばかりが強調されがちです。その結果、肝心な「一人ひとりの生活の質」や「当事者の実感」が置き去りになってしまうことが少なくありません。
この仕組みは、効率よく制度を動かすのには向いていますが、標準化(マニュアル化)できない多様で複雑な課題を抱える方々を、十分に包摂(まるごと支えること)できないという限界を持っています。
2.難病支援が教えてくれる「孤立」と「これからのヒント」
難病支援は、まさにこの制度の限界が一番現れやすい場所です。難病は患者数が少なく、病気の進行や生活の悩みも一人ひとり全く異なります。そのため、支援の資源がバラバラになりやすく、当事者やご家族が地域でポツンと孤立してしまいがちです。
同じように支援が難しいとされる認知症は、多くの人に共通する普遍的な課題として制度の中に組み込まれやすい特徴があります。一方で、難病支援は「めずらしさ」と「病気による生活の断絶」があるため、既存の枠組みでは対応しきれない「おまけの課題」のように扱われてしまうのが現状です。
しかし、私たちはこの「枠からはみ出す課題」にこそ、大切な意味があると考えています。難病支援の中で見えてくる困りごとは、決して特殊なものだけではありません。将来的に、他の慢性の病気や、お年寄りが抱えるいくつもの複合的な苦労にも、必ず共通していくはずです。つまり、難病支援の中にこそ、これからの地域ケアを新しく作り直すための大切なヒントが詰まっているのです。
3.新しいチームの形:役割分担から、フラットな「協働」へ
難病支援にはたくさんの専門職が関わりますが、そのつながり方は、病院の中での連携とは少し違った質が求められます。
病院での連携(役割分担型): 医師を中心に、看護師やセラピストがそれぞれの専門の役割を果たすピラミッド型の連携です。主に診断や治療が中心となります。
生活の場での連携(フラットな協働): 暮らしの場では、医療・介護・行政だけでなく、当事者やご家族が持つ「経験知(実際に暮らしてきた知恵)」も同じように尊重されるべきです。すべての関係者が上下関係なく、横並びで関わる連携が必要になります。
現場で直面する「一言では解決できない難しい問題」に対しては、この一歩踏み込んだ、柔軟な協働がとても大きな力を発揮します。
4.難病ケアカフェが果たす役割
「難病ケアカフェ」は、このフラットな協働を、地域のまんなかで実際にカタチにするための場所です。カフェというオープンな場だからこそ、病院や役所の窓口とは違い、専門職の「肩書き」や「上下関係」が自然と取り払われます。みんなが同じ目線で、同じテーブルを囲んで語り合うことができるのです。
そこでは、制度の書類には書けないような日々のリアルな悩みや、その人が大切にしたい価値観が、生の声として浮かび上がってきます。それが専門職の知識と出会い、混ざり合うことで、お互いが学び合い、チームとしての質が自然と高まっていきます。
5.数字で測れない「答えのない問い」に寄り添う
行政の施策では、どうしても「目に見える成果」や「数字のデータ」が求められます。しかし難病支援においては、「何が問題なのかうまく言葉にできない段階」や、そもそも「すぐには解決できない問い(アポリア)」を抱えた段階でのアプローチが欠かせません。
難病ケアカフェは、「解決できないから」と問題を締め出すのではなく、その割り切れない思いをそのまま大切に受け止め、みんなの語りとして積み重ねていく場所です。制度が追いつかない現場のリアルな声を、優しく見守り続ける機能を持っています。
6.これからの地域共生社会に向けて
このように、難病ケアカフェは単なる「おしゃべりの場」や「お楽しみの集まり」ではありません。今の地域ケアに何が足りないのか、これからどう変えていけばいいのかを、みんなで実践しながら検証していく大切な土台(ベース)です。
数が少なく、バラバラになりやすい難病の支援から学べる知恵は、2040年に向けたこれからの地域づくりに、なくてはならない道しるべになります。
それは、お年寄りのための地域包括ケア(Aging in Place:その場所に留まること)から、年齢を問わず誰もが共に生きる地域共生社会(Living in Community:その場所に居場所があること)へのステップアップです。
患者さんとして関わる関係(From "Patient")から、地域に暮らす一人の隣人として出会う関係(to "Neighbor")へ。私たちは、そんな温かい地域をここから目指しています。