アオギリの特徴
アオギリ Firmiana simplex (L.) W.F. Wight (アオギリ科 アオギリ属)
アオギリの花や果実は特徴あるもので、似た植物は記憶にない。花は7月頃に咲き始める。花期は長く、つぼみあり、花が終わって落ちるものありである。花弁は発達せず、リボンのように見えるのは顎で5枚。1つの花序に雌花と雄花が混在する。雄しべは合着して1本になっている。
果実の形は特徴的であり、若い時期は5本のさやが垂れ下がったおもしろい形となる。8月のおわり頃からさやは内側が裂開して舟形になり、その周辺に種子が4つ付いている。さやの中には、4つの種子が入っていたわけである。このような果実の形は、5枚の葉が変形したものであると考える意見もあり、花と葉の関係をよく表している例の1つにあげられることがある。
種子はなかなか離れず、冬にこの舟形の心皮とともに風に飛ばされて散布される。5つに分かれて舟形の部分が飛ばされるのか、5つまとまってプロペラ、あるいは落下傘のように飛ばされるのかは知らない。
風で種子を散布する植物は、そよ風程度の時に飛ばされてしまうと、すぐ近くに散布されてしまうので大きな意味はない。強風の時に枝から離れるように設計すると、強風が吹かなかった場合には春まで枝先に残ってしまい、新芽が出るときには枝先から離れてしまう。
樹皮繊維は強靱で、織物、縄、網の原料になる。樹皮には粘質物が含まれており、水に浸し製紙糊料や洗髪料とした。
種子は炒ると食べられる。室町時代には種子を菓子としていたという。戦時中は粉にしてコーヒーの代用としたとのこと、試されたらいかがでしょうか。
種子の漢方生薬名は梧桐子(ごとうし)とよばれ、健胃の効果があり、炒って服用すると、腹痛、胃痛などに効くといわれている。昔は種子を便所のウジ虫発生防止のためにも使われた。
葉は血圧降下、動脈硬化予防に効果があるという。また、葉を乾燥させてタバコの代用にしたという報告もある。 <2008.10>
(はいばらきくお 東京農工大学 農学部教授 森林生態学)
アオギリの花
アオギリの花と虫
アオギリの花
アオギリの花と果実