今僕を取り巻いてる 世界はこれでいて素晴らしい
プラス思考が裏目に出ちゃったら 歌でも歌って気晴らし
バブル期の追い風はどこへやら 日に日にしわの数が増えても
悩んだ末に出た答えなら 15点だとしても正しい
どんな不幸からも喜びを拾い上げ
笑って暮らす才能を誰もが持ってる
いらいらして過ごしてんなら愛を補充
君へと向かう恋の火が燃ゆる
あきらめの歌。何かをあきらめかけている。
堕落。だらけ。日本の経済状況と重なっているのでしょう。
時は1999年から2000年にかけて。小泉政権の誕生直前。
バブル崩壊、山一證券倒産などで世紀末と重なりやばいやばいと囁かれていた時期です。
あえて自堕落な明るさを装おうとする自分。
愛とはいってもやや投げやりな恋。
たぶん家族とは別の彼女の家に入り浸っている。
当り散らしは言わずもがなのタブー
すべてはそう僕の捉え方しだいだ
誰かが予測しとくべきだった展開
ほら一気に加速してゆく
ステレオタイプ ただ僕ら新しいものに呑み込まれてゆく
一切合財捨て去ったらどうだい?
裸の自分で挑んでく
ヒューマンライフ よりよい暮らし
そこにはきっとあるような気もする
彼女ともあまりうまくいっていないのです。
毎日がステレオタイプでありきたり
きっと相手がそういう買い物を好む人だったのかも
自分はどうも満足できない
品物なんてどうでもいい
なにかもっと手作りの暖かさがほしいのです。
皆憂いを胸に 長い孤独の果てに
安らぎのパーキングエリアを探してる
(......)
自由競争こそ資本主義社会 いつだって金がものを言う
ブランド志向 学歴社会 離婚問題 芸能界
でも本当に価値あるものとは一体なんだ
国家 宗教 自由 それとも愛?
一日中悩んだよ でも結局それって理屈じゃない
誰もが孤独、相手も孤独だったってことは分かってる
彼女も安らげる相手を探して、やっとおれだと思って、付き合い
でもうまくいってない
金が入ると新たな問題が起きる
ブランド物は欲しいし子供のいい学校、それでもめて離婚の調停
芸能界もややこしい
なにかおかしいなにかを見失いそうだ
そんな歌い手なんです
イライラして過ごしてんなら愛を補充 君へと向かう
恋の炎が燃ゆる
向かいの家の柴犬にもハイボンジュール! ああ世界はばら色
ここはそうセンターオブユニバース
僕こそが中心です ああ世界は素晴らしい
もうまったく素晴らしそうでない新しい暮らしの話です
きれいな犬に愛想振りまくブルジョワっぽさにはウンザリだ
そんな歌い手の言葉が2000年の新アルバムの冒頭です。
でもこの率直さ、正直さが
ミスチルの命だったのです。
だからみんな一緒に落胆し、悲しみ、ついてきたのです。
アルバム「Q」はQuestionのQだと思う。
事実はインタビュー見ていないので知りません。
迷いまくりさまよいまくりの「Q」。
もう一曲、シングルになった「Not Found」を見てみます。
ああどこまで行けば分かり合えるのだろう
詩や歌にならないこの感情と苦悩
君に触れていたい
痛みすら伴い歯がゆくとも
切なくとも 微笑を 微笑を
分かり合うことの難しさ
きれいに詩にできない
無数の小さな出来事とすれ違い
触れることのリアル
触覚だけがリアル
目が見えなくても
耳が聞こえずとも
触れることの痛さ
せつなさ
歯がゆいのは、言葉が通じないから
なかなか言葉では伝わらないものがあって
それでも伝えようとあがくから
アルバムで最大のヒットとなった「口笛」
アルバム後半に置かれています。
その歌詞も見てみましょう。
たよりなく二つ並んだ 不ぞろいの影が
北風に揺れながら 伸びてゆく
でこぼこのままふくらんだ
君への思いは
この胸のほころびから顔を出した
口笛を遠く
とわに響くよに遠く
響かせるよ
言葉より確かなものにほら届きそうな気がしてんだ
さあ手をつないで僕らの今が途切れないように
その香りその体そのすべてで僕は生き返る
夢をつむいで帰るあぜ道
立ち止まったまま
そしてどんな場面も二人なら笑えます
ように
言葉の向こう側
言葉が要らないとき 口笛が一番雄弁なとき
夕方影が伸びて なぜか頼りなく見えて
はかないつながりだけど 大切にしたいと思った
言葉を超えて 体温や そばにいる事実
あぜ道を歩いて帰る
そうアルバムQは、言葉の向こう側を
探しているアルバムなのです。