シルクスクリーン版画は孔版画です。孔とは穴のこと。穴を通して絵の具を写し取る版画を孔版画と呼びます。穴を作る作業はいろいろな方法でできますが、シルク(現在はテトロンメッシュを多用)を使用することからシルクスクリーン版画と呼ばれるようになりました。他の版画に比べ高価な道具を使用せず、子供でも作ることができます。同じものをたくさん作るのに向いているので、最近はTシャツなどで人気があります。日本手ぬぐいもこの工程で作られているものが多いです。一版一色のため、色数を増やすと手間が増えますが多様な表現ができます。また布用インクを使用すれば衣服などに印刷できます。油性のインクでは金属のような重厚感や光沢感を、水性インクでは明るく軽快な印象を表現できます。
シルクスクリーン(感光法)の制作の過程
下絵を用意する。下絵は白黒で作り、明暗をはっきりさせた方がよい。原画の黒いところに色がつくと思って作ってください。
手書き、パソコンで印刷したもの、写真や出版物からのコピーやコラージュ、花や木の葉(厚みがあまりないもの)などを活用してもよい。
原画をうす紙(トレーシングペーパー)にコピーする。枯れ葉や切り紙など、そのまま使えるものもある。
枠はアルミ製のものもあるが、キャンバス用の木枠が安価で軽い。
シルクの代替品(テトロンメッシュ)は番号が大きいほど細かい表現ができるが、初心者は100~150メッシュでOK。
組み立てとタッカーの針の浮きを直すために、木槌があると良い。
テトロンメッシュは枠の大きさよりも上下左右5センチメートルほどの余裕が必要。
長辺の方から片方の端をタッカーで止めたら、ヒッパラーなどで強く引っ張り、張りを持たせながらもう片側も止める。同様に短辺も止める。
ひらひらして邪魔なようなら針の跡までは切っても良い。(布に緩みが出たときに調整するため、枠のギリギリまで切ってはいけない)
布が張れた。針が浮いているところがあれば、木槌で叩いておく。
この手順は抜かしても良い。感光したときに布に油分がついていると乳剤が定着しないことがあるので、念のためこれで洗っておく。
スクリーン洗浄剤でなくても、家庭用の中性洗剤(食器用洗剤)でも良い。その場合よく泡を洗い落とし、乾燥させる。(やらなくても案外失敗しない)
感光乳剤を用意する。
明るいところに置いておくと、黒く変色して(感光して)駄目になるので、使う分だけ出し、残りは黒い袋に入れ、箱に入れて暗所保存。
乳剤の塗り方。
バケットに乳剤を入れる。
布に押し当てながら、上に引く。作品のできあがり幅より広く塗る。
裏側にも塗り、多いとはがれてしまうので、何度かバケットの縁でこすり落とし、薄くついた状態にする。
暗い所(廊下や風呂場など)で乾燥させる。
余った乳剤はビンに戻す。
感光台の上に作品の原画(トレーシングペーパーにコピーしたもの)、木枠(布が下面につくようにのせる)、黒い紙(光をさえぎるため)の順に置く。原稿が一番下になっているか、確認する。
黒い紙の上にスポンジをのせる。
これは、原画が浮いてしまわないための作業。原画が浮いたり、厚みがあると、感光したときに隙間がうまれて、くっきりした画像にならない。
スポンジがなかったら、重い本でも良いが真ん中が浮かないようにのせる。
原稿が動かないための重石として、重たい本をのせる。
タイマーを2分半に設定する(たいていは2分半だが、乳剤の濃さや古さなどによって、調節することもある)。感光台が光ってからは、原稿や木枠にさわってはいけない。動かすと失敗する。 感光台の光は紫外線なので、見ていると目に良くないし日焼けする。
タイマーが止まり光が消えたら、水をかけて洗う。
すぐに洗えない時には、まず、水だけかけておき、なるべく早く洗う。
原画の白い部分は感光するので(光が当たって)乳剤が固まり、落ちない。
原画の黒い部分は光が当たらないため、感光しないで、洗うと乳剤が落ちる。この落ちて穴が開いた部分に絵具が通ることになる。版はこすりすぎると壊れやすく、手のひらなどで優しくきれいに洗い流す。ぬめりが残らないようにする。
透かして見て、洗い残しがないよう(原画通りに抜けているか)に気をつける。
版の完成。
新聞紙に寝かせて水分をとり、平らにして乾かしてから使う。
急ぐときは平らにしてドライヤーで乾かしてもよい。
使う前に、もう一度光に透かして、版の壊れや不必要な部分に穴(ピンホール)がないかどうか確かめる。ピンホールや壊れは、筆で乳剤を塗ることで解消される。その後、もう一度、短時間感光台で感光する(そうしないと、絵具を水洗いするときに、後で塗った乳剤も洗い流されてしまう)。
絵具を用意する。
欲しい色がない時は、紙コップなどで混色して作る。
その時、濃ければ(油性絵の具はリト油・水性絵の具は水)を少しずつ入れて薄める。多く作って余ったときは、ジャムのビンなどに保存しておく。
スキージーを用意する。
マスキングテープ、汚れ防止のチラシなど用意する。チラシは帯状に切って、絵具が木枠の端から漏れないように木枠の裏側に貼る。
刷り台の上に版を万力で固定する(枠を開いたり閉じたりできる)。
紙の位置を決めて、見当(紙おさえ)をつける。
新しい紙を置く場所、刷った紙を置く場所を決めておく。手際を良くして刷らないと版が乾いてしまったり、刷った紙を置く場所に困り汚してしまう。
版の上に絵具を置く。
スキージーで絵具をけずるように手前に引く。
(上の絵具と色が違っていますが、やり方はいつも同じです)刷ったら、版を上に立て、次の紙を入れる。
刷り終わったところ。
版の上に残った絵具はパレットナイフで紙コップに戻し、版はチラシやマスキングテープなどを取り除いて、スポンジを使って水で洗う。この時きれいに洗わないと、スクリーンの目が詰まってあとで使えなくなることがある。
色の濃い絵具はスクリーンを染めてしまうことがあり、(前の絵が残って)次回に使いにくいので、台所用洗剤をスポンジにつけて洗うと少し改善される。
刷り終わって不要になった版は、再生液を塗り、スポンジでこする。
少し置いたあと、水で洗い流す。
乾燥すれば、また使える。