大学事務職員は「高度」な業務をどのように遂行しているのか?
【キーワード】大学職員、業務の高度化、業務遂行プロセス、知識・スキル、大学経営
複雑高度化する大学経営上の課題に対応するため、大学事務職員の業務の高度化が必要とされている。先行研究では、大学事務職員の「高度」な業務の内容や、その遂行に必要な能力の開発方法が明らかにされてきた。しかし、大学職員が各種能力を使用して「高度」な業務をどのように遂行しているのかという、業務遂行プロセスの実態は明らかにされていない。
本研究の目的は、特に大学事務職員が業務遂行上で各種能力(知識・スキル)をどのように使用しているかに着目し、インタビュー調査と質問紙調査を通じて、大学事務職員が「高度」な業務をどのように遂行しているのかを明らかにすることにある。本研究では、大学事務職員の業務遂行・能力開発プロセスの改善に資する知見を提供することを通じて、大学事務職員の業務の高度化に寄与することを目指す。
本研究では、大学事務職員が、どのような能力をどのように使用して、「高度」な業務を実際に遂行しているのか、という業務遂行プロセスの実態を明らかにするため、以下の2つの方法を用いて、4年間で研究を行う計画である。
【方法1】20名程度の大学事務職員を対象としたインタビュー調査により、①定型的な業務をどのように遂行しているのか、②非定型的な業務をどのように遂行しているのか、を明らかにする。具体的には、定型的な業務にかかる詳細なケースを3~5、非定型的な業務にかかる詳細なケースを2~3作成し、各インタビュイーには、自分であればそれらの業務をどのように遂行するかを回答してもらう。これにより、大学事務職員は定型的/非定型的な業務の遂行時に、どのような能力(知識・スキル)を使用しているのか、また、どのような点に注意しているのか、などを明らかにする。続いて、インタビュー調査の後に、各インタビュイーの業務遂行方法の適切さを、管理職級以上の大学事務職員5名程度に評価してもらうことで、「上手」な業務遂行方法に特徴的な、能力(知識・スキル)の使用方法、業務上の注意点などを明らかにする。
【方法2】方法1から、大学事務職員が「高度」な業務をどのように遂行しているのかが示唆される。その遂行方法が、多くの大学事務職員にあてはまるのかを確認するため、質問紙調査を実施する。質問紙調査は、全国の国公私立大学事務職員を対象として実施する。約1,000名からの回収を目標とし、全国国公私立大学の事務部宛に、大学の規模に応じて複数の調査票を郵送する予定である。質問紙調査の実施後、調査データを分析し、多くの大学事務職員はどのように「高度」な業務を遂行しているのかを明らかにする。
以上の研究計画を、研究期間の各年度に以下のスケジュールで遂行する。2021年度は、インタビュー調査の準備および、質問紙調査の準備を行う。具体的には、前者には調査協力への依頼・了承、ケース作成、プレ調査などが含まれる。また後者には調査票の原案作成、プレ調査などが含まれる。そして2022年度から2023年度にかけて、インタビュー調査の実施と結果の評価を行う。さらに2023年度中に、インタビュー調査の分析結果をふまえて質問紙調査の準備と実施を行う。そして2024年度には、質問紙調査の分析結果をふまえて、必要に応じて追加インタビュー結果を実施する。
こちらをご参照ください。